「ギャング対Gメン」(1962)を見る。主演は鶴田浩二、監督は深作欣二。東映・東京撮影所の製作。岡田茂所長(のちの社長)は作品があまり気に入らなかったというが、岡田と親交のあった三島由紀夫が高評価したことで、深作の首がつながり、深作への会社の信頼が高まったという。「Gメン」はガバメントマン(政府役人の俗称)の複数形が転じて麻薬捜査などの特別捜査官のこと。
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港で、刑事の死体がクレーンに吊るされる事件が発生。警察は繁華街を支配するギャング・三立興業のしわざと見込むが証拠がなく、手出しができなかった。
ベテラン刑事・尾形(加藤嘉)は、三立興業の元幹部で、嫌がらせを受けて運送店を閉めたばかりの東島(とうじま、鶴田浩二)、酒場を立ち退かされた前田など、かつて自身が更生させた元ギャングたちを集め、そこに暴力事件を起こした刑事・野口(織本順吉)を加えて、ニセの新興ギャング組織を仕立ててのゲリラ捜査「Gメン作戦」を計画した。
かたき討ちのために東島を殺しにやって来た黒木(梅宮辰夫)が成り行きで仲間に加わったほか、東島の異母弟・修(千葉真一)が東島の忠告に逆らい、ひそかに三立興業に潜入した。
三立興業のボス・辰村(丹波哲郎)は、捜査をやめさせるため、東島の婚約者・明子(佐久間良子)を人質に取り、さらにはスパイと見破った修を殺害する。東島たちがひるまず捜査を続けた結果、三立興業の資金源はニセ洋酒の密造であることが明らかになり、密造酒工場となっていた港の倉庫を突き止めた。
しかしGメンの1人・五郎(曽根晴美)の裏切りにより、倉庫にたどり着いた東島たちは、三立興業の子分たちに囲まれ、爆薬を仕掛けた倉庫の一室に閉じ込められてしまう。
口封じのため三立興業に撃たれた五郎は改心し、瀕死状態で倉庫の鍵を開けたすえ絶命。東島たちは脱出に成功する。
東島たちと三立興業は銃撃戦となり、Gメンはひとり、またひとりと命を奪われていく。東島たちは倉庫に残された密造酒を使った火炎瓶を発案して危機を脱し、到着した警官隊の助力もあって辰村を倒した。
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映画は、当時人気だったアメリカのドラマ「アンタッチャブル」のようなアクションを目指して企画されたという。そのため、密造酒などが登場する。
鶴田浩二は正統派二枚目としてゆるぎない地位にあって主役。
陰のある二枚目としておもに敵役・悪役で活躍した丹波哲郎が大物ぶりを見せる。
元やくざの東島(鶴田浩二)に向かって辰村(丹波哲郎)が「一度リングを降りたボクサーのカムバックは難しいぜ」というと東島は「ジンクスは破るためにある」と返す。「ジンクスをバカにしちゃあいけないよ」と高笑いをする辰村。しかし、結局、ラストで辰村は銃で撃たれて死んでいくが、その時に「ジンクスをバカにしちゃあいけない」と東島。
丹波哲郎は、陰影のある悪役という点では、30代のころは二枚目で「日本のアラン・ドロン」のような印象(個人の感想です。笑)。
丹波哲郎は、1952年のデビュー(「殺人容疑者」)以来、新東宝(東宝)作品に出演してきたが、1962年「恋と太陽とギャング」で初めて東映作品に出演。「砂の器」(1974、松竹)などを除き、主に東映の作品に多く出演した。
外国映画も「第七の暁」(1964)「007は二度死ぬ」(1966)「五人の軍隊」(1969)など10本に出演した。態度が大きいことでも有名で、時間に遅れる常習犯でもあったようだ(実際に撮影現場で目撃したことがあるが、「やぁ、やぁ」と大きく手を振って、笑ってお茶を濁し、憎めないキャラでもあったようだ。)
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主な登場人物:( )は撮影当時の年齢。
東島量次:鶴田浩二(37)
辰村重吾:丹波哲郎(40)
黒木雅夫:梅宮辰夫(24)
梶修:千葉真一(23)
水野明子:佐久間良子(23)
石原五郎:曽根晴美(24)
野口雄一:織本順吉(35)
松島守:砂塚秀夫(30)
ナオミ:沢たまき(25)
藤川警部:神田隆(44)
尾形刑事:加藤嘉(49)
佐倉佐一:小林重四郎(53)
鈴本組親分:山口勇(58)
銃撃シーンで、至近距離で何発も銃を撃つシーンが過激であると当時、問題となったようだ。千葉真一がまだ20代前半で無鉄砲ぶりの若造を演じている。丹波哲郎と千葉真一は、のちにドラマ「キーハンター」などで再共演することになる。