映画「FAIR PLAY/フェアプレー」(2023)を見る。ヘッジファンドで働くエリート男女が、女性の昇進によって関係に亀裂が生じ、事件が勃発する様を描く。
主演はフィービー・ディネヴァー(「ブリジャートン家」)とオールデン・エアエンライク(「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」)で、競争の過酷なヘッジファンドで働く若いカップルに舞い込んできた昇進話が、彼らの心の底に眠っていた“エゴ”をむき出しにする愛憎サスペンス。
「SUITS/スーツ」に参加したクロエ・ドモント監督は、本作が長編映画のデビュー作となる。
アメリカのビジネス社会の、使い古された言葉を使えば”生き馬の目を抜く”ような厳しさ、成績が上がらなければ、即クビの世界。自分が上に上り詰めるには、他人の足を引っ張るのは日常茶飯事。
女性が人事で抜擢されると、やっかみも大きくなにかとやかましい社会。ただ、エミリーの場合は、ハーバード大出の逸材であるのは事実で、理路整然と分析したり、的確なプレゼンを行い大きな実績も残す。
成果に対しての特別報酬も半端ではなく、数十万ドルの小切手が渡される。あとでルークがその小切手をちらりと見てから、自尊心を傷つけられ落ち込み、暴言を吐くようになるのだが…。
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超優秀な人間だけが集まるヘッジファンドで働くエミリー(フィービー・ディネヴァー)。エミリーは同僚のルーク(オールデン・エアエンライク)と婚約したが、社内恋愛は労働の規約に反するために周囲には黙っていた。
ある日、エミリーは昇進を告げられる。ルークが昇進の本命と目されていただけに、エミリーに立場を追い抜かれたルークは、自分も昇進しなければと焦り仕事で判断ミスを連発した。
しかも、上司からエミリーには夜中の2時にも連絡が来て、出かけることもある。ルークはエミリーを表面上は祝福したが「夜中にボスのところに行って何をしたのだ?」と疑心暗鬼。
そして、その日を境に、罵ったり、煽ったり、裏で上司に根回ししたりと、お互いに蹴落とし合う日々が続く。
エミリーは会社のボス・キャンベルには、ルークにストーカーされたと報告する。
家に帰ったエミリーは荷物をまとめていたルークをナイフで斬りつけて「これまでのことを謝れ」と言う。
ルークは涙を流しながら「今までごめん」と謝罪の言葉をやっと口にした。しかし、エミリーは「床の血を拭いて去れ」と言い放つのだった。
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ラストは賛否が分かれそう。婚約相手を突き放し、自身の社会的地位を選ぶところにエゴが見えないこともない。監督は女性監督。
主演のエミリーを演じるフィービー・ディネヴァーはNetflixのドラマ「ブリジャートン家」シリーズ(2020)に主演で出演している。エミリーがめそめそして煮え切らないルーク(オールデン・エアエンライク)を罵るシーンなどは圧巻。
「おとなのけんか」のケイト・ウインスレットや「マリッジ・ストーリー」のスカーレット・ヨハンソンのような迫力がある。雰囲気もヨハンソンに似ている?(笑)。
オフィスでは、クビを言い渡されてキレる社員。八つ当たりに、机上の物を蹴散らかす社員。自分のデスクからそんな光景を笑ながら眺め、また競争相手が一人減って、またか、と平静を装いながらもほくそ笑むほかの社員。明日は我が身だが…。
ハーバード大学出身で、ゴールドマンサックスから移籍してくるような超優秀者が集うヘッジファンドを舞台とすることで、人間の動物性本能や、性差が浮かび上がっていくというコンセプトになっているようだ。
※「Netflix」配信で鑑賞。