1950年代のフランス映画を代表するスター女優だったフランソワーズ・アルヌールが20日に死去したと、フィガロ、ル・モンドなど仏主要メディアが報じた。90歳。長い間、闘病していたという。
1931年、アルジェリア (当時はフランス領) 生れ。父親は軍人で、母親は元舞台女優だった。1945年、軍務でモロッコに駐在する父親を残し、母親と共にパリへ移住した。
パリの高校を卒業後、ボエール・テロン夫人の門下で演劇を学び、1949年、ジャック・ベッケル監督「七月のランデブー」でデビューした。
1950年代に「過去を持つ愛情」(1955)「ヘッドライト」(1956)「幸福への招待」(1956)など一連のアンリ・ヴェルヌイユ監督作品やジャン・ルノワール監督「フレンチ・カンカン」(1954)、ロジェ・ヴァディム監督「大運河」(1957)などに出演。
可憐なトランジスタ・グラマーで、ブリジッド・バルドー以前のフランス映画ではセックス・シンボル的存在だった。
「学生たちの道」(1959)ではアラン・ドロンと共演。日本でも人気があり、文藝春秋の「大アンケートによる女優ベスト150」ではオードリー・ヘプバーン(2位)やイングリッド・バーグマン(4位)などを抑えて1位に選ばれている。
日本においてアルヌールの人気を決定づけた作品が 「ヘッドライト」 (1956/監督:アンリ・ヴェルヌイユ) 。フランスではそれほど評判にならなかったようだが、日本では大いに受け、仲代達矢、藤谷美和子主演 「道」 (1986) としてリメイクされている。
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「ヘッドライト」はテレビ放映を2度みたが、音楽も素晴らしく、初老のジャン・ギャバンが男の哀感を滲ませて素晴らしいメロドラマ。
原作はセルジュ・グルッサールの「しがない人々」。脚色は「禁じられた遊び」の原作者フランソワ・ボワイエ。撮影は「恋路」(1951)のルイ・パージュ、音楽はジョゼフ・コスマ。
パリとボルドー間を走る初老のトラック運転手ジャン(ジャン・ギャバン)はこの日、街道筋の常宿でふと一年前の出来事に思いを馳せた。あの日もこの宿を訪れた彼は、そこで年若い女中クロチルド(F.アルヌール)と出会い、恋に落ちた…。フランソワーズ・アルヌールの可憐さが印象的だった。
ご冥福をお祈りいたします。