「この茫漠たる荒野で」(原題:News of the World,2020)を見る。監督は「ボーン」シリーズのポール・グリーングラス、主演はトム・ハンクス。Netflixオリジナル映画。
150年前のアメリカが舞台の、カウボーイもガンマンも出てこない異色の西部劇。ニュース(Story)を読み伝えることを仕事としている元軍人と、ネイティブアメリカンに育てられた10歳の少女との交流が描かれるが、その背景には南北戦争後のアメリカの分断が設定されている。現在のアメリカの分断と重なる。
原題は「世界のニュース」で、主人公の大尉が各地を回って、1人10セントで“新聞の読み聞かせ”をするというもの。
先ごろ発表されたアカデミー賞のノミネートでは「撮影賞」「音響賞」「作曲賞」「美術賞」にノミネートされている。
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舞台は1870年、南北戦争終結から5年、2つに別れたアメリカを統一、再建しようとするなかで、多くの難問を抱えた時代のテキサス。南軍の軍人だったジェファソン・K・キッド大尉(トム・ハンクス)は、退役後も故郷に戻らず、村から村を回って、人々に新聞を読み聞かせることで生計を立てていた。
ある日、何者かに襲われた荷馬車に遭遇する。持ち主の黒人はリンチにあって吊され、そばに10歳ほどの少女が隠れていた。
荷馬車に残されていたインディアン管理局の書類から、少女はジョハンナ・リオンバーガー(ヘレナ・ゼンゲル)といい、6年前に家族が殺され、カイオワ族に育てられていたところを助け出されたことが分かる。
通りかかった騎兵隊の隊長から少女を託された大尉は、いったんは指揮所まで連れていくが、結局はジョハンナを伯母夫婦のいる入植地まで連れていくことを決意する。そこは、かつて彼が妻と幸せに暮らしていた町の近くだった・・・。
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主人公は、全国紙を数種類持ち歩き、行く先々で、”世界の情勢”や関心事について記事から紹介している。戦争で打ちひしがれた南部の人々により広い視野を提供しようとするものだった。
ネイティブアメリカンの言葉しか話さないジョハンナと、少しずつ身振り手振りでコミュニケーションを取り、大尉は、道中でジョハンナを狙う悪漢たちや行く手を遮る厳しい自然に立ち向かいながら、テキサスの荒野を北から南へ縦断していくのだった。
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ポール・グリーングラス監督は、マット・デイモンが主演する「ボーン」シリーズの監督として知られるが(「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」「ジェイソン・ボーン」を監督)、もともとはイギリスでジャーナリストとしてキャリアをスタート。