それでサスペンス映画は手馴れてるわけだ。
アンリ・ヴェルヌイユといえば「地下室のメロディー」「シシリアン」などのフイルム・ノワールといわれるギャング映画の代表作がある。ジャック・ドゥミは、「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」などの作品で知られる。
こんな大監督のもとで修業を重ね、1965年にセバスチアン・ジャプリゾの小説「寝台車の殺人者」を原作にした長篇劇映画「七人目に賭ける男」で、監督としてデビューした 。
政治的な題材をサスペンス・タッチに描く作風が特色。「Z」では架空の国(実際はギリシャ)で起こった革新系政治家、Z氏(イブ・モンタン)の暗殺事件をサスペンスタッチで描いた。ストーリーの面白さ、俳優、ミキス・テオドラキスの音楽、サスペンス、どれをとっても一級品。
軍部の圧力に屈せずに、暗殺にかかわった軍部の指導者を告訴する予審判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)や、記者(ジャック・ぺラン:製作も兼務)などの活躍を描く。舞台がギリシャであることは一目瞭然。そのためギリシャではこの映画は上映中止となった。
1969年監督作品「Z」はアカデミー賞外国語映画賞、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞、一躍その名をとどろかせた。予審判事として出演したジャン=ルイ・トランティニャン(写真)はカンヌ映画祭主演男優賞を受賞。
1970年には「告白」で、1950年前半のチェコの〈暗黒時代〉に実際に起きたスランスキー事件(血の粛清)をあばき、人間の自由と尊厳を蹂躙するものを鋭く告発した。「Z」の映画的な面白さ、エンタメ性は薄くなり、重苦しい映画となった。
1998年、永年の業績に対し第5回ルネ・クレー賞を受賞した。
「Z」=☆☆☆☆☆ (☆5個は、これまでに合計4本)
「告白」=☆☆☆
「戒厳令」=★★