「オーバー・フェンス」(2016)を見た。映画は「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」に続く佐藤泰志の小説を原作にした函館発信映画の最終章。佐藤泰志が執筆活動を諦めかけ、職業訓練校で過ごした頃の経験を基にした小説を「マイ・バック・ページ」の山下敦弘監督が、オダギリジョーと蒼井優の主演で映画化。
函館を舞台に、妻と別れて職業訓練校に通うアラフォー男と、風変わりな若いホステスとの出会いを描くせつないラブストーリー。蒼井優主演の最新作「宮本から君へ」(2019)のぶっ飛び演技の原点のような強烈な蒼井優の様々な表情と演技に驚かされる。
タイトルの「オーバーフェンス」は、訓練校の科目対抗ソフトボール大会で3番打者を任され、健一が外野のフェンスの先に見た、自分自身の越えなければならないものの象徴「幻のフェンス」に向かい、力を込めてバットを振り抜く…ことから来ている。
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家庭を顧みず、妻(優香)に見限られた白岩(オダギリジョー)は、東京から故郷の函館へ戻る。だが、実家には顔を出さず、函館職業訓練校に通いながら、失業保険で暮らしていた。訓練校とアパートを往復するだけの毎日だったが、ある日、同じ訓練校に通う代島(松田翔太)に連れられ、キャバクラへ。そこで鳥の動きを真似る風変わりな若いホステスの聡(さとし、蒼井優)と出会い、ひかれていく。
聡(蒼井優)が「私はずれている。ぶっ壊れている」というと、白岩(オダギリジョー)は「オレは、ぶっ壊すほうだから、お前よりひどい」という。蒼井優は、その絶叫ぶりや、狂ったような表情や、独特のスタイルの踊りは、バレエを習っていたということで、「フラガール」や「花とアリス」でもダンスを見せていたが、印象的だった。
■キネマ旬報の日本映画ベスト・テン(2016年度)で第9位。
3位:「淵に立つ」(深田晃司監督)☆☆☆
4位:「ディストラクション・ベイビーズ」(真利子哲也監督)
6位:「リップヴァンウィンクルの花嫁」(岩井俊二監督)★★
7位:「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野諒太監督)☆☆☆☆
9位:「オーバー・フェンス」(山下敦弘監督)☆☆☆
10位:「怒り」(李相日監督)☆☆☆
※4位の「ディストラクション・ベイビーズ」のみ未見。