fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ヒトラーのための虐殺会議」(原題:Die Wannseekonferenz「ヴァンゼー会議」、2022)を見る

ヒトラーのための虐殺会議」(原題:Die Wannseekonferenz「ヴァンゼー会議」、2023)を見る(池袋・新文芸坐にて、シニア1,100円)。舞台が大邸宅の会議室の中だけというワン・シチュエーションドラマで、秘密裏に行われた会議の全貌が明かされる、エンタメを排除した硬派なドラマだった。

第2次世界大戦時、ナチス政権が1100万人のユダヤ人絶滅政策を決定した「バンゼー会議」の全貌を、アドルフ・アイヒマンが記録した議事録に基づいて映画化。

出演はオーストリアやドイツの俳優で、あまりなじみがないが、重厚な演技と存在感を見せている。主演は「es[エス]」のフィリップ・ホフマイヤーで、共演は「君がくれたグッドライフ」のヨハネス・アルマイヤー、「ミヒャエル」のマルクス・シュラインツアー、「正義のレジスタンス」のペーター・ヨルダン、「ビューティフル・カップル 復讐の心理」のマキシミリアン・ブリュックナー、「ディア・トーマス 東西ドイツの狭間で」のリリー・フィクナーなど。

・・・

(ネタバレ注意)
1942年1月20日正午、ベルリンのヴァンゼー湖畔に建つ大邸宅にナチス親衛隊と各事務次官が集められ「ユダヤ人問題の最終的解決」を議題とする会議が開かれた。出席したのは、国家保安部代表ラインハルト・ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)を議長とする高官15名と秘書1名。

座席には出席者の名札とメモ帳と筆記用具が並べられていく。ハインリヒ・ミュラージェイコブ・ディール)は、出席者の中で、気に入らない人物の名札の場所を変更するということも行った。

「最終的解決」とは、ヨーロッパにいるユダヤ人を計画的に抹殺することであることは明白だった。

もともとは海外移住させるという案もあったが、移送、強制収容、強制労働、計画的殺害などの方策、いわゆる「特別処理」が異論すら出ることなく淡々と議決され、最終解決の場所はアウシュビッツと決まり、1100万人ものユダヤ人の運命がたったの90分で決定づけられたのだった。

ラインハルト・ハイドリヒは、会議が思い通りに進んだことに満足し、会議の議事録は出席者の身にコピーを配布し、ほかには漏らさないように厳命した。

・・・
会議では「ユダヤ人問題」がテーマであり「人種の戦いも戦争だ」「東部をゲルマン化する」といった論調で進められた。

出席者たちがユダヤ人問題と大量虐殺についてまるでビジネスのように話し合う異様な光景が描き出される。これまでにもユダヤ人の虐殺は、チェコでの33,000人の死体の山が築かれたりと、銃殺が主流だった。

しかし、ドイツだけでなくヨーロッパ全域のユダヤ人の根絶が対象になることから、効率的に処理することが議題に上がり、列車で移送して、消毒と偽ってガス室に送るという案が承認されていく。

ユダヤ人とドイツ人の混血児の扱いはどうするとか、4分の1の血を引くことになるその子供たちは…といった議論もあったのには驚かされる。ユダヤ人の人種の根絶を図るために断種も提案されたが、時間稼ぎかと反対され却下された。

世界恐慌によるドイツ経済悪化の結果、福祉削減を背景として、1932年にプロイセン断種法案が提出されたが、ヒトラー内閣成立後に廃案となったあと、1933年7月14日に遺伝病子孫予防法として成立し、断種が認可されたという経緯がある。断種対象者は、先天性精神薄弱などの遺伝病者と重度のアルコール中毒者であった。

 

   ラインハルト・ハインリッヒ(左)とオットー・ホフマン

会議の議長を務めたラインハルト・ハインリッヒは「患者の脚を切りたいという医者はいない。ドイツを救うという任務から仕方がない」という独善的な考えだった。

議長の任務はヨーロッパ・ユダヤ人問題の最終的解決をであり、その内容について外務省、内務省などの官僚の上級職の人物などにも周知徹底するのが狙いだった。

参加者の中でも、とくに強硬派だったのはオットー・ホフマンマルクス・シュラインツアー)で「人道主義など不要」とユダヤ人系の家族や、半分ドイツ人の血が混じっている人間を擁護するような意見は容赦なく切り捨てるというのだった。

 

 

出席者は以下の通り。
■ラインハルト・ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)、国家保安本部の事実上の長官、親衛隊大将
■ハインリヒ・ミュラージェイコブ・ディール)、国家保安本部第IV局(ゲシュタポ)局長、親衛隊中将
■ゲルハルト・クロップファー(ファビアン・ブッシュ)、党官房法務局長
フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリツィンガー(トーマス・ロイブル)、首相官房局長
■オットー・ホフマン(マルクス・シュラインツアー)、親衛隊人種及び移住本部本部長、親衛隊中将
■ゲオルク・ライプブラント(ラファエル・シュタホビアク)、東部占領地省局長
■アルフレート・マイヤー(ペーター・ヨルダン)、東部占領地省次官・北ヴェストファーレン大管区指導者
■ヴィルヘルム・シュトゥッカート(ゴーデハート・ギーズ)、内務省次官
マルティン・フランツ・ユリウス・ルター(ジーモン・シュバルツ)、外務省次官補
■エーリヒ・ノイマン(マティアス・ブントシュー)、四ヵ年計画省次官
■ルドルフ・ランゲ(フレデリック・リンケマン)、ラトヴィア保安警察及びSD司令官代理、親衛隊少佐
■ヨーゼフ・ビューラー(サッシャ・ネイサン)、ポーランド総督府次官
■カール・エバーハルト・シェーンガルト(マキシミリアン・ブリュックナー)、ポーランド保安警察およびSD司令官、親衛隊上級大佐
■ローラント・フライスラー(アルント・クラビッター)、司法省次官
■アドルフ・アイヒマンヨハネス・アルマイヤー)、国家保安本部第IV局第IV部ユダヤ人担当課長、親衛隊中佐
■インゲブルク・ヴェーレマン(リリー・フィクナー)、秘書、議事録筆記
・・・

【ヴァンゼー会議(独: Wannseekonferenz、英: Wannsee Conference)】
第二次世界大戦中の1942年1月20日にドイツの高官らが会同して、ユダヤ人の移送と殺害について分担と連携を討議した会議のこと。会議はベルリンの高級住宅地、ヴァン湖(ヴァンゼー)畔にある親衛隊の所有する邸宅で開催されたことからこの名で呼ばれる。

会議の要約には、ドイツおよびその占領地からユダヤ人を排除する方法が国外移住の促進から移送と強制収容と強制労働と計画的殺害に変更されたことが特記されている。

ドイツや同盟国からユダヤ人を強制的に移送することは単にユダヤ人を排除するのではなく、彼らを強制労働者として利用することであった。

強制労働は特に道路建設のような大規模な社会基盤の整備に当てられたが、同時にそれは奴隷的重労働であった。

 

エンディングで、ナチスドイツは、600万人のユダヤ人を殺害したというテロップがある。

2022年製作/112分/G/ドイツ
原題:Die Wannseekonferenz
配給:クロックワークス

 

■「にほんブログ村」にポチッと!。

https://movie.blogmura.com/ranking/in   

https://movie.blogmura.com/moviereview/ranking/in