今春アメリカで社会現象となり、全米歴代映画の興行収入で3位、世界歴代9位の興収という大ヒット映画「ブラックパンサー」(原題:Black Panther, 2018)を見た。何万本と公開されてきた映画の中で、”歴代”3位というのが、いかにすごいかを物語っている。
すごい!映画を見逃していた!(笑)。
2番館(2本立てなど)で上映があれば駆けつけて劇場でもう一度見たい映画だ。
長年興行1位だった「タイタニック」や「ジュラシック・ワールド」も超えてしまうほどの映画とはどんな映画なのか、興味津々で見たが、アクション・ヒーロー&ヒロインの映画というだけでなく、実に奥深い映画だった!
全米歴代累計興行収入トップ10(2018年5月29日時点) | ||
1位 | スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015年) | 9億3670万ドル |
2位 | アバター(2009年) | 7億6050万ドル |
3位 | ブラックパンサー(2018年) | 6億9870万ドル |
4位 | タイタニック(1997年) | 6億5940万ドル |
5位 | ジュラシック・ワールド(2015年) | 6億5230ドル |
6位 | アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年) | 6億2640万ドル |
7位 | アベンジャーズ(2012年) | 6億2340万ドル |
8位 | スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017年) | 6億2020万ドル |
9位 | ダークナイト(2008年) | 5億3490万ドル |
10位 | ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016年) | 5億3220万 |
(Box Office Mojo 調べ) |
一言でいえば「ブレードランナー 2049」のアフリカ版!
「え、アフリカにそんなハイテク技術が?」という疑問があるが、実はダイヤモンドや石油といった地下資源のほかに、エネルギー源である万能鉱石ともいうべき「ヴィブラニウム」という資源があり、その事実は500年間も隠されてきたのだった。その資源の情報がアメリカなどに漏れないようにしてきたが、アメリカに送られたワカンダ人のスパイの裏切りにより情報が漏れるという展開。
宇宙船が登場するところなど「スターウォーズ」「ワンダーウーマン」などにも通じるところがある。この映画は監督以下、出演者の90%以上がアフリカ系アメリカ人であるという、ブラック・パワーによるスーパーヒーローという設定が新鮮だ。
国連会議でスピーチするワカンダ国王が「協力して分かち合っていきたい」というと、どこかの代表が「何を分かち合うというのだ(何もないくせに、という皮肉を込めて)いうと、国王は、にやっと微笑むのだ。
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舞台となるのはアフリカの架空の国、ワカンダ。
主人公のブラックパンサーのキャラクターが斬新で、国王の息子という設定。国王になり、特殊な植物を摂取してブラックパンサーのスーツを身に着けると、パワーを手に入れる。黒人のヒーローの誕生というのが今日の多様性を象徴している。現在、世界が直面する様々な社会問題と関わって描かれているのが、作品に深みを与えている。
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主人公は男性だが、これを支えるのは、女性で占められている。国王ティ・チャラの妹で、ブラックパンサーのスーツなどを開発する天才科学者のシュリは、これまでのアクション映画では主に男性が担ってきた役どころ。シュリの直属のボディガードである最強戦士のオコエも女性。黒人であるだけでなく、女性のパワーを強調した点が「ブラックパンサー」の大きな特徴。
推定される制作費は約200億円と、マーベルヒーロー単独作品としてのほぼ上限(「アイアンマン3」と同等)に達しているが、興行結果を見れば大成功と言えそうだ。一般的に制作費の3倍の興収があれば十分ペイすると言われている。
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物語の主な舞台は、アフリカの架空の王国・ワカンダ。その中心地は、埋蔵されている万能的な鉱石・ヴィブラニウムによって、世界のなかでも圧倒的な文明都市に発展していたが、国民の身の安全やヴィブラニウムの守護を目的に、都市の存在は極秘とされてきた。
王として自国の平和を守ってきた父の死去により、本作の主人公となる息子のティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)が、後を継ぎワカンダ国王に即位し、ヴィブラニウムを使用したハイテク武器や鋭利な爪、スーツ、超人的な力を与えてくれるハーブなどを駆使したヒーロー“ブラックパンサー”として悪と戦うのだが・・・。
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出演者は「それでも夜は明ける」でアカデミー賞助演女優賞を獲得したルピタ・ニョンゴ(王国のスパイ役)「扉をたたく人」などのダナイ・グリラ(最強の戦士役)「トレイン・ミッション」「レディ・プレイヤー1」などのレティーシャ・ライト(天才科学者役)など、活躍する女性キャラクターが自立した存在として描かれている。
このほか「ラブ・アクチュアリー」「ホビット決戦のゆくえ」などのマーティン・フリーマン(CIAエージェント役)「ロード・オブ・ザ・リングス」シリーズなどのアンディ・サーキス(凶悪な武器商人役)「大統領の執事の涙」「フォーン・ブース」のフォレスト・ウィテカー、「フルートベール駅で」のマイケル・B・ジョーダン(王位狙うキルモンガー役)など。
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小ネタも面白い。
例えば、スパイとして送り込まれたワカンダ人2人のもとに、2人のワカンダの女兵士がやってくる。一人が様子を見に行くと「グレイス・ジョーンズのような女がいたぜ」だった。映画ファンなら、すぐわかるが「007 美しき獲物たち」(原題:A View To Kill)のグレイス・ジョーンズのこと。アクロバティックな動きが印象的だった。
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1970年代初めにも、ブラックパワー台頭といった映画が相次いで製作されたことがある。「黒いジャガー」シリーズ、「ロールスロイスに銀の銃」「ボクサー」などだ。しかし、これらの映画は、白人社会からの視点であったように見える。ブラック・パンサー=黒い豹は、アフリカ系アメリカ人の目から見た映画であるところが大きな違いか。
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アフリカというと貧困と農業国というイメージが強いが「アフリカの巨人」」と言われるナイジェリアは、GDPでは世界20位にランクされていうというから驚きだ。
映画は奥深いテーマを含んでいて、見ごたえがある。
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