fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「不都合な自由」(原題:Outside In、2017)を見る。

f:id:fpd:20220214111207j:plain

不都合な自由」(原題:Outside In、2017)を見る。

冤罪で20年の刑期を終え、仮釈放された38歳の男クリスと、刑務所にいる間もずっと彼を支え続けていたクリスの学生時代の教師・キャロルとの複雑な恋模様を描いた物語。

原題の「Outside In」は外側を内にするということで「裏返し」という意味。人間関係が表裏一体で、互いに向き合えない関係を表しているようだ。
・・・

f:id:fpd:20220214111231j:plain

走る車の中から窓の“”を見つめる男。何かを食べるとすぐに眠りに就いた。この髭面の男、クリス(ジェイ・デュプラス)は20年間いた刑務所から仮釈放されたばかり。

弟のテッドが運転する車で家に帰ると“サプライズ”で大勢の人がクリスの帰宅を歓迎する。なにしろ20年ぶりで顔も知らない人もいろいろで、ハグをしながら「俺を覚えてくれていてありがとう」とジョークを飛ばしばがら、温かい祝福を受け止めるクリス。

こんなに優しそうな男が20年間も収監されていたとは…。一体何があったのか。歓迎もつかの間、38歳になったクリスの再スタートが始まる。自転車で軽快にこぎだし“外”の世界を満喫、自由を謳歌する。

f:id:fpd:20220214111317j:plain

その一方、仮釈放なので郡を出られないなど規制があり、職探しも、前科があることからどこも断られ、仕事探しも困難を極める。

20年もの間、シャバ世界で手紙のやりとりなど交信をしていたのはたった一人、学生時代の女教師キャロル(イーディ・ファルコ)だけだった。

f:id:fpd:20220214111347j:plain

このキャロルは、服役中の人間を励ましたりするボランティア活動に生きがいを見出しているよう。キャロルにしてみれば、服役中励ましこそすれ、出獄した後まで関わろうとは思ってもみなかった。

キャロルの夫は、定年まじかで、今の平穏な生活に満足していて、妻とも会話もほとんどない状態。定年後に自由があればそれでいいと思っている。かなり頑固な性格。

キャロルはそんな夫に対して嫌気もさしていており、孤独感がますます募る。それを埋めるのがクリスとの時間ではあった。ただ、家庭を壊したくない、守りたい気持ちが強く、できればこれ以上深みにはまらないことを願っていた。

しかし、クリスは、キャロルだけが信頼でき、唯一頼れる存在。絆が愛情表現に変わるところは、それまでの静かな流れの中で、ダイナミック。

キャロルの10代後半の娘ヒルディ(ケイトリン・デヴァーも、両親との関係がうまくいっていない中で、誠実なクリスに惹かれていくという展開も。

二人で自然の中でサイクリングするなどが至福の時となっていく。クリスをめぐって母娘とのドロドロかと思うとそうでもなく、父親は家を出ていき、クリスとキャロルが心機一転で、二人で引越しを決める。

これから、戸惑いながらも新生活をスタートしていくのだろうという余韻を残してエンディング。

クリスが服役した理由などは途中でわずかに語られる。

その忌まわしき過去とは、クリスがビールを盗もうと店に入ったところ、そこにいた弟テッドと友人のシェーンが問題を起こし、シェーンは人を撃って殺してしまい、テッドとシェーンは逃げ出すも、クリスは被害者を救おうと処置。そのまま罪を被ったクリスは、真実を伏せたまま、罪人となったのだ。冤罪だったのだ。

服役20年で仮釈放。

弟テッドは、兄に対して後ろめたさもあって、刑務所に見舞いにもいかなかった。かなり自分勝手。常に穏やかな表情のクリスだが、弟の誕生日パーティでは、弟に対してキレるシーンもあった。弟は、返す言葉もなく、謝罪するだけだった。

キャロルの娘のヒルディはまだ若く未成年のティーンだが、ヒルディもまたフラストレーションを抱えていて、その原因が実はクリスと母の共依存のせいでもあった。自分の居場所として、空家で、テープをつなぎ合わせて張り巡らすテープアートに没頭することで自己表現を行っていた。

f:id:fpd:20220214113038j:plain

クリスは仮釈放で自由にはなったが、閉鎖的な村社会における”不都合な自由”であることには変わりはなかった。このタイトルは、言い得て妙。自由なのに自由な人生ではないということ。揺れ動く人妻の女心を演じるイーディ・ファルコという女優が複雑な心理を上手く演じていて見所だった。地味な映画だが、見て損のない映画だった。

f:id:fpd:20220214113056j:plain



■「にほんブログ村」にポチッとお願いします。

https://movie.blogmura.com/ranking/in    https://movie.blogmura.com/moviereview/ranking/in