昨年2月に大ホール試写会でみた「ソロモンの偽証」(前篇:事件)と4月に劇場で見た「ソロモンの偽証」(後篇:裁判)を一気に再見した。2度目でますますこの映画の凄さがわかってくる。
改めてオーディションを経て出演した中学生(14~15歳前後)の真剣さと力強さを感じた。それに対する大人たちの混乱ぶり。この映画に出演した出演者たちは、今では実際の撮影時からは2年以上が経過しているとみられ、もう高校生の高学年のはずだが、どのような道を歩んでいるのか・・・。
昨年公開の邦画では、ベスト3の一角(2位、3位)に押した作品で、記事については数回書いているので省く。
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「ソロモン」とは?「ソロモン」は、古代イスラエルの国王のこと。
ソロモン王は、賢い裁きをする人の象徴、知恵の象徴として引き合いに出される。
ソロモン王は、賢い裁きをする人の象徴、知恵の象徴として引き合いに出される。
本来、賢い裁きをするはずのソロモンが偽証したら…?
180度違った結果になるということ。
最後の証人(=ソロモン)の偽証が明らかになるとき、裁判の風景は根底から覆される――。藤野涼子が辿りついた真実。三宅樹理の叫び。法廷が告げる真犯人は。
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「口先だけの偽善者が一番悪質だ」
この言葉をクラスのリーダー格の藤野涼子などに何度も口にし、死んでいった柏木卓也、14歳。藤野に有無を言わせぬ迫力で迫っていく。涼子は、同級生女子がいじめられ助けを求めているのに、巻き込まれるのを恐れて、見て見ぬふりをしたからだった。その負い目も、最後に明かされる。
クリスマス未明、一人の中学生・柏木卓也が転落死した。
彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。
さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった――。拡大する事件を前に、為す術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、級友の死の真相を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という前代未聞の行動だった。
求めるは、ただ一つ。柏木卓也の死の真実。
さらに別の同級生の死。マスコミによる偏向報道。
さらに別の同級生の死。マスコミによる偏向報道。
当事者の生徒達を差し置いて、ただ事態の収束だけを目指す大人たち。
真相がなにもわからないままでは前に進めない。であるならば、自分達で真相をつかもう――。そんな藤野涼子の思いが、周囲に仲間を生み出し、「学校内裁判」の開廷が決まり、次第に明らかになる柏木卓也の素顔。繰り広げられる検事と弁護人の熱戦。そして、告発状を書いた少女が遂に・・・。夏の8月15日、およそ1週間の裁判が始まった。
弁護人役・神原和彦は高らかに宣言する。
大出俊次は殺していない、と。対する検事役・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あの日、クリスマスイヴの夜、屋上で何があったのか。
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柏木卓也の葬式に一人、ほかの人たちと距離を起き直立して見守っていた神原和彦。そのことについて、藤野は神原に問う。「あなたは葬儀に来ていた。テレビのニュースで、柏木くんの死を知ったと嘘をついた。あなたは何者なの?」と。このあたりの藤野涼子の背中の演技もすごい。
神原は、裁判の最後にすべてを語ると藤野にいう。
「やはり隠していることがあるのね」と藤野。
そして、裁判は思わぬ展開に・・・。
被告人として出廷した大出俊次に対して、弁護人役・神原和彦が、大出の暴力の有無を「はい」か「いいえ」で答えてください、というシーンが圧巻だった。
「トイレに連れて行って、誰かを殴ったことはありましたか」「誰かをブタと罵って殴ったことはありますか」「相手が女子なのに、化け物呼ばわりしたことはありませんか」「家で殴られた時に、自分より弱いものを殴って憂さ晴らしをしたことはありませんか」「君にいじめられた人が、どれほど苦しい思いをしたことを一度でも考えたことがありますか」「告発状を書いた人は、それは命綱だった。そこまで追い詰めたんですよ」・・・。
神原和彦の父親は母を殺し、自分は獄中で、首をつって死んだのだった。
そんな過去がありながらも、何もなかったかのように生きている神原に対して、柏木卓也は、許せなかった。柏木は、あるゲームを神原に課して、その結果を見たかった。柏木は、こんな世界に生きる意味はあるのかというのが考え方だった。神原にもそうした考えに同調して欲しかったのか・・・。
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1990年代初期は、携帯電話もなく、外出先から連絡するためには公衆電話しかなかったが、公衆電話が大きなポイントとなっていた。
娘を溺愛し過保護の憎々しいほどに独善的な母親を演じた永作博美もすごい。
娘を交通事故で亡くした父親の痛切な悲しみを滲みだした塚地武雅も人間味を出していた。
日本アカデミー賞授賞式の優秀新人賞に選ばれた藤野涼子は、あまりにも映画とは違っていたのに驚いた。やはり10代の若さで、慣れないスピーチでは言葉に詰まっていた。現在神奈川県の公立高校に在学中で、ダンス部に所属。映画女優の目標は吉永小百合。次の映画出演は、憧れの俳優という香川照之と西島秀俊が出演する「クリーピー 偽りの隣人」(2016年6月18日公開予定)である。これは楽しみ。
■板垣瑞生(みずき):神原和彦役。映画撮影時は、14歳だったが、大人びてみえ、堂々としていた。2013年ごろからテレビ・ドラマに出ていたが、映画は「闇金ウシジマくん Part 2」がデビュー。2作目の「ソロモンの偽証」は大役だった。凛々しい二枚目タイプで期待される。
中島哲也監督の問題作「渇き。」で壮絶ないじめにあうボク役、「ソロモンの偽証」では一転、クラスメイトに恐怖を与える、手がつけられないほどの不良役を演じ、カメレオン俳優ぶりを発揮。「ストレイヤーズ・クロニクル」(2015)、「ソ満国境 15歳の夏」(2015) 、「ちはやふる 上の句 / 下の句」(2016年3月・4月)に出演。
■前田航基:野田健一役。テレビ、映画では子役として出演。映画では「近江聖人・中江藤樹」(2005) 「千夏のおくりもの」(2005) 「バルトの楽園」(2006) 「ゲゲゲの鬼太郎」(2007) 「スノー・バディーズ」(2008、日本語吹き替え)「奇跡」(2011) 「ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判」 「LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版」(2016)などに出演。
ドラマでは2015年「マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜」で、檀れいの引きこもりの息子役を演じた。
佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、小日向文世、黒木華、尾野真千子、津川雅彦、松重豊、塚地武雅、田畑智子など豪華俳優陣が出演。 そのほか、池谷のぶえ、市川美和子、江口のりこ、森口瑤子、安藤玉恵、木下ほうか、宮川一朗太、嶋田久作など。
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