重厚な人間ドラマであった「シンドラーのリスト」に近い。残酷なシーンはほとんどないが内容では負けていない。主人公は、拘留されたユダヤ人を輸送する任務に当たるが、輸送列車の向かう先が収容所ガス室だと知った彼の決意と葛藤の実話。
・・・
映画の冒頭、タイプライターを叩く音をバックにテロップが流れる。
「1942年、ドイツ占領下のオランダ。オランダ系ユダヤ人は公園、レストラン、学校への出入りを禁じられた。自由を奪われ迫害されながらも、彼らは最悪の事態を免れるため屈辱を甘んじて受け入れた」。映画のラストには「差別と迫害に苦しむすべての人々に捧ぐ」とある。
・・・
主人公のドイツ系ユダヤ人ススキントは、ナチスの将校たちが、女たちが舞台でスカートをまくりあげてラインダンスなどを踊るオランダ劇場の支配人であることと、移送任務にあたることでアウシュビッツ行きをまぬがれていた。
ユダヤ人評議会の長老たちは、ナチ親衛隊とも仲良くしているようで、収容所送りのリスト作成を作成していた。
ドイツ人は上官将校の命令で数だけをこなすことに関心があって、実際に誰をリストに入れるか入れないかは評議会が決めている、といった事情が皮肉っぽく描かれている。
上半身裸の男たちが、溶鉱炉のようなところで、労働を行っていたが、そこで「卍」の鉄を作っていたりしている。
そんな中、ススキントは、あるとき、労働させられるというのは建前であって、”死の列車”に乗せるリストを自分が手伝っていることに気づき、そこから救出作戦に命をかけて取り組むことになる。
収容所へ送る人数のノルマ達成のために、見つかった赤ん坊は、”死のリスト”に書き込まれ、ラグビーのボールのように列車の中に投げ込まれる。人名リストと実際の人数との数合わせ。
学校の廃校舎に匿った13人の子供の数の赤ん坊の人数分の人形を抱えて列車に載せられる母親たち。 親子が離ればなれに引き裂かれる現実の厳しさを描いている。
映画の予告編で雰囲気が伝わる。
予告編
オランダ映画はあまり馴染みがないが、監督のルドルフ・ヴァン・デン・ベルフ(1949年~ )は、オランダの映画監督、脚本家。
1982年より30年にわたってドキュメンタリーや劇映画を制作。2010年9月に監督8本目となるフィーチャー映画「Tirza」が公開されたが、第83回アカデミー賞外国語映画賞のオランダ代表に選ばれたが、ノミネートには至らなかった。
監督作品:
「アイリーンを探して」 Looking for Eileen (1987) 監督・脚本
「Evenings」 (1989) 監督
「ザンガディクス」 De Johnsons (1992) 監督
「異常犯罪心理捜査」 In The Cold Light Of Day (1996) 監督
「For My Baby」 (1997) 監督・脚本・原案
「アムステルダム 恋の旅」 Snapshots (2002) 監督・脚本
「Tirza」 (2010) 監督・脚本
「ナチスの犬」 Süskind (2012) 監督・脚本
☆☆☆
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。