「十三人の刺客」(工藤栄一監督、1963、東映)を見る。2010年公開の同名リメイク作品(三池崇史監督、東宝)は見ているがオリジナルは初見。2010年版で暴君・松平斉韶(なりつぐ)を演じていたのが稲垣吾郎でインパクトがあった。
物語はシンプル。時は弘化元年(1844年)。江戸幕府の注意が届かない暴君を密かに排除するため、老中が武者に暗殺を命じるという作戦の模様が大枠だ。
将軍の弟で明石藩主である暴君・松平斉韶を抹殺するべく、刺客が送られた。13人の暗殺隊は、宿場を出口のない迷路に作りかえ、数に勝る明石藩の武士たちを迎え撃つ。やがて宿場に到着した獲物と刺客たちの壮絶な死闘が始まった…。
「侍の一分(いちぶん)」のためだけに生き散っていった侍同士の面目をかけた戦いを描く。「集団抗争時代劇」路線を確立した作品とも言われる。終盤の殺陣シーンは見ごたえがある。
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(ストーリー概要)松平斉韶(なりつぐ)の命を狙う島田新左衛門。島田新左衛門から殿である松平斉韶の命を守る鬼頭半兵衛。どちらも用意周到に準備をし作戦を練る。
参勤交代中に松平斉韶を狙うことにした島田新左衛門は、川を渡る時をチャンスとし仲間とともにその時を待つ。
しかしその場が危険であると察知していた鬼頭半兵衛は、殿の乗るカゴを2つ用意し影武者作戦に出る。
しかも警備も厳重にした川を渡った鬼頭半兵衛に対して、島田新左衛門は手を出すことができなかった。島田新左衛門も鬼頭半兵衛の作戦を「さすが半兵衛」と評価していた。
一回しかないチャンスを物にすべく島田新左衛門を新たな作戦を立て、松平斉韶一行を待つ。松平斉韶の性格を熟知している島田新左衛門は巧みに斉韶を誘導し自分たちがいる宿場へ誘いこむのだった。
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弘化元年(1844年)、筆頭老中・土井大炊頭(どい おおいのかみ、丹波哲郎)邸の門前で、明石藩・江戸家老の間宮図書(高松錦之助)が切腹した。
間宮の遺体のそばには、第12代将軍・徳川家慶(いえよし)の異母弟である明石藩主・松平斉韶(まつだいら なりつぐ、菅貫太郎)の暴虐ぶりを訴えた直訴状が残されていた。
斉韶(なりつぐ)は気が向けば女を犯し、刀を振り回して人を殺す異常者。その血筋に加え、家慶(いえよし)は次の年に斉韶を老中に抜擢する意向を示していたことから、幕府としては表立って処罰ができなかった。
このため土井は苦慮の末、ひそかに斉韶を排除することを決意。自身が最も信頼する目付・島田新左衛門(片岡千恵蔵)に秘密暗殺部隊の結成を命じる。
暗殺の決行は幕府が関知しない凶行として処理されることが確実だった。しかも実行部隊になることは襲撃成功の是非を問わず、生還したとしてもただちに刑死することを意味した。
新左衛門は「これが最後のご奉公」と心に期し、斉韶暗殺のため、甥である島田新六郎(里見浩太郎)、徒目付(かちめつけ)組頭の倉永左平太、島田家食客の平山九十郎(西村晃)、平山の知人の浪人・佐原平蔵(水島道太郎)など12人を集める。
12人は参勤交代の行列を待ち構えて討つ計画を決める。斉韶はその残忍さから参勤交代で明石に帰国する際に尾張国を経由する東海道を通行できないことに決められていたため、信濃国・美濃国を経由する中山道を利用していた。
12人はまず江戸郊外の戸田の渡し場で行列を待ち受けるが、明石藩の参勤交代をつかさどる鬼頭半兵衛(内田良平)の計略により、通常より多人数、それも武士ばかりの行列が編成されていたため、身をひそめたまま襲撃を断念する。
12人は美濃国の落合宿を決戦の場所と定め、行列に先回りする。ここは道が狭く、斉韶一行に陣形を組ませずに少数対少数で迎え撃つことが期待できた。
地元の郷士・木賀小弥太(山城新伍)が協力を申し出て、刺客は13人となった。
一方、斉韶一行は、道中の尾張藩領内・木曽上松宿の入り口で、尾張藩陣屋名で「尾張中納言様御達しにより松平左兵衛督様御通行を禁ず」と書かれた立て札を目のあたりにする。
それにも構わず進むと、尾張藩士・牧野靭負(まきの ゆきえ、月形龍之介)が立ちふさがる。
牧野はかつて斉韶一行に本陣を提供した際、斉韶の気まぐれで息子を斬殺され、その妻も犯された末に自害していたため、恨みを晴らすために新左衛門に協力を申し出ていたのだった。
落合宿に罠があるとにらんでいた鬼頭半兵衛は、そこを避けるためにも伊那谷を経由する脇往還を行くことを進言する。
しかし、短気な斉韶はそのまま中山道を進むよう命じる。牧野の行為は刺客側の意向を汲んでのことであったが、彼はのちに責任を一身に負う形で切腹した。
斉韶一行は何度も道を変えた末、落合宿に向かわざるを得なくなる。
11月のある日の早朝、ついに斉韶たちと13人は対峙。壮絶な死闘の末、新左衛門は斉韶を倒し、鬼頭と向かい合う。
そこで新左衛門は刀を下げ、鬼頭に斬られるがままにした。新左衛門は「これでよい。わしは殿を斬らねば侍の一分が立たぬ。お主もわしを斬らねば侍の一分が立たぬだろう」とつぶやき、息絶えた。鬼頭も刺客の日置八十吉(春日俊二)に倒された。
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<出演者>
■島田新左衛門:片岡千恵蔵…目付・直参旗本。妻を早くに亡くしている。
■島田新六郎:里見浩太郎…新左衛門の甥。公職につけず、芸者・おえんのヒモとなって暮らしていた。三橋軍次郎と日置八十吉の誘いを一度断るが、新左衛門の「放蕩三昧で生きるより侍として死ぬほうが楽だ」との言葉で翻意する。
■鬼頭半兵衛:内田良平…明石藩江戸藩邸詰。斉韶の残忍さに嫌気がさすも、立場上斉韶を守り続ける。
■土井大炊頭利位:丹波哲郎…筆頭老中。新左衛門に斉韶暗殺を命じる。
■芸者おえん:丘さとみ…柳橋の芸者。新六郎と同居している。
■牧野靭負:月形龍之介…尾張藩領木曽上松陣屋詰。新左衛門たちに協力を申し出る。
■牧野妥女:河原崎長一郎…靭負の息子。陣屋内で斉韶が千世を手込めにしているところを見とがめ、逆上した斉韶に殺害される。
■牧野千世:三島ゆり子…妥女の妻。陣屋を手伝っている際に斉韶に襲われ、それを恥じて自害。
■三州屋徳兵衛:水野浩…落合宿総代。いち早く到着した新六郎から計画を聞き、協力を申し出る。
■加代:藤純子…徳兵衛の娘。
■平山九十郎:西村晃…浪人。新左衛門邸の食客。斉韶討伐後、浅川十太夫に斬殺される。
■倉永左平太:嵐寛寿郎…徒目付組頭。作戦の立案を担当。最後まで生き残る。
■佐原平蔵:水島道太郎…浪人。九十郎に誘われ、新左衛門たちに協力を申し出る。
■石塚利平:和崎俊也…倉永配下。
■樋口源内:加賀邦男…三橋配下の小人目付。
■小倉庄次郎:沢村精四郎…九十郎の剣術の弟子。新左衛門たちに協力を申し出る。
■三橋軍次郎:阿部九州男…小人目付組頭。日置とともに新六郎に協力を仰ぐ。
■木賀小弥太:山城新伍…木曽落合宿の郷士。新左衛門たちに協力を申し出る。
■浅川十太夫:原田甲子郎…明石藩江戸藩邸詰。同僚を殺した平山を仇と狙い、倒す。一行の中で唯一生き残る。
■日置八十吉:春日俊二…倉永配下の徒目付。三橋とともに新六郎に協力を仰ぐ。鬼頭を倒す。
■小泉頼母:明石潮…明石藩江戸藩邸詰。参勤交代には同行しない。
■間宮図書:高松錦之助…明石藩・江戸家老。直訴のため、土井大炊頭の自邸前で切腹。
■間宮岸乃:松浦築枝…間宮図書の妻。
■間宮織部:神木真寿雄…図書の息子。図書の「乱心」の責任を問われ斉韶に斬殺される。
■松平左兵衛督斉韶:菅貫太郎…明石藩主。
■大竹茂助:片岡栄二郎…倉永配下の徒目付。
■丹羽隼人:北竜二…明石藩江戸藩邸詰。参勤交代には同行しない。
■仙田角馬:小田部通麿…明石藩江戸藩邸詰。出口とともに新左衛門邸へ近づくが、平山に倒される。
■堀井弥八:汐路章…三橋配下の小人目付。
■出口源四郎 :有川正治…明石藩江戸藩邸詰。土井大炊頭邸に出入りした人物を調査し、暗殺計画を察知して新左衛門邸へ近づくが、平山に倒される。
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