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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「東京家族」(2012)。 小津安二郎「東京物語」リメイク。


映画「東京家族」予告編
 
東京家族」は、山田洋二監督が、小津安二郎監督に捧げる…として小津監督の名作「東京物語」をモチーフにした家族の物語を丁寧に描いている。今年1月に劇場公開されたが、今年を代表する1本になることは間違いない。
 

 
山田洋二監督のファミリー・ドラマで、淡々としたストーリーの中にも、じわじわと迫る感動がある。2時間25分の長さも感じさせなかった。1時間ほどして画面に登場する蒼井優は、山田監督の「おとうと」に次いで出演しているが、久しぶりに蒼井優らしい、しっかり者の現代的な女性のイメージで、好演している。
 

 
この映画では、夏川結衣がオープニングから登場し、2人の息子を持つ母親として、家事を仕切っている姿などが、自然体ですばらしい。「孤高のメス」など、ややきつい目つきの?(笑)役が多かったので、夏川ファンとしては、控えめな役柄でも存在感があってよかった。
 
瀬戸内の小島から上京し、自分の子どもたちと久々の対面を果たした老夫婦の姿を通して、現代日本における家族の在り方や絆などを見つめていく。
 
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東京物語」は、家族といっても、老夫婦の息子・娘たちのそれぞれの立場で、両親の訪問を受けて、和気あいあいというよりもやや疎ましさが感じられる微妙な空気感があったが、「東京家族」では、「忙しいのに年寄り夫婦が長居して迷惑だ」といった雰囲気は、やや薄らいでいた印象だ。
 
もっとも、長女の滋子(中嶋朋子)などは、美容院を経営しているので、2-3日でもホテル住まいさせておけばいいと無理やりホテルに泊まらせたり、母親が亡くなった葬式の席で、母の形見の着物がほしいなどと、わがままな発言もしているが・・・。
 
家族というのは、近いようで、立場によって、いろいろと複雑であることも確か。遺産相続などで、兄弟の骨肉の争いというのはよく聞くが、先日もあるセミナーで、葬式の場で取っ組み合いの兄弟のけんかもあったという話も聞いた(笑)。
 
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2012年5月、瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)は、子供たちに会うために東京へやってきた。
 
郊外で開業医を営む長男の幸一(西村雅彦)の家に、美容院を経営する長女の滋子(中嶋朋子)、舞台美術の仕事をしている次男の昌次(妻夫木聡)も集まり、家族は久しぶりに顔を合わせる。
 
最初は互いを思いやるが、のんびりした生活を送ってきた両親と、都会で生きる子供たちとでは生活のリズムが違いすぎて、少しずつ溝ができていく。そんななか周吉は同郷の友人を訪ね、断っていた酒を飲み過ぎて周囲に迷惑をかけてしまう。
 
一方、とみこは将来が心配な昌次のアパートを訪ね、結婚を約束した紀子(蒼井優)を紹介される。翌朝、とみこは上機嫌で幸一の家に戻って来るが、突然倒れてしまう・・・。
 
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次男の昌次(妻夫木聡)は、両親から見たら将来も考えず不安定な仕事をしているように見えたが、案外しっかりしていること、その昌次のところに掃除もかねて訪ねた母(吉行和子)は、昌次が将来を約束した恋人・紀子(蒼井優)を紹介され、安心できたエピソードなど味わい深い。
 
頑固一徹に見えた父親(橋爪功)に対して、紀子が何を語りかけても無視されていると思っていたのだが、父親は、妻・とみこが昌次を訪問した翌日、「東京に来てよかった」と喜んでいたのは、紀子の存在があったからだと理解していていたのだった。「紀子さんは、すばらしい。昌次をよろしく」といわれた紀子は、誤解が解けて号泣するシーンもいい。
 
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周吉(橋爪功)は、一人になって、瀬戸内海の小島に戻るが、子供たちに向かって、「東京には二度と行かない」と宣言する。子供たちの世話にはなりたくないというものだが、食事や洗濯などは島の近所の知り合いが面倒を見てくれるというのである。
東京の水は合わない、ということもあるだろうが、親子といっても複雑で、自分でなんとかできるというプライドもあったのだろう。
 
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映画ファンを、にんまりとさせるシーンもある。
 
自分の息子・娘が手配してくれたホテル(横浜のランドマークタワー近く?)の部屋から、観覧車が見える。
 
この観覧車は、fpdも実際に乗ったことがあるが、観覧車を見て、周吉(橋爪功)が、つぶやく。
 
「”第三の男”の映画の観覧車で、有名なセリフがあるんだよな。オーソン・ウエルズがしゃべっていたんだ」と妻のとみこにいうシーンだ。脚本では、観覧車が見えるので、有名な観覧車のエピソードを加えたのだろう。
 
ちなみに、観覧車のオーソン・ウエルズのセリフは、即興といわれているが以下のようなものだった。
 
「だれかがこんなこと言ってた。イタリアではボルジア家の30年間の圧政下は戦火・恐怖・殺人・流血の時代だったが、ミケランジェロレオナルド・ダ・ヴィンチ、偉大なルネサンスを生んだ。スイスはどうだ? 麗しい友愛精神の下、500年にわたる民主主義と平和が産み出したものは何だと思う? 鳩時計だとさ!」
 
これは、悪に染まっていたハリー・ライム(オーソン・ウエルズ)の”悪の論理”で、痛烈な皮肉だった。
 
ほかに、風吹ジュンなど出演。
 
 
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