公開当時は、アラン・ドロンとカトリーヌ・ドヌーブの共演ということでまさに美男・美女の出演が話題になっていた。ドロン作品の中では、目立たない部類の作品だが、フランスを代表する2大スターを見るという点では貴重な作品。
ドロンが演じるのが、クールな殺し屋などギャングではなく、犯罪を取り締まる警察署長という役柄だった。やはりドロンは、陰影を帯びた表情は悪の匂いのほうが似合う。役柄としては、表向きはパリのナイトクラブの経営者で実はギャングという裏の顔を持つ顔役(リチャード・クレンナが演じた)の方が良かったかも。
フランス映画では、かたい友情の絆で結ばれながらも、やがて対決の運命に向っていくというストーリーがよく見られるが、この映画も、パリ警察の鬼刑事と、夜のパリに君臨する顔役の二人の男と、その蔭で生きる哀しい女の運命を描いている。登場する人物の過去の関係性などは省かれている。撮影はワルター・ウォティッツ、音楽はミシェル・コロンビエ。
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ギャングであり、表の顔はパリのナイトクラブの経営者として夜のパリを牛耳る男シモン(リチャード・クレンナ)は、仲間のルイ、マルク、ポールと大西洋に臨むある小さな町の銀行を襲撃、大金を強奪する。しかし、隙をつかれてマルクが撃たれ、負傷してしまう。
一方、パリ警視庁のエドゥアール・コールマン刑事(警察署長、アラン・ドロン)は、ある組織が税関とグルになって麻薬をリスボン行きの特急で運び出すという情報をキャッチする。そして午後7時59分、特急は運び屋を乗せてパリを出発した。シモンら3人はヘリコプターを使った作戦でその麻薬を横取りした。
数日後、マルクの死体が発見される。シモンらに口封じされたのだ。コールマンはマルクの身元から犯人を割り出し、主犯がシモンであるとにらむ。仲間を次々と検挙したコールマンは、ついにシモンと対峙する。だが2人はかつて、堅い友情で結ばれた戦友同士だったのだが・・・。これが単純なストーリー。
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リスボン特急を追ってヘリコプターが近づき、ヘリから列車に乗り移り、車内の麻薬を盗んで、再びヘリに乗って逃げるというシーンだが、この急行列車とヘリコプターが、どう見てもミニチュアと分かり、チャチ(笑)。
簡単にスイスイと事が運ぶのも出来すぎ。
45年も前の映画で、CG技術もなかったのでやむを得ないが、最近の「オリエント急行殺人事件」などと比べると雲泥の差がある。ただ、列車の中で、ヘリコプターから列車に乗り込んだシモンが着替えをするシーンや、麻薬を隠し持つ運び屋の部屋の鍵を開けるための”道具”など見るべきシーンも多い。
1960年代~70年代の映画では、タバコを吸うシーンが多いが「リスボン特急」では、ほぼ全員がタバコをプカプカ。ドロンもくわえタバコで、ピアノまでひいてしまう。
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パリの町に夜のとばりが降りると、それを待っていたかのようにパトカーの赤いランプが廻りだす。そしてエドアール・コールマン刑事(アラン・ドロン)の一日が始まる。
一台のダッジが海岸にうち寄せる波しぶきをかぶりながら疾走する。
車の中では、四人の男が終始おし黙ったままだった。ハンドルを握るルイ(マイケル・コンラッド)。その隣りに首領株のシモン(リチャード・クレンナ)。後部にマルク(アンドレ・プス)と、ポール(リカルド・クッチョーラ)。
四人は大西洋に臨むある小さな町の銀行襲撃のために、パリから車を走らせてきたのだった。閉店まぎわの銀行に客を装って入るシモン。右手にはコルト45が握られている。続いてマルクが自動小銃を構え、行内へ入る。
札束を手ぎわよくケースにつめ込むポール。
一瞬、出納係が隙を見て床の赤いボタンめがけて札束を投げつけた。
けたたましく非常ベルがなり、三人の注意がそがれた隙に出納係はピストルを取りだすとマルクを狙い撃った。
マルクの自動小銃が火を吹き、出納係は倒れたが彼の腕から血がしたたり落ちていた。現金奪取に成功した四人はパリへ戻ったが、負傷したマルクは病院へかつぎこまれた。
その夜、現金はひとまず空地に埋められた。
その頃コールマンは警察のいぬであるギャビーから、ある組織が税関とグルになって、麻薬をリスボン特急で運ぶという情報をキャッチした。
夕刊の第一面はトップで銀行襲撃事件を報じていた。
シモンがその夕刊を手に、彼の経営するナイト・クラブに姿を見せたのは、夕方だった。
人気のないホールでコールマンが弾くピアノを、片隅で静かに聞き入るブロンドの美女がいた。カティ(カトリーヌ・ドヌーブ)といい、シモンの情婦である。マルクをいつまでも病院におくのは危険だった。
フランス2大俳優の絵になるツーショットだが・・・。
警察は病院から病院へと、しらみつぶしに捜査を続けている。
シモン、ポール、ルイの三人は看護人に変装して、マルクを病院から連れだそうとしたが、うまくいかず、非常手段として看護婦になりすましたカティが昏睡状態のマルクを注射で絶命させた。
麻薬の横取りにはヘリコプター作戦が用いられた。
ヘリ作戦は見事に功を奏した。パリでは死亡したマルクの身元から犯人を割りだしたコールマンは、仕事を終えてパリに戻っていたルイを逮捕した。
再びナイト・クラブで再会したコールマンとシモン。
しかし、二人はお互いの心中を察したかのように多くは語らなかった。
クラブをでたコールマンはポールのアパルトマンに向かった。
もはや、高飛びする時間はなかった。ポールは観念したようにピストルをこめかみに当てた。残るはシモン一人。翌朝、エトワール広場の前のホテルの入口に立つシモンを乗せるために、カティの運転する車が近づいてきた。
シモンが歩みだした瞬間、コールマンの声が沈黙を引き裂いた。「動くなシモン!」スーツケースを下したシモンは、微笑をたたえてコールマンに近づき、手をふところにすべらした。
次の瞬間、コールマンのピストルが火を吹き、シモンの体が折れるようにくずれた。呆然と立ちすくむカティ。シモンは拳銃を持っていなかった。「死ぬ気だったのか・・・」
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映画の原題Un flicが刑事(デカ)というタイトルだが、イタリア映画の「刑事」などほかにも似たようなタイトルが多いので、麻薬運びにたまたまリスボン特急が使われていることからタイトルになったようで、ストーリーとはあまり関係はしていない。
この作品で、メルヴィル監督は、すでに「サムライ」「仁義」でコンビを組んできたドロンに対して、刑事役、犯罪者役(シモン)のどちらを選んでもよいとドロンに伝えたという。ドロンは脚本を読み、犯罪者役はこれまで何度も演じてきたので、あえて刑事役を希望したといわれる。刑事像も、たんなる正義感の強い善人ではなく、ドロン流に我の強い刑事像を打ち出しているというところはあった。
映画はフイルム・ノワールとして期待されたが、後年ドロンは「この映画は中途半端で失敗だった」と語っていたというが「サムライ」「仁義」と比べると雰囲気がやや違っていた。
この映画はメルヴィル監督の遺作となった。
★★ (ドロン映画としては、やや物足りなさがあり)
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