

映画「ふつうの子ども」(2025)は「そこのみにて光輝く」「ぼくが生きてる、ふたつの世界」などの呉美保監督の最新作。呉監督によると「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017)にインスパイヤされ、今までにない子供の映画を作りたかったという。
ちなみに「フロリダ・プロジェクト」は、貧困層のリアルな生活と、その中で輝く子供たちの姿を通して、社会の格差や大人の世界の残酷さを描いた作品(未見)。
映画は、令和の日本版「小さな恋のメロディ」ではないかと思ってしまった(笑)。「小恋メロディ」に置き換えると、生き物が好きな10歳の小学4年生・上田唯士(ゆいし、嶋田鉄太)がダニエル(マーク・レスター)。レスターの美形とは程遠いが。
図書館で環境問題に関する本を読む心愛(ここあ、瑠璃)が、メロディ(トレーシー・ハイド)。この2人の間に割って入るのが問題児の陽斗(はると、味元耀大)がトム(ジャック・ワイルド)。
陽斗自身も心愛らとの時間を大切にしたいと思い、秘密基地のような場所を見つけたり、環境問題を考えて牛を柵から自由にさせようとする。



授業の課題「私の毎日」で心愛の発表がすごすぎた。地球温暖化が進み二酸化炭素(CO2)の排出量が増えているのは大人のせいだというと、教師(風間俊介)は「極端だなあ」と及び腰で逃げ腰。
子どもたちが始めた「環境活動」が、やがて学校や親をも巻き込む騒動に発展していく姿を描く。
友情や成長、そして「普通」の中にある揺らぎや選択を、子どもたちのリアルな目線でユーモラスかつ繊細に描いている。
大半がオーディションで選ばれたという子役の演技が自然体でいい。問題を起こした子供3人の親が学校に呼ばれるが親の対応も三者三様。

「うちの子に限って」と陽斗をかばう母親に対して、心愛は「陽斗はずるいよ。花火もほとんど陽斗の考えだった。ふつうの生徒の邪魔をするのも陽斗だった」というと、陽斗の母は「いろいろ言われているけど違うなら違うと言いなさい」というのだが、陽斗はおろおろなくばかり。
キャリアウーマンらしい心愛の母親の冬(瀧内公美)は、家で厳しく言っているのにと教師やほかの家の事情などお構いなしに心愛をしかりつけ「昔はあんなに可愛かったのに、今は全然可愛くない」と。
牛の柵を壊した経緯などを唯士が話し始め「地球温暖化とかではないんです。三宅さんが好きで。三宅さんに好かれたくて。ごめんなさい」と絞り出すように言うと、心愛の母親「好きな女の子のために…。感動しちゃった」と年頃の男の子の心情を理解するのだった。

<ハウ・デア・ユー(How dare you?)>
親たちが騒々しく言いたい放題を言っている中で、心愛(ここあ)がぶつぶつと小声で反抗するように英語で「How dare you?」(よくもまあヌケヌケとそんなことが言える!)などとつぶやくところがゾクゾクするほど素晴らしい。この言葉がこの映画のツボだった!(笑)。
面談が終了した後、瑠璃が遠くから唯士に向かって声を出さずに、口の動きだけを見せる。
唯士はきょとんとして理解できなかった様子だが「How dare you?」(唯士が皆の前で自分の気持ち(好意)をさらけ出したことへの「驚き」や「よく言ったね!」という肯定的・皮肉的な反応)であることは間違いない(笑)。
子どもの純真さと気持ちのぶつかり合いを象徴するセリフだったかもしれない。








「ほんとに読んだの?」という半信半疑の表情(笑)。
<主な登場人物>
■上田唯士(ゆいし): 嶋田鉄太…小学4年生。10歳。クラスでは平凡ながら三宅心愛に恋心を抱き、彼女に近づくために環境活動に巻き込まれる。自分の気持ちに一生懸命。
■三宅心愛(ここあ): 瑠璃…心が強く、環境問題に関心を持つ“意識高い系”の女の子。大人にも臆せず発言する。
■橋本陽斗(はると): 味元耀大…クラスのやんちゃでやや問題児。陽気で活動的だが衝動的な面もある。唯士と一緒に動く。心愛への関心もあり、三角関係的な緊張を生む。
■上田恵子:蒼井優…唯士の母親。息子をあたたかく見守りつつ、育児に悩みながらも自己肯定感を高めて“褒めて伸ばす”タイプの母。
■浅井先生:風間俊介…唯士たちの担任教師。クラスの子どもたちと向き合う小学校の先生。子どもの発言や行動を受け止めつつ、教室という公的な場での大人としての立場も持つ。
■三宅冬(ふゆ):瀧内公美…心愛の母。子どもが自由に考え行動する様子を見守る立場に立つが、強い印象を残す存在。
・・・
小学生の全員が「タブレット」を使い、この映画の心愛にいたっては、大人の環境問題の対応に意見し、熱心に環境問題の本を読む…。「カーボン・ニュートラルの基本・動向」と言った難しい本を読む。意識の高さに驚く。
この映画は「高崎映画祭」(2026年)で作品賞を受賞。メジャーな映画賞(日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テンなど)で「国宝」が独占する中、ミニシアター系の作品が受賞するというのがいい。
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