「ミケランジェロの暗号」 (原題:MEIN BESTER FEIND/MY BEST ENEMY、2010)を見たが、これはタイトルから重苦しい映画かと思ったら、スッキリした後味のいい映画だった。2008年の第80回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた傑作「ヒトラーの贋札」のスタッフ(製作会社とプロデューサー)が手掛けたブラックも含んだサスペンス・ミステリー。この作品について、カテゴリーでは「コメディ・ドラマ」に分類しているのもあるようだ。
前作同様、ナチスと命がけの駆け引きをするユダヤ人の物語。 ただし、ウォルフガング・ムルンバーガー監督の狙いはユダヤ人の悲劇を描くのではなく、悲喜劇を描きたかったという。それは、タイトル(原題:「私の最良の敵」)にも表れている。映画のラストを見れば理解・納得できる。
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当主の息子ヴィクトル(モーリッツ・ブライブトロイ)には、幼いころから一緒に育った家政婦の息子ルディ(ゲオルク・フリードリヒ)という親友がいた。ルディは家族と同じように育てられていた。しばらくドイツに行っており、ヴィクトルの母を心配させていたが、1938年、オーストリアに戻って来る。
ある日、ヴィクトルは、一家に伝わるミケランジェロのモーゼ素描の場所をこっそりルディに教えてしまう。その絵は、元々ローマ法王が所有していたもので、数百年前に盗まれたものだった。国家レベルの宝で、ナチス・ドイツはイタリアとの同盟のためにのどから手が出るほど欲しいものだった。
昔から裕福なカウフマン家に嫉妬し、仲良くしながらもヴィクトルに劣等感を持っていたルディは、ナチス・ドイツに傾倒していた。そして、親衛隊(SS)に入るため、絵の在りかを軍に密告してしまう。
ヴィクトルの父はルディに絵の場所を教えてしまった事を聞き、事前に絵を別の場所へ移し、画家に模写を数点書かせていた。
軍が絵を没収しに来ると、当主はスイスへ渡ることを条件に贋作を渡したが、軍はスイスから絵を取り戻すために訴えられることを恐れ、一家を強制収容所へ送る。
ルディは彼らが強制収容所送りになることには困惑したが、裕福な一家と使用人の自分の立場が一瞬で逆転したことに優越感を覚える。ヴィクトルの恋人レナまで奪ってしまうのだった。
しばらくして、ミケランジェロの絵でイタリアとの条約が結ばれようとしていたが、イタリアの鑑定士によって絵が贋作であることがわかり、本物をすぐに手に入れるためにヴィクトルが呼び出される。
ルディが彼をウィーンまで連れていく役目を負うが、彼らが乗った飛行機が襲撃され墜落する。三人の乗員のうち、ヴィクトルとルディは生き残るが、ルディは足を負傷していた。
しかし、やってきたのはナチスだった。小屋の裏手でそれを知ったヴィクトルは、自分が制服を着て現れる。
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見守る中、”婚約者”レナは・・・。
第二次大戦中のオーストリアを舞台にしているが、戦闘シーンや、暴力シーンはほとんどなく、かけひき、だまし合いのハラハラドキドキが続き、最後まで目が離せない。意外な”拾いもの”の映画だった。レナという女性を演じているウルズラ・シュトラウスという女優は、一見すると、ケイト・ブランシェットのように堂々としていて見どころだった。
ユダヤ人とドイツ人が入れ替わっているのでは、という若いドイツ親衛隊員が、上官に報告。「ユダヤ人には割礼(かつれい)があるはず。ズボンをおろせ」というシーンで、ドイツ兵でユダヤ人とされる男のズボンを下ろすと、誤解されるような「傷跡」があったが、「たまたま手術したことがある」も理解されなかった。ドイツ兵のふりをしたヴィクトルは、一か八か「自分も調べてくれ」と申し出るのだが・・・。
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「ミケランジェロの暗号」は、ナチス台頭期のオーストリアを舞台にした、二人の男の愛憎劇だといえる。彼らはユダヤ人とヨーロッパ人の幼なじみ。その立場が逆転するおかしさの中に、歴史の残酷な断面を描いている。
主人公のヴィクトル・カウフマンは裕福なユダヤ人画商。
一方、もう一人の主人公ルディ・スメカルは、カウフマン家の使用人の息子だ。
カウフマン家に育ててもらったルディだが、内心は金持ちに対する妬み・嫉妬がある。
ここで二人の立場は逆転したかに思われたが、物語は二転三転する。
邦題のなかに「暗号」とありやや大げさだが、絵画の本物、偽物などの隠し場所などがおもしろかった。思ったほどシリアスでなかったので楽しめた。
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