「ハクソ―・リッジ」(原題:Hacksaw Ridge、2016)を見た。MOVIXさいたま(8:45)。
「ハクソー・リッジ」というのは、沖縄戦において、浦添城址の南東にある「前田高地」と呼ばれた日本軍陣地。北側が急峻な崖地となっており、日米両軍の激戦地となったことから、米軍がこの崖につけた呼称(Hacksaw=弓鋸)のことである。
監督は、メル・ギブソン。沖縄の激戦地“ハクソー・リッジ”でドスが取った勇気ある行動が臨場感あふれる戦闘シーンとともに描かれる。戦争映画としては「シンドラーのリスト」+「プライベート・ライアン」+「フルメタル・ジャケット」を足して3で割ったような人間ドラマである。
戦闘・銃撃のシーンがあまりにも生々しく(人間が火だるまになり、手足、首が飛ぶなど)、リアルであることから、あらかじめ一定の覚悟をもって見る必要がありそうだ。
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ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)の父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第1次世界大戦出征時に心に傷を負い、酒におぼれて母バーサ(レイチェル・グリフィス)との喧嘩が絶えなかった。
そんな両親を見て育ち「汝、殺すことなかれ」との教えを大切にしてきたデズモンドは、第2次大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると、父の反対や恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)の涙を押し切り陸軍に志願する。
コンパクトな聖書を片時も離さないデズモンド・ドス
生涯武器には触らないと固く心に誓っている彼は、上官や仲間の兵士たちから責められても頑なに銃をとらなかった。ついに命令拒否として軍法会議にかけられても貫き通した彼の主張は、思わぬ助け舟により認められる。
そこは150mの断崖がそびえ立つ激戦地だった。
倒れていく兵士たちに応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中をひるむことなく走り抜けるデズモンドの姿に、感嘆の目が向けられるようになる。しかし丸腰の彼に、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた(MovieWalker)。
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(これから見る人はさらっと。)
銃器を持たずとも、衛生兵として役立ちたいと入隊を志願するデズモンドに対して、上官のグローヴァー大尉は「戦争は人を殺すことだ」と告げ、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。
まわりの兵士からも”臆病者”と暴力によるいじめを受けるが、天下分け目のハクソー・リッジで、仲間たちが次々に命を落としていくなかで、「もうひとり、あとひとり・・・」と負傷した兵士を太い縄で巻き付け、百数十メートルの断崖絶壁をひとりひとり下におろして救助していく。
グローヴァー大尉は、「これまでの人生で、一番大きな誤解をしていた」と「良心的兵役拒否者」デズモンド・ドスの勇気ある行動を称えるところが感動を呼ぶ。また最後には、デズモンド・ドスによって救われ、現在も生きている元兵士たちの証言が登場する。
デズモンド・ドスの父親は、出征に反対したが、自身も第一次大戦に参戦していたことから、軍法会議にかけられた息子のために「良心的兵役拒否者」は、法にも明記されていることを示し、その正当性を訴えたことで、軍法会議を免れる。言葉は交わさないが、親子・家族関係なども描いている。
武器を持たずに戦争に行くというのは、無駄死にをするに等しい。
しかし、数十人を救ったあと、ハクソ―・リッジに再度挑むときには、司令官の「急げ」という命令にも「10分待ってください」と現場の指揮官は返答するのだ。それは、デズモンド・ドスが祈りをささげる時間を待つためだった。
鬼軍曹の兵隊の訓練は、かの「フルメタルジャケット」も彷彿とさせる激しさがある。
これまでの戦争映画の戦闘シーンではもっとも激しいものであり、戦争映画を根本的に変えるほどのインパクトがあった。出演者では「アバター」「タイタンの戦い」などのサム・ワーシントンが味わいある演技を見せている。
アンドリュー・ガーフィールドは、2007年の「大いなる陰謀」で映画デビューを果たすが、注目を集めたのは「ソーシャル・ネットワーク」(2010)。その後「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ(2012、2014)「沈黙」(2016)と話題作に出演。現在33歳、ハリウッドの注目俳優の一人となっている。首が”キリン”のように長いのと、独特の(高めの)声に特徴がある。
時代は1945年の終戦直前の5月の沖縄戦を描いており、アメリカの視点で描かれ、日本兵が登場するがセリフはほとんどなし。日本軍の責任者の切腹シーンは思わず目を背けたくなるほど。日米戦争の陰にあった史実を知るという意味では、見ごたえがあった。
蛇足:兵士の中に、その信念からか全裸の兵士が登場。まるでアキラ100%だった(笑)。
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