「タワーリング・インフェルノ」(原題: The Towering Inferno、1974)を再見した(ブルーレイ)。タイトルの意味は「そびえ立つ地獄」。1970年代中盤期のいわゆる「パニック映画」ブームの中でも「ポセイドン・アドベンチャー」と並んで最高傑作と評されている。「タワーリング」と「ポセイドン」はパニック2大巨塔と思いますが、いかがでしょう(笑)。のちの「タイタニック」と合わせて3巨塔かも。
ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーンの当時の2大俳優の主演。ほかにウィリアム・ホールデン、フレッド・アステア、ジェニファー・ジョーンズなど豪華俳優がこぞって出演。
ワーナー・ブラザースと20世紀フォックス共同製作・提供作品で、経営難にあった20世紀フォックスが立ち直るきっかけともなった。日本では1975年に公開。1974年度のアカデミー撮影賞、編集賞、歌曲賞を受賞。
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地上550メートル・138階、サンフランシスコにそびえ立つ世界最大の超高層ビルが、その落成式の日に地下の発電機の故障から火災が発生。やがて数百人の生命を飲み込む炎の地獄と化して燃え上がる。その大惨事を中心に、直面した人々のドラマを描くパニック娯楽大作。
小さな子供の救助や、ロープを使っての脱出などハラハラさせるシーンも多く、また群像劇で、いくつかのエピソードもあった。
(ネタバレになるが)思いつくまま。
■ビルのオーナーで社長(ウィリアム・ホールデン)と娘婿(リチャード・チェンバレン)との確執。社長が、予算を削減で200万ドル安くしろという命令を実行するため、また私腹を肥やすため、娘婿は低品質な配線に差し替えるという不正な電線工事を行い、火災の原因を作った。その手抜き工事が発覚。それを叱責されて、酒で紛らわせるなど自暴自棄になる。
■元詐欺師の70代の男(フレッド・アステア)は富豪の未亡人(ジェニファー・ジョーンズ)に偽造株券の購入を勧めるうちに老いらくの恋に。未亡人は、ビルの外のガラス製の展望用エレベーターから落下し死んでしまう。
■広報部長ダン・ビグロー(ロバート・ワグナー)とその秘書(スーザン・フラネリー)の密会不倫。65階の部屋で取り残される。「二人の関係は知られないようにしないと」と語っていたが、二人とも火に囲まれて死んでしまう。関係は文字通り「墓の中まで」(笑)。
■ビル設計者のダグ(ポール・ニューマン)と婚約者スーザン(フェイ・ダナウエイ)の関係。フェイ・ダナウエイは、編集長に抜擢される話があり、ダグとの生活の板挟みになる。ノーブラで、胸元の開いたドレスで、見せ過ぎ(笑)。余談だが「華麗なる賭け」(1968)では、マックィ-ンと官能的シーンがあったと思うが、今回は、元カレ(マックィ-ン)からニューマンに乗り換えていた(笑)。
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(ストーリー)アメリカ・サンフランシスコの新名所、138階建のグラスタワーが落成式を迎えた。ビルの設計者はダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)。社長はジェームズ(ジム)・ダンカン(ウィリアム・ホールデン)。ロバーツはこの仕事を最後に、婚約者のスーザン(フェイ・ダナウェイ)と砂漠で生活をするために退職を志願しているが、社長はそれを引き留め続けている。
最上階の会場に300名の来賓を招いた落成式が始まる頃、ビル地下室の発電機が故障。主任技師らは予備の発電機を始動させた。
実はこの時、予備の発電機を動かしたことで小さな火花が走り配線に移ると同時に、81階にある物置室の配電盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が、マットをくすぶらせ始めたのだった。
スーザンと将来に向けて話し合っていたロバーツのもとに、電気系統の異常の連絡が入る。報告を受けたロバーツは、ウィル・ギディング(ノーマン・バートン)とともに、電気系統を点検する。配線工事が自分の設計通りに行われておらずひどい手抜きであり、配線の規格も設計したものより細いことに気付き憤然となった。
ダンカンの娘婿で、ビル建設の責任者のロジャー・シモンズ(リチャード・チェンバレン)が、予算を減らすために行った電気系統工事の手抜きと配線の規格落ちが原因となり、81階の物置室でボヤ火災が発生していたのだ。
ロバーツはロジャーに工事の手抜きを責めたが、ロジャーは建築法の規定範囲内で問題ないと突っぱねた。ロジャーは、経費の切り詰めを義父のオーナーから迫られて、高層ビルでは大きな規格の配線でないと熱が生じることに配慮せず、電気配線で手抜きをしたのだった。
その後、50階にある中央保安室の保安係主任ハリー・ジャーニガン(O・J・シンプソン)は、災害探知装置を監視していたが、警報装置が作動していないのに、異常な反応があったのに気が付く。そして、ビル内のどこかで火災が発生しているのではと考え81階へ向かう。
落成式には、ゲイリー・パーカー上院議員(ロバート・ヴォーン)、ロバート・ラムジー市長(ジャック・コリンズ)、市長夫人(シーラ・アレン)などをはじめとする各界の要人や、ビルの80階より上の住居部分の住人である、株専門の詐欺師だったハーリー・クレイボーン(フレッド・アステア)や、富豪の未亡人のリゾレット・ミュラー(ジェニファー・ジョーンズ)も招かれ、最上階のプロムナードホールへ集まっていた。ハーリーとリゾレットは、お互いに惹かれていく。
81階の物置室は火の海となり、煙が充満して室外に煙が流れ出していた。その煙をみた警備員が扉を不用意に開けたため、火が一気に広がり、扉を開けた警備員を助けようとしたウィル・ギディングズは、火に包まれ重傷を負った。
81階へ到着したジャーニガンと、ロバーツは、火災の状況をみてダンカンに電話をし、ただちに式典を中止してビルからの退去を要請したが、ダンカンは、既に出動していた消防隊により鎮火できると頑強に信じて応じようとはしなかった。
やがて消防隊が到着。チーフのマイケル・オハラハン(スティーブ・マックイーン)は、現場の状況を見て火事の酷さを悟り、ただちに79階に司令センターを設置。消火ホースだけでは81階の火災は抑えられないとして、138階のプロムナードホールへ行き、ダンカンに300人の客の緊急避難を命じたが・・・。
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超高層ビルの火災を描いたパニック映画だが、”設計屋の高層ビル競争での(コスト削減のための)手抜き”への警告もテーマになっていた。高層ビルを建設するときは、手抜きをしないように設計・建設しましょうね(笑)。
■消防隊長のスティーブ・マックィーンがビル設計を担当したポール・ニューマンに言うセリフ。
「消防隊の消火が可能なのは、70階までだ。設計屋は(自己満足のために)高さを競いたがる」「今回の死者は200人ですんだが、10,000人になる可能性がある」。このセリフを残して消防士マックィーンは去っていく。
■設計者ポール・ニューマンのセリフ。「ビルの設計の悪い見本として残しておこう」。
1990年に火災消火を描いた「バックドラフト」があったが、アメリカでは、人命救助に関わる仕事である消防士は職業として人気は高い。
「タワーリング・インフェルノ」の最終的な興行収入は37億2,500万円を記録し「ゴッドファーザー」「エクソシスト」を破り洋画ヒット作の最高を記録した(1975年時点)。その後「E.T.」(1983)「タイタニック」(1997)などが記録を塗り替える。
「タワーリング・インフェルノ」はこれまでに、テレビでは1979年~2019年までの間に「ゴールデン洋画劇場」、BSジャパンなどで計16回放送されている。
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映画製作当時の俳優の年齢:
・フレッド・アステア(75)
・ジェニファー・ジョーンズ(55)
・ポール・ニューマン(49)
・スティーブ・マックィーン(44)
・ロバート・ワグナー(44)*
・ロバート・ヴォーン(42)
・リチャード・チェンバレン(40)*
・フェイ・ダナウエイ(33)*
・O・J・シンプソン(27)*
(*は存命)
オールスターキャスト映画も、1970年代後半あたりまでで、現在では、これほどの大規模な映画の製作は不可能かもしれない。