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映画「人数の町」(2020)を見る。ディストピア(暗黒世界)ミステリー。

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人数の町」(2020)を見る。監督は荒木伸二で長編初映画。主演は中村倫也

簡単な作業と引き換えに衣食住が保証され、享楽に耽ることもでき、出入りも自由だが、決して離れることはできないという奇妙な「町」を舞台に描くディストピア(反理想郷・暗黒世界)ミステリー。

人数の町とは奇妙なタイトルだが、その秘密が徐々に明かされていく。借金苦などで破綻した人間やネットカフェでの生活を追われた人間など社会で居場所を失った人間たち。

そうした世の中に居場所のない人たちを”奇妙な町”にデュードという男が連れ込んで、そこは衣食住が保証され、気に入った女性には部屋番号メモを渡してセックスの快楽を貪ることができるという「居場所」を与えていた。

しかし、その町に入るときに機械でチップを埋め込まれ、敷地から脱出を試みようとすると、気を失うほどの強烈な音楽が流れ、脱出は不可能という町でもある。町のルールというものがあり、全ては一冊の「バイブル」という本に記されていた。

一見すると楽に暮らせるパラダイスのような町だが、黄色いツナギを着た「チューター」と呼ばれる人間たちに管理され、簡単な労働もしなければならないという世界だ。

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借金で首がまわらなくなってしまい「謎の町」にやってきた来た蒼山哲也(中村倫也)は、もともと自分を律して生きることが苦手な青年。謎の町に来た当初は、不安な表情をしていたが、何も考えずに日々を過ごし、ぼーっとした人間に変わっていく。

そんなとき、、新しい住人・木村紅子(石橋静河)が町に登場。紅子は行方不明になった妹・緑(立花恵理)をこの町に探しに来たのだという。緑は、蒼山をいつも小ばかにしていた。初めて、蒼山は、緑には幼い娘がいて、娘を虐待する夫から逃げてきた過去があることを知る。

娘は緑から引き離され、町の別の場所に隔離されているのを見た紅子は「このままではいけない」とこの町から逃げることを決意。

謎の町での自堕落な生活になじんでしまった緑は、紅子の話を全く聞こうとしない。

緑を説得するため悪戦苦闘する紅子を見つめる蒼山は、町で漫然と過ごしていた時のとろんとした目から「紅子を守りたい」という気持ちが出たからか、力のある目に変わっていく。

「このままこの町にいてはいけない」という紅子の強い意志に動かされ、蒼山は、紅子と幼子の3人で町を出ることを決意する。

街を出る途中で待ち伏せていた若い女性チューターを殴り倒し、紅子と緑の娘の3人で逃亡する。

しかし町を脱出したものの、外の世界では蒼山と紅子にとっては、厳しい現実が待っていた。なんとか二人を守ろうと必死になる蒼山は、町に来る前の借金取りに殴られ、自分の人生を半分諦めたような情けない表情をした姿とは違う人間へと変化していた。

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ストーリーを見ていると、経済苦や破産者を一攫千金で誘うという、韓国で大ヒットとなったドラマ「イカ・ゲーム」とそっくり。「イカ・ゲーム」はサバイバルのために過酷なゲームがあったが、「人数の町」では、選挙の投票用紙をどこからかかき集めてきて、他人に代わって選挙で特定の候補の名前を投票することが行われていた。

人間が、もはや数字でしかない世の中を描いているが、投票に限らず、レストランでの食事の際に、一斉に、食べものの写真を撮り、人為的にいいねコメントをアップしている。”やらせ”のサクラ行為だが、管理社会、SNSの落とし穴、怖さなどを描いているのかもしれない。

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30代の半ばの中村倫也が、この映画ではぼんやりとした20代の若者のように見えたが、テレビなどの役柄とは大きく異なり、中村倫也の演技がなければ、平凡な映画になっていたかもしれない。

映画の途中で、ネットカフェで暮らす人数○○人、ホームレスの人数○○人…といった数字が織り込まれている。ネットカフェで清掃をしている若い女性従業員が、掃除をしながら店長らしき人に「(警察に)立ち退きを強いられて出て行った人たちはどうしたんでしょうね」と聞くシーンがある。店長も、返答できなかった。

イカ・ゲーム」のような、ヒヤヒヤ、ワクワクさせるエンタメ性がないので、後味がいい映画ではない。

 

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