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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「それでも夜は明ける」(2013)</span>


 
 
きょう朝一番(8:55~)の回に、最寄りの松竹系シネコン「MOVIXさいたま」で、それでも夜は明ける」(原題: 12 YEARS A SLAVE)を見た。
 
ひと言でいえば、過酷で壮絶な映画だった。
言葉でいえば、軽くなってしまうが「残酷・非道」な、南北戦争前のアメリカ南部の奴隷制度を描いている。
 
1841年当時、アメリカ南部では黒人は人間扱いされず白人の奴隷。
黒人を「商品」「家畜」扱いにする白人の農場主と、壮絶な奴隷生活を耐え忍び、北部では黒人も自由が認められる”自由黒人”の証明書により、奇跡的に助かった黒人・ソロモン・ノーサップ(映画も本人名で登場)の実話をベースにしている感動作品だ。
 
米国における人種差別(特に黒人に対する)は、1960年代になってもまだ根強く残っていて、さまざまな映画でも取り上げられていたことは記憶に新しい。
 
・・・
それでも夜は明ける」は、今年のアカデミー賞で「作品賞」「助演女優賞ルピタ・ニョンゴ)」「脚色賞」の3部門を受賞した。前哨戦の「ゴールデン・グローブ賞」で作品賞を受賞していたので、予想通りの作品賞と受け止められた。
 
アメリカ南部の奴隷制度を描いていることで、娯楽性を排し、見ていても相当に痛々しくシリアスなドラマとなっているので、アカデミー賞受賞で作品の格は上がったが、日本で興行的に広く受け入れられるかどうか(公開は3月7日~)。
 
同じ黒人の奴隷解放を描いた「リンカーン」(アカデミー賞2部門受賞)は、昨年4月に公開されたが、興収は、10億円強にとどまった。
 
 

 
19世紀半ば(1841年)の米国南部での黒人は、白人にとっては売買対象の「商品」であり綿花を栽培する道具であり「家畜」扱いだったというのが驚きだ・・・オープニングで、「この映画は事実に基づく」と表記がある。綿花の採集の量が平均を下回ると、ムチうちが、100回、150回と体に加えられる。
 
奴隷制度の時代にあっても、ニューヨークなどのアメリカ北部では「自由黒人」の証明があれば、一般の白人アメリカ人と同等に自由に生活ができたのだが、この作品の原作者である黒人のソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、自由黒人であったが、白人に騙されて拉致され、妻と子供二人と離れ離れになり、奴隷として南部に売られて、綿花農園などで12年間もの壮絶な奴隷生活をおくることになる。
 
主人公が体験した壮絶な奴隷生活の実情、不屈の精神で絶望に打ち勝ち、希望を持ち続けたことによって、奴隷から解放される姿を描き出す。
 
監督は「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックィーン(どうも、有名なアクション俳優と同じ名前でまぎらわしい)。

 

 
ストーリー: 
南北戦争以前の1841年にソロモンは、自由の身でニューヨークに生まれた。自由の身で博識もある音楽家のソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)が、ある日誘拐によって奴隷制度が根強く残る南部ルイジアナに売り飛ばされてしまう。身分を示すものを携帯していなかったため、黒人=奴隷として扱われ、名前も別名を与えられる。

そして彼は自由の身から奴隷へと落ち、そこで12年もの苦節を味わうことになる。彼は基本的に綿花農園の奴隷であり、その12年間が苦しく痛々しく描かれていくが、そこに宿るのは生きる希望、もう一度自由の身に戻りたいという希望だった。

黒人奴隷制度の残虐さをこれでもかと見せつける。
農園の支配人エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダーの残酷さに加えて、その妻メアリー・エップス (サラ・ポールソン)も負けず劣らず非人道的人間だった。
 
支配人の命令に誠心誠意つかえて、綿花の成果も随一というパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)は、エドウィンの性の道具にされ、メアリーからは目の敵にされ、”石鹸”を手に入れるために農園邸に出入りしたことを咎められ、激しいムチうちを受けることになった。
 
パッツィーは衣類をはぎ取られ、裸にされて、樹に抱き着かせられ、支配人はむち打ちを同じ奴隷のノーサップに押し付けた。ノーサップは、自分が生きるためにも、仕方なくムチでパッツィーの背中を繰り返し叩く。
 
これを見ていたメアリーが「手加減している」といい、代わってエドウィンがパッツィーの背中に、さらに深い傷跡が数十とできるほどに激しくムチを打ち付けるのだった。このあたりの描写は、見ている側も痛くなるほどの残酷さだ。
 
・・・
農園の別棟を建築する大工としてサミュエル・バス(ブラッド・ピット)がかかわっていた。サミュエルは、黒人差別の実態を目の当たりにして、農園支配人エドウィンに「奴隷も人間であり、本来平等だ」と進言するが、エドウィン聞く耳を持たない。
 
サミュエルの「平等」という言葉にノーサップは心を動かされ、サミュエルに、自由黒人の証明書を取り寄せるよう懇願した。そして、その結果・・・。
 
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肉体的、精神的な苦痛をこれでもかと黒人に繰り返す南部の白人の異常さ。
 
手を縛られ、樹から、西部劇の縛り首のようにつるされて何日も・・・。
(昨日のテレビドラマでは、キムタク=武蔵がやはり、手足を縛られて樹につるされていたが・・・途中まで20分見て中止したが)
 

 
キウェテル・イジョフォーという俳優は「2012」を見ているが、記憶にない。この「それでも夜は明ける」では、苦悩する表情や思索する表情などのアップが何回も出てくるがその演技が印象に残る。映画全体を、重厚にしているようだ。
 
死に直面するような過酷な奴隷という環境と人間環境の中で、希望を失わなかった男を見事に演じきっている。
 
ルピタ・ニョンゴは、新人女優のようだが、この映画では大抜擢で、いきなりアカデミー賞助演女優賞を獲得してしまった。鬼気迫るような演技と体当たりの取り組みが高い評価を得たようだ。
 
いわゆる骨太映画であり、気合いを入れてみる必要があるかもしれない。ラストは、希望と救いがあったので、後味は悪くはなかったが、全体的に重苦しい映画であることには変わりはない。
 
好みに関わらず、見ておくべき映画の1本かもしれない。
 
挿入される音楽はなかなかいい。
 
☆☆☆
 
 
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