映画「ガール」予告編
「ガール(GIRL)」(2012)の公開初日のきょう、昼の回に見てきた。
笑いと涙ありのおしゃれなコメディかと思ったら、前半は日々4人のガール(女子)たちが苦闘する姿が描かれるシリアスなドラマで、登場する「ガール」たち(アラサーからアラフォー世代)が、それぞれ現実社会の壁や悩みにぶち当たりながらも、後半は、明るい方向に転換していくまでを描いた、女子応援映画だった。
とくに、共感できるセリフもいくつか登場する。
たとえば、(人生はバラ色ではなく)「女性の人生は、半分はピンクだが半分はブルー(憂鬱)」。たとえば、「男の人生は足し算だが、女性の人生は引き算」。
一見それぞれ自立して、人生を謳歌しているかに見えるが、実のところは、女は生きづらいと「女はつらいよ」をそれぞれ体験している。そんな中で、4人が自分らしさを見つけて、ハッピーになっていく。「100回生まれ変わっても、私は100回とも、女がいい」というのがテーマだけあって、女性には受けそうだ。
タイトルは「ガール」だが、もうそろそろガールと言うには”痛い”と感じる年代の女子仲間4人組のそれぞれの頑張りようを描く。
映画は、大手広告代理店に勤める滝川由紀子(香里奈)のナレーションで始まる。
由紀子は、29歳独身。友達仲間に聖子・容子・孝子がいる。「女の子はいくつになってもお姫様」と“夢や霞”を信じて生きてきたが、聖子達からファッションが年相応でないと指摘され“ガール”としての潮時を考え始める。恋愛でも、大学時代の友人・森本蒼太(向井理)と付き合い始めたが、ムードゼロな彼にトキメけず、仕事では、会社の先輩・38歳のガール?光山晴美(檀れい)と念願の女子イベントを企画する。
ところが、クライアントの、おしゃれと“女子”という言葉が大嫌いな堅物女・安西博子(加藤ローサ)と猛対立。夢にまで見た蒼太の初プロポーズも最悪。焦燥感を募らせる。この先どうしよう・・・。この型物と見られた博子が、あるきっかけでアッと驚く大変身を遂げるのだから、女子は分からない(笑)。
友人の聖子(麻生久美子)は、大手不動産会社勤務。34歳夫あり、子供なし。女性管理職に抜擢されるが、部下の今井(要潤)は自分より年上の男性。気を遣いながら、良い関係を築こうとするが一向に自分を受け入れようとせず、後輩女子社員(波瑠)もアシスタントとしてしか扱わない今井。
今井は、「女に何ができるか」という女性軽視に凝り固まっていて、プロジェクトも独断専行で決めて、クライアントとの最終会議に、便宜上課長職の聖子に出席させ、すべて自分の企画で、事を済ませようとするのだが、聖子は黙っていることはできず、ひそかに進めていた案を発表する。
そして、ついには今井に対して、聖子は、ある決断を持って臨む。そのシーンだけでも、麻生久美子の存在感が表れていて、それまでのうっ憤を一気に晴らすところが痛快。この映画の主役は、一応香里奈だが、麻生が主役と言ってもいい。
一方、家庭にあっては、夫の博樹(上地雄輔)は、仕事中心の聖子には何も言わず、黙って現状を受け入れている様子。聖子は、本当は不満があるのではないかと夫に本音を問う。「妻である自分が給料が上であること。子供がほしいのではないか。」など。夫・博樹から返ってきた答えは、どちらも不満はない。
ただ、たった一つだけいわせてもらえば、いつも○○○○○○○○、と一言。そうだったのか、とそれに気付き、泣いて抱きつく妻。
小坂容子(吉瀬美智子)は、会社に新人・和田慎太郎(林遣都)が入ってきて、社内の独身女子たちの熱い視線を集めるが、とりあえず自分の下につくことになり、年齢も10歳以上も離れているし、と距離を置こうとするのだが、慎太郎のことが頭から離れない。
いつしか、慎太郎も、うすうす感じたのか、仕事が終わったころ容子に、食事していきませんかと誘ってみる。それを聞いて、ただちに容子がとった行動が、にやりとさせられる抱腹絶倒の見せ場となる(笑)。
平井孝子(板谷由夏)は、自動車メーカー勤務。6歳の息子を持つシングルマザー。離婚を経て、3年ぶりに営業職に復帰。仕事においてシングルマザーを言い訳にしたくないのに、周囲からは気を遣われてしまう。
孝子(板谷由夏)の息子が母親に「がんばらないで」というのが切ない。
父親代わりに息子に教えようと、鉄棒やキャッチボールを仕事の合間に必死で練習、午後8時のシッターとの約束の時間を守るべく毎晩息も切れ切れに帰宅、息子はそんな母親の姿に違和感を感じている様子。
久しぶりの女子会でも、容子達に「もっと人に頼るべき」と忠告され、自分の頑張りがどんどん空回りして行くようで虚しさを感じずにはいられない…。シングルマザーって社会的弱者なのかと疑問を投げる。
それぞれ仕事や人生に悩みを抱えながら、迷いながらも、懸命に自分と向き合い人生を謳歌しようと奮闘。女性なら誰もが共感できるガールズ・ムービーということだろう。
女性にとっては、ファッションも関心を呼ぶ「プラダを着た悪魔」+「セックス・アンド・ザ・シティ」÷2といった映画だが、30代、40代の典型的な女性のタイプを登場させることで「自分に当てはまる」と思わせ、支持を集めそうだ。
最近記事にした「吉瀬美智子」「壇れい」が、偶然にも、ともにこの映画に出演していた。
蛇足だが、昔は「男には外に七人(=多く)の敵がいる」といわれ、ビジネスで厳しさを経験するということわざがあった。また「男はつらいよ」という映画も長らく続いた。
しかし、女性も社会で働く機会が増え、「ガール」のように、女性の既婚者も独身者も、子供ありもなしも関係なく、「女もつらいよ」 なのだということが理解できる。
原作:奥田英朗
☆☆☆
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