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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「侍タイムスリッパ―」(安田淳一監督、2024)を見る。今年1・2の邦画の快作。

侍タイムスリッパ―」(2024)を見る(MOVIXさいたま)。監督は、本作で俄然注目されることになった安田淳一。安田監督としては「拳銃と目玉焼」「ごはん」に続く3作目の自主映画作品。

安田監督は、撮影、脚本、編集も手掛けた(実際には、車両、チラシ・パンフ制作など11役を一人で担当)。スタッフは計10人で、低予算のインディーズ映画の製作費は、わずか2400万円。製作は未来映画社。

手抜きが一切ない本物の時代劇の面白さを再認識させられるほどで、邦画では、今年一番の面白さと言ってもいいほどの映画。笑い、涙、感動、真剣さにあふれている。

幕末の京都で落雷を受けた現代の都撮影所にタイムスリップして、時代劇の斬られ役として第2の人生を歩もうとする姿をコメディタッチで描いている。

  江戸末期と現代の撮影所の時代劇の現場(上)をうまくマッチさせた。

「侍タイ(さむたい)」(タイトルの略称)は着想と脚本で低予算でも力作ができることを証明した。上映は8月17日に池袋シネマ・ロサにて一般公開し、評判と口コミなどから10月2日現在、153の劇場で上映中(もしくは上映を予定)。興収は10月1日時点で1億6571万3800円。

同様の自主映画「カメラを止めるな」(上田慎一郎監督、2018)は当時社会現象を起こし、31億円の大ヒットとなったが「侍タイ」は道のりははるかだが、それと同じ道をたどっているように見える。

主演は「雨あがる」「告白」「悪の教典」などの山口馬木也(まきや)。共演は「覇王 シリーズ」などの冨家(ふけ)ノリマサ、「ごはん」などの沙倉ゆうの、「せかいのおきく」の峰蘭太郎など。

・・・
【あらすじ】幕末を生きる会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は、ある夜、長州藩士・山形彦九郎(庄野崎謙)を討つ密命を受け、暗闇に身を潜めていた。

しかし刃を交える瞬間、雷が落ち、新左衛門は現代の時代劇撮影所にタイムスリップする。江戸幕府が滅んで140年もたっていることを知り愕然とする。

チラシ案内で黒船来航により幕府が終わりを告げたことを知る

 

タイムスリップした場所が京都太秦(うずまさ)撮影所内の時代劇を撮影している場所だった。切られ役の一人が病気で急遽、代役が必要になり、幕末の侍そのものの新左衛門がその役を引き受けることになる。

切られ役が評判となり、現代の世の中では切られ役しか生きるすべがないと思い、時代劇の大スターからの主演級の役の依頼を断ってしまうのだが…。

・・・
東映京都撮影所が脚本に大きな関心を寄せ、ロケ地などで全面協力した。時代劇はテレビでも放送がほとんどなくなりつつあり低迷。切られ役専門の役者などはそれだけで食べていくのは困難な時代。そんな中でも、幕末からタイムスリップした侍・高坂新左衛門は、切られ役のみに固執する。

新左衛門は、殺陣師・関本に弟子入りを許されるが、関本からは切られ役を続ける人間のだれもが一度はセリフがあり、主役級の役を欲しがるものだと説得される。

俳優の殺陣がすばらしく真剣を使ったチャンバラシーンの刀のぶつかる音のキーンという金属音のシーンや、互いに構えたままの形で長い静寂が続く緊張感は「椿三十郎」のラストのような文字通り、息が詰まるような”真剣勝負”が繰り広げられる。

セリフが一切ない場面での音楽だけによるチャンバラシーンの迫力には、思わず目頭が熱くなった。

江戸末期の侍が、現代のスイーツや白米のおにぎりを食べたらどう反応するか、侍に感情移入して、普段の当たり前の食事がおいしく感じるのである。

「日(ひ)の本(もと)の未来がこんなにも豊かになっていたとは…」と涙ぐむ侍に共感を覚える(笑)。

セリフや昔の侍のちぐはぐな可笑しさ。助監督が紛れ込んだ侍に「所属事務所はどこ?」「別の撮影と間違えている」…など。高坂新左衛門がバーでウイスキーをロックで一気に飲む。

あることに対して「きょうはその日ではない」というセリフが2回登場し、ニヤリとさせられ頭に残る。

また、タイムスリップする侍が高坂新左衛門一人ではなかったこと。そのあたりの描写と、ラストシーンも憎い終わり方となっている。

<主な登場人物>
山口馬木也:高坂新左衛門…会津藩士。現代にタイムスリップする侍。西経寺に寝泊まりすることになり、撮影の切られ役の合間に寺の庭掃除なども行う。

■冨家ノリマサ:風見恭一郎…時代劇の大スター。高坂よりも30年も前にタイムスリップしていた人物。長州藩の山形彦九郎である。
■沙倉ゆうの:山本優子…助監督。小さいころから時代劇に親しんできた。監督として映画を撮るのが目標。

■峰蘭太郎:関本…斬られ役の専門集団「剣心会」創始者。殺陣師。高坂新左衛門に刀の構えなど殺陣を教える。

■庄野崎謙:山形彦九郎…長州藩士。
■福田善晴:西経寺住職…山本優子助監督と懇意にしており、優子の頼みで切られ役の高坂新左衛門を寺に住まわせる。

紅萬子:住職の妻・節子…高坂新左衛門の食事などの世話をする。
井上肇:井上…京都撮影所・所長。
■安藤彰則:安藤…斬られ役俳優。
■田村ツトム:錦京太郎…テレビ時代劇の主演俳優。役名「世直し侍・心配無用ノ介」。

■多賀勝一:監督…劇中劇の監督。
■吹上タツヒロ:武者小路…「世直し侍・心配無用ノ介」主演の時代劇の監督。

■高寺裕司:村田左之助
■きらく尚賢:剣心会メンバー
■ムラサトシ:剣心会メンバー
■神原弘之:剣心会メンバー
■泉原豊:照明スタッフ…劇中映画撮影の照明を担当。
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ぴくちゃあさんの記事に「今年のベストワンと断言してもいい!」「これを見ずして、2024年の日本映画を語るなかれ!!!」とあり、同感です(笑)。

hati8823.hatenablog.com

日本アカデミー賞はムリ(大手映画会社作品が中心)でも「キネマ旬報ベストテン」上位は間違いなし。

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          勝手なことをやってもらったら困るよ。



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