女優陣が豪華キャストであるという以外はまったく予備知識なしで観たが、これが予想以上の感動作品で、余韻を残す素晴らしい映画だった。誰にでもやがて訪れる人生のたそがれ時と死。いろいろあっても、人生の最後に、幸せだった、満足な人生だった、といえる生涯を誰もが願うが、この映画のアンは、まさにその通りだったような気がする。
映画のオープニング・シーンは、海辺の豪華な邸宅と庭、湖のほとりで横たわる若い女性の姿。そして、年老いた婦人のアップ。これが、懐かしいイギリスの名女優、ヴァネッサ・レッドグレイブだった!
ヴァネッサといえば、「欲望」(1966年、原題:Blowup:写真現像の引き伸ばしのこと)で、魅力を振りまいていた。40年も経てば・・・。
グレン・クローズも、あの「危険な情事」とは打って変わって、落ち着いた雰囲気。
メリル・ストリープがクレジットに名を連ねていたが、映画の最後の20数分のところで登場。
回想シーンで、いやにメリルに似ている若い女性(メイミー・ガマー)が、アンの親友のライラという結婚式を控えた女性役で出ていると思ったらメリルの実の娘さんだそうだ。同じ役を、親子二代で演じているのが驚きだ。
重い病に倒れた老女アンは、2人の娘と夜勤の看護婦に見守られ、自宅のベッドで静かに人生の最期を迎えようとしていた。混濁する意識の中で、アンは娘たちが聞いたこともない「ハリス」という名を口走る。
二人の娘の現在は、まったく状況が異なる。
姉の方は、堅実タイプで、結婚して、夫と子供が二人おり、家族で平和に暮らしている。
一方の妹、ニナといえば、独身で、つき合っているボーイフレンドがいて、いまおなかに2か月の子がいることが判明したばかりで、生むべきかいなか、などこれからの人生に迷いを感じている。そうした状況で、母アンが口にした「ハリス」は、母のかつての恋人だったらしいが、どうしても詳しく知りたい気持ちになるが・・・。
この映画は、人生とは、幸せとは、などさまざまな問いかけを投げかけるが、死期を迎えつつあるアンが、ニナに語る言葉が印象的だ。「人生に過ちなんてないのよ」。
ニナは、母親アンの病気に駆け付けたライラ(メリル・ストリープ)に「ハリスという人はどういう人だったか?」と尋ねる。ライラは「ハリスは、私も、アンも好きだった人で、皆に好かれていた人だった」と。「母について知らないことも、いろいろあるが、アンは、あなたたち二人を生んで育てた、間違っていなかった。素晴らしい母親だ」とたんたんと語る。
ニナの迷いも吹っ切れて、子供を産むことに決め、子供の父となる相手も、喜んでともに前向きに人生を歩んでいくことになる。
メリル・ストリープとヴァネッサ・レッドグレイブの二大女優の共演だけでも、すごい。二人の年齢差は12歳くらい違うが、当代名女優が実力を示している。
アンの若い時を演じているクレア・デインズという女優は、映画の中で、歌も披露しているが、なかなかうまい。こちら: http://www.youtube.com/watch?v=CwDklR1LOL8
出演者:
ヴァネッサ・レッドグレイヴ:アン・ロード(現在のアン)
メリル・ストリープ:ライラ・ロス(現在のライラ)
バリー・ボストウィック:ウィッテンボーン氏
ナターシャ・リチャードソン:コンスタンス
トニ・コレット:ニナ
パトリック・ウィルソン:ハリス・アーデン
アイリーン・アトキンス:夜勤の看護婦
映画は、奥が深い感動作品だ。
(Gyao動画で、見られます)
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