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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

ドラマ「ザ・ウォッチャー」(原題:The Watcher、2022、全7話)を見た。

        

Netflixオリジナルドラマ「ザ・ウォッチャー」(原題:The Watcher、2022、全7話)を見た。出演は、ナオミ・ワッツ、ミア・ファローなど。

2014年、ニュージャージー州の歴史ある大きな邸宅に住み始めた、ある一家のもとに、「ウォッチャー(監視人)」という差出人から、奇妙な手紙が届いたことから始まるこのドラマ、実話で未解決事件という。


第7話を見終わっても、犯人はわからないという、もやもや感が残ったが、それこそがミステリー。謎解きというよりも、人間の執着心の恐ろしさを描いたという点でみれば許せる。


タイプライターで打たれた英文タイプ用紙1枚の手紙の中身は以下のようなものだった。
「657番地に越してきたご家族へ。ご近所へようこそ。657番地に呼ばれ、ご購入を決めたのですか?657番地は何十年も前から、我が家の担当です。家が建築されてから、もうすぐ110年。私は家を見張る役目を担っています。1920年代には祖父が。1960年代には父が。そして、いまは私です。家の歴史を知っていますか?657番地の壁の中に何があるのか知っていますか?なぜあなたはそこにいるのですか?私は見ていますよ。」


差出人不明の不気味な怪文書だ。高額なローンを組んでまで、せっかく豪華な新居を手に入れたのに、こんな嫌がらせを受けるとは…と新居の住人は困惑し、私立探偵を雇ったり、家の周り中に監視カメラを設置するのだが…。


警察に訴えても、全く取り合わず、街ぐるみ、警察ぐるみで何かを隠しているような雰囲気だ。不動産斡旋業者も、胡散臭い人物ばかり…。

その家には、地下にトンネルがあって、近隣の何者かが出入りしている様子も描かれる。1920年代のアメリカの禁酒法時代の名残で、密造酒を運ぶために作ったのだろうという設定だったが…。

・・・
新居の住人の奥さんにナオミ・ワッツ。そのダンナにボビー・カナヴェイル。このダンナが、はっきり言って、いいかっこしいの男で、ジェリー・ルイスのような、間の抜けた面で、イラつかせる。


この夫婦と、二人の子どもが構成する家族は、奇妙な手紙を受け取る以外にも、不審な人物が家に入り込んでいたり、近所に敵意を向けてくる家族が存在するなど、理不尽な目に遭ったり疎外感を味わうこととなる。


そして、どの人に対しても「この人が手紙を書いた“ウォッチャー”なのではないか」と疑うようになってしまう。


隣人たちが気にしているのは、100年以上の歴史ある邸宅の保存についてだ。家が、新しい持ち主の所有物になったとしても、それは町の貴重な財産で、好き勝手に改築したり、庭の樹木を切ることは許されないと、家族に言ってくるのだ。


それだけでなく、部屋の内装にまでとやかく指図されるのだから、住人にとってはたまったものではない。あの怪文書には、家に対する偏執的な記述が見られたのは確かだ。


次々と登場する怪しげな人々の執着心は、家族はもちろん、視聴者の疑心暗鬼をも深めていく。近隣住民を演じる、とくに女性の俳優陣の怪演は見もので、最初は気づかなかったが「ローズマリーの赤ちゃん」「フォロー・ミー」のスター俳優ミア・ファローもいる(すっかり、別人の意地悪ばあさんになっていた。笑)。


手紙の犯人をめぐる推理は二転、三転し、視聴者を幻惑していくが、その真相よりも、人間の執着心のおそろしさを描くことに重きがあるようだ。


とくにアメリカでは、古くから中産階級を対象に、郊外に一戸建てを買わせようとするキャンペーンが続き、映画やドラマでも、このようなライフスタイルが焦点となることが非常に多かった。


そんな文化のなかで、適度な自然に囲まれた大きなマイホームに家族で住むというのは、万人にとっての幸せの象徴、成功の象徴となっているところがある。


だからこそドラマの冒頭で家を手に入れるための資金作りに、あらゆる証券、資産を現金化して財産の大半をつぎ込んだりする。最大限に無理をして高額のローンを組み、勤め先まで長距離通勤したり、手入れの面倒臭い芝生の庭や、枯葉がたまってしまうプールを手に入れようとするのだ。身分不相応なことをすると手痛い結果が待っている。


それにしても、執拗な隣人たちの嫌がらせは度を越していた。遠くから見はっている人物のシルエットは、時々登場していたが、真犯人は一体…。謎・謎・謎。

 

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