「三つ数えろ」(原題:The Big Sleep)は、レイモンド・チャンドラー原作の「大いなる眠り」をハワード・ホークスが映画化したサスペンス映画。プロットが複雑でややわかりにくい・・・ことで有名のようだ。1946年の製作だが、日本公開は1955年。モノクロ。
内容・プロットは省略。
映画のラスト・シーン。
↑ヴィヴィアン(ローレン・バコール)とマーロウ(ハンフリー・ボガート)の会話。
ヴィヴィアン:「ひとつ忘れているわ」
マーロウ:「・・・」
ヴィヴィアン:「私のことよ」
マーロウ:「何を言っている」
ヴィヴィアン:「あなたって最高ね」
The END
この最後のセリフの字幕は、相当に”意訳”だが、決まっている。
英語のセリフは…。
”Nothing you can't fix” (解決できないことは何もないのね)
→「あなたって最高ね」
それはともかく、マーロウ探偵が初めてヴィヴィアンにあったときに、ヴィヴィアンがいうセリフは「案外背が低いのね」だった(ボガートは実際に、174センチと、アメリカ人男優としては小柄)。相手役の女優と並ぶと、よくわかる。
ローレン・バコール173センチ、イングリッド・バーグマン175センチ、オードリー・ヘプバーンも170センチだった。ちなみにクラーク・ゲーブルは185センチ。
ヴィヴィアンにいきなり、背のことをいわれて「努力はしている」というようなことをいうのだが、ヴィヴィアンは「でもいい男。自分でも気づいているでしょう」と付け加える。
ヴィヴィアンの妹・カルメンからも、冴えないわねと背のことをいわれて「今度来るときは、”竹馬”に乗ってくる」と切り返していた(笑)。もっともこのカルメン、姉と違って、奔放のようで「しつけが悪い」と後から言われるように、いきなり探偵にしなだれかかってきたりする。
ワンシーン。
「三つ数えろ」のタイトルは、劇中に二回、三つ数える、というセリフがあり、そこから取っている。一つ目は、女のありかを、三つ数えるうちに言えというシーン。
もう一つは、黒幕を追い詰めたマーロウが、三つ数えたら、表に出て行け、というシーン。表では、入り口ドアから出てきた人間を撃つ手はずになっていた。探偵が出てくると待ち構えていた手下たちは、自分の親分を誤って撃つことになる。
・・・
探偵稼業もつらいよ、か。
夜中の二時でもお構いなしに依頼者から電話がかかってくる。
「来ないと失業するぞ!」といわれりゃ、出かけないわけにはいかない。
マーロウ探偵の費用は、1日25ドル(当時のお金)+必要経費ということで、危ない仕事の割には、少ない。
細かいシーンだが、思わず笑ってしまうところもある。
マーロウと話をしている時に、ヴィヴィアンがしきりに膝の上あたりががかゆいのか、もぞもぞと掻いていると、それを目にしたマーロウが、「足がかゆいなら、掻きなさい!(Scratch!)」と話しの中で、それと無く語っていた。言われたヴィヴィアンは、スカートをちょいとめくって思いっきり3回ほど、ぼりぼり掻いていた(笑)。
こんな些細なしぐさもしっかり映画で描かれるところがニクい。
・・・
マーロウが、書店の女性に聞きこみをするときに、額縁メガネをかけて、帽子も前のツバを上に折ってにわか変装して近づき、話のきっかけとして、「ベン・ハー」の1860年の初版本の116ページの誤りについて、訂正したいといった、いかにもといった手で近づくのだ。
書店の女性も、男がいい男だったので、仕事は、午後は休業にする、といってメガネを外し、髪もロングにおろすと、見違える美人になり、カーテンを閉めて、その場で、コーヒーをということに。
探偵マーロウには、魅力的な女性が近づいてくるが、そこはハードボイルドで、目もくれずジェームズ・ボンドとは大違い。常にクールで、仕事の解決が優先。
それにしても、マーロウ探偵の自信はどこから来るのか。
読みが深いのか。銃を向けられても、手を縛られても、死の恐怖をまったく感じないのだ。怖いものなし。
この映画の主演のハンフリー・ボガートとローレン・バコールは、その2年前の「脱出」(1944)の共演が縁で結婚、その後も「キー・ラーゴ」などで共演を果たしている。ボガートが1957年に亡くなるまで、バコールは伴侶だった。
ローレン・バコールは、この8月12日、89歳の生涯を閉じた。
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