映画の面白さで、どの監督がお気に入りかと聞かれれば、ビリー・ワイルダーと答えるだろう。
「情婦」の二転三転のどんでん返し・・・。
「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンの鬼気迫る演技・・・。
「アパートの鍵貸します」のジャック・レモンの悲哀・・・。
「昼下りの情事」のロマンス・・・。
「お熱いのがお好き」のはじけたコメディ・・・。
どの作品も粒ぞろいの傑作だ。
30数年前にドイツ語吹き替え版を一度見ていた「あなただけ今晩は」(1963)を再見した。「アパートの鍵貸します」(1960)のスタッフとキャストが再び揃って制作された、もともとは1956年のフランスのヒット・ミュージカルを基にしたラブ・コメディである。しょぼい中年男を演じたら絶妙のジャック・レモンと、ミュージカル・踊りもできるシャーリー・マクレーンの可愛さに引き込まれる。
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世間知らずの警官(ジャック・レモン)がパリの娼婦街に配属されたが、生真面目さも手伝って、代々の警官と娼婦たちやそのヒモの男たちとは、持ちつ持たれつの関係にあったのだが、着任早々から、ガサ入れを行ってしまう。
しかし、その客の中には、警察の上司もいて、呼び出された堅物の警官は、即刻首になってしまう。途方にくれているところに娼婦の一人“かわいいイルマ”(Irma la
Douce=原題)に出くわし彼は彼女のやさしさに心奪われ、イルマのヒモになってしまう。しかしイルマの仕事がイヤでたまらない彼はそこで一つの作戦を考え出すのだった・・・。
このマスターは「余談だが」と前置きして、ソルボンヌの経済学者で、弁護士だった、と言ったかと思うと、次にはシュバイツアー博士の下で仕事をしたことがある医師だったり、大ぼら吹きなのか真実なのか、映画のラスト・シーンも「これも余談だが・・・」で締めくくる。
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どんなジャンルでもこなしてしまうワイルダー監督お得意のロマンチック・コメディ映画。特にシャーリー・マクレーンのすっとぼけた個性と可愛らしさが全編に満ち溢れている。娼婦街がオール・セットというのが圧巻! 本作はアカデミー賞編曲賞を受賞している。
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ジャック・レモンはこの映画で、イルマにほかの男の相手をさせないために、金持ちの英国人、“X卿”に扮するのだが、英国人が使いそうなセリフを連発していた。クワイ川で戦ったことがある(「戦場にかける橋」)だったり、映画などで知られる場所を引き合いに出していた。
イルマの飼っている犬が、酒で酔っ払って寝込んだりといったシーンも笑わせる。
ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンのコンビも絶妙。
マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン、スペンサー・トレーシーとキャサリン・へプバーンの名コンビに匹敵するような・・・笑。
☆☆☆☆
監督作品(青は鑑賞済み:15本)
1933年 悪い種子 - Mauvaise Graine (脚本・監督)
1942年 少佐と少女 - The Major and the Minor (脚本・監督)
1943年 熱砂の秘密 - Five Graves to Cairo (脚本・監督)
1944年 深夜の告白 - Double Indemnity (脚本・監督)
1945年 失われた週末 - The Lost Weekend (脚本・監督)
1948年 皇帝円舞曲 - The Emperor Waltz (脚本・監督)
1948年 異国の出来事 - A Foreign Affair (脚本・監督)
1950年 サンセット大通り - Sunset Blvd. (脚本・監督)
1951年 地獄の英雄 - Ace in the Hole (脚本・監督・製作)
1953年 第十七捕虜収容所 - Stalag 17 (脚本・監督・製作)
1954年 麗しのサブリナ - Sabrina (脚本・監督・製作)
1955年 七年目の浮気 - The Seven Year Itch (脚本・監督・製作)
1957年 情婦 - Witness for the Prosecution (脚本・監督・製作)
1957年 昼下りの情事 - Love in the Afternoon (脚本・監督・製作)
1957年 翼よ! あれが巴里の灯だ - The Spirit of St. Louis (脚本・監督)
1959年 お熱いのがお好き - Some Like It Hot (脚本・監督・製作)
1960年 アパートの鍵貸します - The Apartment (脚本・監督・製作)
1961年 ワン・ツー・スリー - One, Two, Three (脚本・監督・製作) リバイバル
時の題名『ワン・ツー・スリーラブ・ハント作戦』
1963年 あなただけ今晩は - Irma la Douce (脚本・監督・製作)
1964年 ねぇ!キスしてよ - Kiss Me, Stupid (脚本・監督・製作)
1966年 恋人よ帰れ!我が胸に - The Fortune Cookie (脚本・監督・製作)
1970年 シャーロック・ホームズの冒険 - The Private Life of Sherlock Holmes (脚本・監督・製作)
1974年 フロント・ページ - The Front Page (脚本・監督)
1981年 バディ・バディ - Buddy Buddy (脚本・監督)
「第十七捕虜収容所」もあの音楽が印象的で、戦争の中にユーモアも交えて笑わせてくれた。
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