ヒューマンミステリー超大作映画「ソロモンの偽証」の完成披露試写会は、近年稀に見る大掛かりな規模だった。映画上映の前に、司会者が「5,000人の傍聴者を前に、ひとりひとり挨拶をお願いします」で始まった。出演者たちは、5,000人の傍聴者にまず驚いたようだ。
作家生活25年を迎える宮部みゆきが構想15年、執筆に9年以上をかけた同名小説を、2部作で映画化。中学校で起きた1人の生徒の死について、学校内裁判を中心に、物語が展開する。生徒役の33人は1万人オーディションで選ばれ、主役の「藤野涼子」には、これがデビュー作で芸名も役名と同じとなる藤野涼子(15)が大抜てきされた。
迫真の演技で映画を盛り上げるのは藤野涼子を始め、10代の子役たち。
迫真の演技で映画を盛り上げるのは藤野涼子を始め、10代の子役たち。
この映画では、出演者は、おおまかに二つの年代層のグループに分けられる。
それは、中学生の「子供たち」と、学校教師、父兄などの「大人たち」である。
主人公の女子中学生の藤野涼子(藤野涼子)の両親を演じた佐々木蔵之介と夏川結衣は、口を揃えて「子供たちが、苦しみながら(演技で戦って来て)成長する姿が感じられ、自分たちも負けてはいられない、と思った」と語っていたように、オーディション10,000人の中から勝ち残った新人女優・俳優の演技が光っていた。
現在15歳の藤野涼子は「何が真実で、何がウソなのか。この映画を見て深く考えてもらえれば」と緊張した面持ちであいさつ。司会者から、今まで経験した一番のウソ“偽証”はなにかと問われると「母が大事にしていたブランド品のコップを割ってしまい、その罪を父になすりつけた。今日、この場で初めて告白したので、家に帰るのが怖い」とティーンらしい初々しさを披露。
一方、涼子の父親を演じる佐々木蔵之介は「真冬のシーンを真夏に撮った。雪も綿なんですよ」と撮影現場の“ウソ”を暴露。23年後の成長した涼子役の尾野真千子は「まだ売れていないとき、親に心配をかけたくないので、実家に帰っても”仕事があるから、戻るね”とウソをついた」と苦労話を語った。
塚地武雅は「子役、監督、そして僕の3つの才能が合わさった素晴らしい映画」と自画自賛して笑わせた。最近の塚地は、お笑い芸人とは言わせない、というほどの存在感を見せている。
松重豊は、中学生たちが真摯に取り組んでいたので「自分だけが浮いていたのではないか心配だ」と笑わせた。確かに、松重は、この映画では、一人はしゃいでいるようなシーンが多かった(笑)。
中学の教師役を演じた黒木華(はる)は、最近では抜けた「薄幸女優」として、名演が映画関係者の間でも話題になっている。この映画では、告発状が届いているのに破り捨てたと誤解され苦しむ演技が注目だった。あいさつでは「しばらくぶりに生徒たちに会って、成長している姿に驚いた」と地味に語っていた。
映画は、クリスマスに起こったひとりの生徒の死をきっかけに、ヒロイン・涼子の呼びかけで、生徒たち自らが“校内裁判”を開廷し、悲劇に隠された真実を紡ぎ出していく様を描くストーリー。
・・・
この映画は23年ぶりに母校の中学に戻ってきた主人公の藤野涼子(小野真千子)の告白という形で物語が進行する。ひとりの生徒が亡くなったことを事件として片付けた学校側。そこに告発状なるものが現れ、そこには、事故でなく、具体的に犯人が名指しされ、それを目撃したというのである。その手紙は、いじめを受けていたものの復讐だったのか、あるいは・・・。
一方、女子中学生が同級生から暴力を振るわれているシーンを屋上から目撃した藤野涼子が、そのままひき帰ろうとすると、見ていた同級生から「お前は、口先だけの偽善者だ」といわれる。「学級委員として、普段から暴力をなくそう、と言っているよね」と詰め寄られるが、返す言葉がなかった。この”口先だけの偽善者”という言葉は、大きく藤野を変えることになり、ついに「決意」することになる。
中学生の有志が集まって、教師や警察は頼りにならないので、真相を自分たちの裁判を通じて明らかにするというのである。
それを阻止しようとする学校。とくに学年主任・高木(安藤玉恵)が凄まじい。生徒にビシバシ平手打ちを食らわすのだ。
藤野涼子が、ここからがすごいところで、正しいことは何か、吹っ切れてからは別人のようになり、高木主任にも、謝罪しなければ”教育委員会”に暴力を告発するという一言が利いた。教師も教育委員会には弱いようだ。藤野涼子のセリフがすごい。これは「亡くなった生徒から試されているのではないか」というものだった。
暴力仲間から抜けられない生徒、悪意のある仕返しを画策する女子生徒から、睨まれたくないばかりに従う女子生徒、父親から暴力を受けても反抗できない男子生徒、素性の知れぬ生徒など・・・様々な展開が織り交ざる。
「前編:事件」では事件が起きたことから、裁判への展開は「後半:裁判」で、真相が明かされることになる。ただし、入ってくる情報によると、白黒はっきりではなく、やや曖昧なエンディングになっているようだ。傍聴者(観客)の判断に委ねるということか。
成島出監督(「八日目の蝉」)は「ここにいる子どもたちが、毎日泣いたり笑ったりしながら、一丸になって完成させた」と感激。完成披露試写会には藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、夏川結衣、黒木華、田畑智子、塚地武雅、松重豊、小日向文世らが同席した。(青字は、中学生を演じた無名の新人たちで、いつの日か、赤字の女優・俳優たちと肩を並べることになるだろう。)このほか永作博美も出演している。
「ソロモンの偽証 前篇・事件」
3月7日(土)公開
「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
4月11日(土)公開
3月7日(土)公開
「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
4月11日(土)公開
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