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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

”隠れた名作” 映画「Z」(1969)を再見。10回目くらいか?

  「Z」
 
大傑作映画「Z」(1969)の内容は省くが、1960年代に一世を風靡したIBMタイプライターが登場するシーンが、とにかくかっこいい。あの音。
 
2年前にも同じような記事を書いている(進歩がない?)
 
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197X年に社会人になったころ、会社で最初に習らわされたのが英文タイプライターだった。部署は英文雑誌の編集セクションを要する国際本部という部署だったが、3,4年先輩の社員の英文タイプ打ちの早いこと。当時は、禁煙が強く言われておらず、社内では、煙もくもくの、今思えば思いっきり”受動喫煙”の被害をこうむっていたことになる。
 
ミーティングなどでも、タバコを吸っている人が多く、fpdなど吸わないのは少数派だった。タイプライターはまだ手動式で、行変えなども、左のハンドルを行を替えるたびに、がしゃがしゃと右に押すものだった。確かオリベッティ製だったかと思う。
 
            初めてのタイプライターはこんな製品。 
 

丸形の回転式フォントを使ったIBM電動タイプライターを使うようになった時は、感動した。タイプ打ちも滑らかで、音も静かになった。
 
映画「Z」で登場したIBM電動式タイプライターのフォントは「Elite 72」という品名が見えた。同系のタイプライターの動画があったので紹介する。
 
 IBMタイプライター
 

「Z」に話を戻すと、最初に二十歳前くらいにこの映画を初めて見た時はあまり気にも留めていなかったが、あとから気づかされたことが多い。その一つが、主人公の革新系政治家(Z氏、イヴ・モンタン)の不倫相手の存在。
 
妻(イレーネ・パパス)がいるが、若い愛人がいるシーンがさりげなく描かれている。Z氏が事故か殺人目的か、何者かに襲われ怪我をして病院に搬送された時の妻のうろたえようは、セリフもなく、動きだけで延々と映し出される。ギリシャの名女優と歌われたイレーネ・パパスの演技力か。
 
この映画は、地中海に面した架空の国をモデルとしているが、ギリシャであることは明白。アジアの核開発を進める某国と同様、軍事政権が国を支配していた。ギリシャでは、当時、この映画は上映中止。軍部は、民主主義や共産主義を唱えるグループは、集会の自由も与えていなかった。集会があるという情報があると、王党派行動隊(CROC)というメンバー(許認可などで便宜を図る代わりに、反政府グループを弾圧する組織構成員)を動員するのだ。
 
民主主義を唱えて、集会に参加した息子を持つ母親は、息子が暴力を受けて帰宅すると、いろいろ聞かれても「オレンジの皮ですべった(バナナでないところが面白い)というんだよ」といい含める始末。また、弟が(警察から暴力を受けたという)証人として出廷するという弟に対して、その姉(ガリ・ノエル)は、「ロバのように頑固で判らずや」とののしり、止めさせようとする。姉自身が、ダンナとともに極右団体に所属していた。
 
映画で重要な役目を果たす日本の軽自動車(かつてのダイハツ・ミゼットのような車)は、”KAMIKAZE"と呼ばれていた。新聞記者(ジャック・ぺラン)が使うカメラは、
CANON製だった。
 

改革派に暴力を振るうチンピラ2人を演じるのが「若者のすべて」でアラン・ドロンの兄を演じたレナート・サルバトーリ(写真左)と、のちに「フレンチ・コネクション」で悪党を演じて、地下鉄を乗っ取り、ポパイことドイル刑事(ジーン・ハックマン)に階段で背中を撃たれて死ぬマルセル・ボズフィ(右)だ。「Z」では、マルセル・ボズフィが、ある性癖の持ち主であることも描かれている。
 
映画で惜しむらくは、「こん棒」が、棒ではなく、ゴム製の棒のようで、殴るときも簡単に折れ曲がってしまい、インチキ棒であることがわかり、リアルさに欠けた。また、殴り合いのシーンでも、相手との距離感がみえみえで”空振り”ばかりで、編集などで工夫もなく、真実味がないのが残念。
 
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1963年に王制下のギリシャで起きた自由主義者グリゴリス・ランブラキス暗殺事件をモデルとしたヴァシリス・ヴァシリコスによる同名の小説(1966年刊行)を、コスタ=ガヴラス監督が映画化したもの。ガヴラス監督の政治3部作(「Z」「告白」「戒厳令」)の最初の作品。3部作では「Z」が娯楽映画としてぴか一。
 
  
名優、名わき役が多く出演している。
主演のイヴ・モンタン(「恐怖の報酬」「仁義」)、ジャンルイ・トランティニャン(「男と女」「流れ者」)のほか、ジャック・ぺラン(「鞄を持った女」「ニューシネマ・パラダイス」)、フランソワ・ペリエ(「居酒屋」「仁義」「サムライ」)、ベルナール・フレッソン、(「さらば友よ」)、シャルル・デンネ(デネール表記も)(「冒険また冒険」)、マガリ・ノエル(「甘い生活」「フェニーニのアマルコルド」)、イレーネ・パパス(「エレクトラ」「その男ゾルバ」)ほか。
 

シャルル・デネール    マガリ・ノエル
                                                                          
Z」を見ている人は少ないので、予告編だけでも。
 
  公開40周年「Z」予告編。

隠れた名作というのはこういう映画か。
第22回カンヌ国際映画祭審査員賞男優賞ジャン・ルイ・トランティニャン:写真) 第4回全米映画批評家協会賞 :最優秀作品賞 第35回ニューヨーク映画批評家協会賞 :作品賞 第27回ゴールデングローブ賞外国語映画賞
 
                    
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