fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ヒトラーの贋札」(2006)を見る。サスペンス・ヒューマンドラマ。

f:id:fpd:20200525215433j:plain

ヒトラーの贋札(にせさつ)」(2007)を見る。国家による史上最大の贋札事件と言われる、“ベルンハルト作戦”を題材にしたサスペンスフルなヒューマンドラマ。

第2次世界大戦中のドイツ、ザクセンハウゼン強制収容所で、ナチスから紙幣贋造(がんぞう)を強制されたユダヤ系技術者たちの苦悩のドラマをサスペンスタッチで描く。

監督は「アナトミー」のステファン・ルツォヴィツキー。実際に強制収容所で贋造(がんぞう)に携わった印刷技師アドルフ・ブルガーの著書が原作。歴史の中に秘められた真実の物語が驚き。80回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。

・・・

第二次世界大戦のさなか。1936年のドイツ、ベルリン。ナチスは敵国イギリス国内経済に打撃を与えるため、大規模なニセポンド札の製造に着手する。各地の収容所から印刷技術の専門家のユダヤ人をかきあつめ、ヘルツォーク親衛隊少佐(デーヴィト・シュトリーゾフ)のもと、作戦は開始された。

 

f:id:fpd:20200525215736j:plain

  f:id:fpd:20200525215559j:plain

当時、一介の捜査官だったヘルツォークに逮捕されたニセ札作りのプロ、サロモン・ソロヴィッチ(愛称サリー、カール・マルコヴィクス)も、リーダーとしてそこに加わった。そのほか、印刷技師・ブルガー、画学生のコーリャなどユダヤ系の技術者たちがいた。

これまでの収容所と違い、柔らかなベッドやまともな食事が提供される"破格"の待遇。やがて彼らユダヤ人捕虜たちはポンド札の偽造に成功し、つかの間の開放感を味わう。この作戦が続く限り、彼らの命も保証されているためだ。

f:id:fpd:20200525215509j:plain

 f:id:fpd:20200525222003j:plain

 f:id:fpd:20200526082329j:plain

 f:id:fpd:20200525222024j:plain

 f:id:fpd:20200525222100j:plain

偽造に成功するまでには、何人かの仲間の犠牲もあった。「真実を刷るのが印刷で、偽札作りの為に生かされている」と思うものもいた。英ポンドの偽造が発覚すれば、すべての計画が水泡に帰すので、製造された贋作ポンドは、スイス・チューリッヒ銀行の持ち込まれた。真札かどうか心配だといった口実だったが、結果は偽物ではないというお墨付きを得た。ロンドンでの保証も欲しいと、ロンドンで鑑定したところ、問題なしとなったのだ。

 f:id:fpd:20200525222147j:plain

こうして、贋作(がんさく)要員たちは、ポンドに続いて、週に100万ドルの印刷の命令が課されることになる。ブルガーは、妻をアウシュビッツで亡くし、「ガス室行きは間違いない」として、贋作には積極的には参加せず反対したが、サリーから、「きょう銃殺されるより、明日ガス室行きのほうがいい」と説得、なんとか捜査官ヘルツォークの前に、完成した札を見せることができた。この間にも、仲間で20歳のマーリャは銃殺されたが、結核だったから楽にさせたという論法で殺されたのだった。

偽札が完成した時には、ご褒美と称して卓球台が偽造チームに支給される。偽造チームは厚遇される一方で、薄い板壁の向こう側では、"普通の"ユダヤ人捕虜たちが毎日理不尽な処刑をなされているのだ。

ドイツ軍人の気まぐれで、その場で簡単に銃で撃ち殺されている。同胞が息絶える瞬間を偽造チームは毎日、銃声などの音で見ているのだ。同じ地獄だが、壁一枚隔てたあちらとこちらでは雲泥の差があって、運命の過酷さを鮮明に伝えてくるのだ。

そんな中、連合軍のベルリン攻撃が始まった。捜査官ヘルツォークが贋作のドルの札束を隠し持っていたことがサリーに見つけられてしまう。戦争が終わる。贋作の札束を持って、カジノで使い切るサリー。

f:id:fpd:20200525222215j:plain

f:id:fpd:20200525215858j:plain


サリーが砂浜で一人佇んでいると、カジノで大損したサリーを見ていた女が近づいてきて、「不運な人」と同情するがサリーは「お金は造れる」と、女と海岸でダンスを踊るのだった。

 

・・・

「ベルンハルト作戦」とはハインリヒ・ヒムラー率いる親衛隊によって画策され、ベルンハルト・クリューガー少佐(劇中ではヘルツォーク少佐)によってザクセンハウゼン強制収容所で実行に移された。実際に贋造されたポンド札は1億3,200万ポンドにのぼるといわれる。この金額は、英国の外貨準備金の4倍に相当する。こうした事実があった事に驚く。事実をベースとして、フィクションも加えながら映画化しているが、原作者は自身で納得しない限り映画化は許さなかったという。2008年日本公開の際に原作者も来日しているようだ。

2006年/ドイツ-オーストリア合作/96分/提供:クロックワークス、デックスエンタテインメント/配給・宣伝:クロックワークス