
映画「佐藤さんと佐藤さん」(2025)を見る。超がつく地味な映画だが、夫婦の生活における「しんどさ」が生々しくリアルに描かれ、結構シビアな映画だった。
弁護士を目指している夫と、それならと勉強を始めた妻だったが、妻だけ試験に合格。夫は来る年も来る年も不合格。妻は弁護士が忙しくなり、夫は家で主夫業。プライドもメンツもなくなり隙間風が吹くことに。
妻から「離婚する?」と言われ、夫にも意地があり「試験に受かったら離婚する」と宣言。夫の実家の兄弟、両親からのプレッシャーも大きかった。
そして10年かかってやっと合格する。
実家では大喜び。兄弟の結婚式の祝いの席でスピーチを求められ「おかげで合格できました」と応援した周りの人たちに感謝をするが「私と妻は…」と言いかけたところで、妻が夫の腕を引っ張ってその場から連れ出す。
夫は、かつて宣言した通り15年間の結婚生活にピリオドを打つことになった。
弁護士になった佐藤サチ(岸井ゆきの)が離婚問題を担当することになるシーンが印象的。依頼人は、結婚50年で妻から離婚を突きつけられている男性。
この男性の話を聞いていると、言葉の端々に昭和臭がぷんぷんで「50年間、懸命に仕事をしてきて”自分が食べさせてきた”」という、あるある(笑)。
弁護士サチが、妻から預かってきた手紙を渡そうとすると、拒否するので、弁護士が代読する。
文面はこうだ。「離婚してください。お願いします。一緒にいると苦しいです。○○(妻の名前)」。
これを聞いた男は「それだけ?」と驚いた表情をする。短い言葉にすべてが集約されていて、弁護士が「慰謝料はなし。財産分与だけです」というと「任せます」という返事に変化した(笑)。
サチが夫から離婚を突きつけられたのは、妻の問い詰めるような「なんで?」「なんで?」の言葉に息苦しさを感じていたからだった。
15年間の結婚生活が失敗だったという映画ではないが、一緒に暮らしてはじめてわかった事実や、すれ違いを通して、共に新たな道を選ぶことはできた。
画面に時々「22」「37」などと数字が表れるが、主人公の年齢を示すのだと後から知った。それで、赤ん坊も4,5歳になったり、また幼子に戻ったりしたのだった。知っていたら、また別の見方もできたのだが…。


<ストーリー>
佐藤サチ(岸井ゆきの)と佐藤保(タモツ、宮沢氷魚)は、同じ大学のコーヒー研究会(略称コヒ研)に所属し、意気投合。22歳の時に付き合い始める。
活発な性格のサチと、真面目でこだわりが強いタモツ。正反対の2人は互いに惹かれ合い、卒業しても同棲して付き合いを続けていた。
サチは会社員として働き、タモツは学習塾のバイトをしながら弁護士の夢を追い、司法試験に合格するため勉強をしていた。
東北で農家を営むタモツの実家に2人で遊びに行くと「いつまでもあちらさんに待たせるわけにはいかんからね」と、母に結婚のためにも司法試験に受かるようプレッシャーをかけられる。
独学で学んでいるタモツの助けになりたいと、サチは共に勉強を始める。サチに教えることでタモツも再確認できると2人は共に勉強していたが、共に試験を受けて受かったのはサチだけだった。ダンス好きで活発なアウトドア派の佐藤サチ。
サチはどう慰めていいか分からず言葉を失う。そんなサチに素直におめでとうと言えないタモツ。それからサチは弁護士事務所で働き始め、忙しくなった代わりにタモツが主夫として家事のことを主にやるようになった。
大学の同級生同士が結婚し、結婚式にサチは出席したが、タモツは欠席。結婚式から帰ったサチは、上機嫌で同級生のことを話すが、タモツは不機嫌そうに聞いていた。
「引き出物、タモツの分もあるよ」とサチが言うと、タモツは「ご祝儀払っていないけど」と言う。するとサチは「まとめて払っておいたよ」と答える。
「払うよ。いくら?」と引き下がらないタモツ。サチが「8000円、2人分だからそれくらいするよ」と素っ気なく言うと、タモツは財布を見てお金が足りず「バイト代入ったら払う」と言うのだ。
些細な言葉から喧嘩になってしまった2人は物を投げ合い、タモツが投げた時に引き出物のグラスにあたり、割れてしまう。
ことほどさようなすれ違い。サチが何気なく言った「トイレットペーパーないよ」という言葉に引っかかり喧嘩になった。
「トイレットペーパーないね」はその事実に対する同意を求めたのだが「トイレットペーパーないよ」は夫には命令的にも聞こえたのだ。そのことをタモツが指摘すると、サチは「そんなつもりはないし、私が買ってくることの方が多いじゃん」と反論。
・・・
司法試験への挑戦と逆転合格、そして出産や育児をめぐるすれ違いの果てに「夫婦としての関係を修復できず、最終的に離婚を選択する」という結末を迎える。
育児や仕事に対する価値観のズレに加え、経済的な立場の違いやプライドが邪魔をして、お互いへの思いやりを保てなくなっていく。
修復不可能なほどに心と関係性が疲弊してしまった結果、二人はやり直すという選択もできず、最終的に離婚という道を選ぶことになる。

居酒屋のママ(佐々木希)が保(タモツ)に思わせぶりに近づいてきて、どうにかなるのかと思ったら、「案外、フツーの人間でつまらない。ただ、同情してもらいたいだけじゃないの」とバッサリだった(笑)。
・・・
監督は「ミセス・ノイズィ」(2019)の天野千尋。
岸井ゆきのと宮沢氷魚が夫婦役で初共演し、佐藤という同じ苗字を持つ男女が交際・結婚・出産を経て歩む15年間の軌跡をつづったドラマ。
ところで、同じ苗字同士の結婚というと、メリット・デメリットがあるようだ(笑)。届け出、書類手続き(免許など)は変更不要。離婚しても、姓は変わらない。
かつて森・森(森進一・森昌子)結婚が話題になったが、佐藤x佐藤、鈴木x鈴木のように同姓の結婚というのは年間どのくらいあるのかChatGPTに聞いて見た。
正確な統計はないが、確率的に年間数千件だという。日本の名字は佐藤、鈴木、高橋など上位10で1割くらいを占め、確率的にそれくらいになるようだ(かなりあいまい)。
同一氏名が多くなるのが鈴木一郎(イチロー選手?)佐藤太郎なのだという(笑)。病院受付で「佐藤さん」と呼ばれて3人が「ハイ」など。
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