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ナチスが台頭してきた1930年のベルリン。
ある日、ロンドンから語学生ブライアン(マイケル・ヨーク)が、彼女のアパートに部屋を探しに訪れ、サリーの部屋に間借りする形で越してくることになった。ブライアンはサリーから紹介を受けたドイツ人フリッツ(フリッツ・ウェッパー)に英語を教えることになる。
やがてブライアンの英語の生徒に、美しい娘ナタリアが加わった。
フリッツはナタリアに熱を上げ求婚した。その一方でサリーとブライアンの前に、金持ちでハンサムなマクシミリアン男爵(ヘルムート・バーガー)が出現し、奇妙な友情が生まれようとしていた。
男爵は二人に豪華なプレゼントをして自らの城に招待する。サリーは男爵夫人になるチャンスがあることを知ったが、ブライアンも男同士でありながら男爵の恋人だった。
サリーを愛するブライアンはヤケを起こし、街のナチ党員と喧嘩をし怪我をするが、その枕元でサリーは男爵がアルゼンチンに永住するという電報を送りつけてきた事をブライアンに告げ、揉め事の元凶は解決する。
その後サリーは妊娠をブライアンに告げ、初めは子供が出来る喜びに二人とも浮かれていたが、彼女は自らの将来を考え中絶してしまい、その行動に怒りを隠せないブライアンに、彼女は自分が育児に向いていないと告げる。
サリーの傷ついた心を知ったブライアンはベルリンを去る決心をし、二人の別れは爽やかに訪れた。去ってゆくサリーの後ろ姿を見て、ブライアンはサリーを心から愛していることを知る。傷心のサリーは抱えた過去の全てを吹き飛ばすように、自分の人生を託した「キャバレー」を熱唱する。
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ライザ・ミネリがラストでダイナミックに歌う”人生はキャバレー”が迫力があるが、
ナチスの若い親衛隊が歌う”明日は我らのもの”や、キャバレー「キット・カット・クラブ」のMC(司会者)とサリーの二人が熱唱する”この世はすべて金次第”などが印象に残る。
”この世は金次第”の歌詞は、”マネー、マネー、マネー、カネ、カネ、カネ。おこぼれちょうだい。お金が天下を支配する。地獄の沙汰も金次第。キン・コン・カンと鳴る鐘の音。金があれば、恋人に去られても、ヨットが癒してくれる。こっちは貧乏だから、身に染みてわかっている。マルク エン ドルにポンド♪”と言ったもの。
”明日は我らのもの”は、親衛隊の若者が、気合を入れて「ハイル!ヒトラー」の手ぶりで歌うと、まわりの人間も一人また一人と立ち上がり、一緒に歌っていく。そんな中でも一人の年配者は、(行く末を案じてか)苦々しい顔の人間もいた。キャバレーの踊り子も、軍服姿で銃を構えた姿も見られるようになる。
ユダヤ人の家の玄関では、ナチスにより、その家の犬が殺されるといった光景が見られ、ドイツがやがて暗黒の時代に入りつつあることをうかがわせる。キャバレーの舞台での歌と踊りの映像の合間に、老人が軍服姿の男たちに暴力を受けているシーンも挿入されるのだ。
映画の冒頭の”ようこそ、キャバレーへ”と歌うMC(ジョエル・グレイ=アカデミー賞助演男優賞受賞)が圧巻の演技。
道路の壁には「KPD(カー・ぺー・デ―)」(ドイツ共産党)と書かれたポスターが貼られていたが、その党首とみられる人物にはX印が手書きで上書きされていた。ユダヤ人は共産党と組んで、陰謀を企てているというのがナチスのユダヤ人弾圧の口実だったようだ。KPDは、ヒトラー内閣成立後の1933年に解散させられた。
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40年以上前に見た映画だが、今見直してみると、新たに気がつくことも多い。
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