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映画「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」(原題:Der Trafikant、2018)を見る。

「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」(原題:Der Trafikant、2018)を埼玉会館・小ホールで見る。一般1100円。NPO法人埼玉映画ネットワークによる月例映画上映会の12月作品。

原作はウィーン生まれの作家ローベルト・ゼーターラーによる2012年刊行のベストセラー小説「キオスク(ドイツ語版)」。ドイツでは50万部を超えるベストセラー。

日本では2019年5月末から7月にかけて開催された「EUフィルムデーズ 2019」で「キオスク」のタイトルで上映された後、2020年7月に一般劇場公開された。

監督はニコラウス・ライトナー、出演はジーモン・モルツェとブルーノ・ガンツ(遺作)など。

ナチス・ドイツによる併合が迫りつつあるオーストリアの首都ウィーンを舞台に、17歳の純朴な青年の青春を精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトとの交流とともに描いている。

この映画の2時30分の回の上映後に「アフターレクチャー」として、ドイツ・ウィーンなどドイツ語圏研究が専門の学習院大学小林和貴子教授の「ウィーンとユダヤ」と「映画の見どころ」の講演があり興味深かった。

フロイトという精神分析などで知られるオーストリア人の名前はよく聞くが、ユダヤ人であり、1938年3月にオーストリアのドイツとの合邦により、オーストリアが消滅(1945年に復活)。

フロイトの晩年のころで、映画ではそのあたりの時期に、一人の若者に対して恋愛指南などを伝授しているというのも面白い。

映画は、現実の中に、夢の出来事(もしそうしていたら…)が登場するなど、映像表現もなかなか面白い。

<ストーリー>
1937年、ナチス・ドイツによる併合が迫りつつあるオーストリア北部の自然豊かな湖畔の村で、17歳の青年フランツは母親と2人で暮らしている。

しかし、経済的な支えであった母の愛人が湖で雷に打たれて溺死したことで、フランツは母の古い友人であるオットーが営むウィーンの小さなタバコ屋(キオスク)に住み込みで働くことになる。

ある日、店の常連客である精神科医ジークムント・フロイト教授と親しくなったフランツは、教授から人生について様々なことを学ぶようになる。

そしてまずは教授の「恋をして人生を楽しめ」との助言に従い、街中に出てみる。そして、そこで出会ったボヘミア出身の奔放な女性アネシュカに恋をするが、彼女に弄(もてあそ)ばれてしまう。

気のいいオットーにも後押しされ、アネシュカの家を突き止めたフランツは彼女と深い仲になるが、再び彼女と連絡が取れなくなる。

ある夜、アネシュカの姿を見つけたフランツが彼女のあとをつけると、彼女がストリッパーとして働き、芸人仲間と深い仲になっていることを知る。生きるためと割り切っている彼女にフランツはショックを受ける。

オーストリアは遂にナチス・ドイツに併合され、フランツを取り巻く状況は一変する。かねてより、ユダヤ人とも共産主義者とも分け隔てなく商売をして、あからさまに反ナチスの姿勢を示していたオットーが、隣の精肉屋に密告され、ポルノを販売した罪でゲシュタポに逮捕されてしまう。

残されたフランツはタバコ屋を1人で切り盛りする。しばらくして、オットーが獄死したとの連絡とともに店に遺品が送られてくる。

一方、ユダヤ人であるフロイト教授とその家族はロンドンに亡命することになる。「ウィーンを出よう」という教授にフランツは「僕は店を守る」と答えると、教授は「それが君の務めだ」と返す。

フランツはウィーンにとどまるもう1つの理由であるアネシュカに会いに行き、どこか静かな場所でタバコ屋を開こうと提案して求婚する。

しかし彼女は既にナチスの将校の愛人となっていた。フランツは高級葉巻を教授に届け、愛や人生についての言葉をもらう。

駅で離れた場所から教授を見送ったフランツは、ナチスの建物の前に掲げられた旗を下ろし、代わりにオットーの遺品である片足のズボンを掲げる。これにより、フランツは店を閉めざるを得なくなる。

閉店したタバコ屋の前にやってきたアネシュカは、そこでガラス片(冒頭でフランツが故郷の湖の中で拾ったもの)を見つけて拾い上げる。

一方、フランツの故郷ではフランツを想う母の傍らで、アネシュカが拾ったものと同じと見られるガラス片が湖に沈んでいく様子が映され、フランツがその後どうなったかは明らかにされないまま物語は終了する。

・・・
ヒトラーナチスが台頭し始めた当初は、オーストリアでは、小劇場で、ヒトラーを題材にして、ヒトラーを皮肉ったコメディーを上演していたが、ナチスの親衛隊がやってくると状況は一変し、ユダヤ人たちは亡命したり、殺されたりで人数が減っていくのだった。

オーストリアの一般市民の生活と、ユダヤ人のフロイト教授などの生活レベルが雲泥の格差があり、ユダヤ人が上流階級に近づくほどに貧しい層からの妬みが生まれていったようだ。フロイトの邸宅などは豪華絢爛の建物だった。

こうした社会格差、貧富の差の問題が、人種差別にすり替えられていったという側面もあったようだ。

映画の見どころは、文化的、政治的にオーストリア(ウィーン)の末期を描いた点と、ウィーン文化の最後の輝きというのを若者の青春の輝きとダブらせて描いたところ。

オーストリア人(ドイツ人)とユダヤ人(フロイト)では本来ありえない友情のようなものを描いている。

埋もれがちな作品の1本ながら時代背景などを少しでも知ってくると面白い。

 

<キャスト>
フランツ・フーヘル: ジーモン・モルツェ…田舎育ちの17歳の純朴な青年。
ジークムント・フロイト: ブルーノ・ガンツ…世界的に有名な精神科医
アネシュカ: エマ・ドログノヴァ… ボスニア出身の女性。
オットー・トルスニエク: ヨハネス・クリシュ…タバコ屋の主人。第一次世界大戦で片足を失う。

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