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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「華麗なる一族」(1974)を再見。オールスターによる銀行を取り巻く政財界の黒い欲望。

  

華麗なる一族」(1974)を再見。初見は有楽座(1974)にて。芸苑社製作、東宝配給。監督は山本薩夫、主演は佐分利信。カラー、スタンダード、211分(途中で休憩が入る)。


山崎豊子の長編小説「華麗なる一族」の映画化で、山本薩夫監督にとっては「白い巨塔」に続く山崎豊子作品の映画化。


富と権力獲得への手段として、華麗なる閨閥をはりめぐらす万俵一族を主役に、金融界の“聖域”銀行、背後で暗躍する政・財界の黒い欲望を描く


出演者は豪華な顔ぶれとなり、作品は大ヒット。配給収入は4億2000万円を記録し、1974年度の邦画配給収入ランキング第4位となった。第48回キネマ旬報ベスト・テン第3位。


なお本作で一之瀬四々彦を演じる北大路欣也は、のちにドラマ版では万俵大介を演じることになる。

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志摩半島の英虞湾(あごわん)を臨む志摩観光ホテルのダイニング・ルーム。
華やかな正月の盛装の人々の中にあって、群を抜いて際だった一組があった。この一族は、関西の財界にこの人ありと知られている阪神銀行頭取・万俵大介(佐分利信)とその家族である。


鋭い眼光、端正な銀髪の大介が正面に坐り、妻・寧子(やすこ)(月丘夢路)、家庭教師兼執事の高須相子(京マチ子)、長男・鉄平(仲代達矢)と妻・早苗(山本陽子)、次男・銀平(目黒祐樹)、次女・二子(酒井和歌子)が大介を中心にして座っている。

年末から新年にかけての四日間をこのホテルで一家揃って過すのが万俵家の長年の慣例であった。


金融再編成のニュースが新聞紙上にもとりあげられ、万俵大介の心中は穏やかでない。彼は預金順位全国第十位の阪神銀行を、有利な条件で他行と合併させるべく、長女・一子(香川京子)の夫、大蔵省主計局次長・美馬中(田宮二郎)から極秘情報を聞きだした。


この閨閥作りを演出しているのは、大介の妻・寧子が華族出身の世間知らずであることから、ここ二十年来、子供の教育から万俵家の家計に至るまで全ての実権を握っている高須相子である。


阪神銀行本店の貸付課長である次男・銀平を、大阪重工社長・安田太左衛門の娘・万樹子(中山麻里)と結婚させたのも、また、恋人のいる次女・二子を、佐橋総理大臣の甥と見合させたのも相子の手腕だった。


しかも、彼女は大介の愛人として、寧子と一日交替で、大介とベッドを共にしていた。

  

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万俵財閥の当主・万俵大介が妻と愛人(名目は子供の家庭教師兼執事)と同居するという異常な環境の中で、家族間のドロドロと、銀行の合併など金融再編の流れの中で、策謀が渦巻くさまが描かれて、3時間以上の長編ながら全く飽きさせない。

 

万俵大介の愛人にして子供たちの教育担当の執事(私設秘書)の高須相子(京マチ子)が、絶対的な権力を持っていて、総理大臣の娘と万俵家の次男の縁談を画策して、閨閥づくりを進めると、大介は「敵の本陣に切り込むようなことをよく考えるな」と満足そうだった。

 

次女・二子は、総理夫人の甥との縁談があったが、ニューヨーク勤務の一之瀬四々彦(北大路欣也)という恋人がいる。

一方で、相子は、大介が情報源としている大蔵省主計局・次長の美馬中とも腐れ縁で関係を持っていた。相子が美馬に対して「茨城のド田舎の息子」と揶揄すると、美馬も「テキサスくずれの女」とやり返していた。


そんな相子だが、正妻の寧子(やすこ)に対して「実印のある場所も知らない。万俵家の月々の経費も知らない」と小ばかにしていたが、大介が銀行合併により統合された新銀行の頭取となり、身辺整理で、相子に手切れ金2,000万の小切手を手渡す事態となる。


「19年間尽くしてこれか」と放り出された怒りと無力感に震える相子に対して「あなたにも子供がいたらよかったのに」という痛烈なパンチが飛び、寧子が逆襲する展開になるところが痛快。

 

 

鉄平が、あまりにも祖父である敬介(大介の父)に似ていることから、大介は、鉄平が事あるごとに敬介の話を持ち出すことから、敬介の子と思い込み、鉄平を憎んでいたが、鉄平の死後(自死)、DNA鑑定で鉄平は大介の子であることが判明、大介が慟哭するが時すでに遅し…。


京都の「大文字焼き」で「大」の文字が焼けている光景が、大介にとっては、銀行間の合併における「小が大を食う」を実現した現実を象徴するものだった。

 

 

都市銀行8位の我が大同銀行が、10位の阪神銀行に飲み込まれるという、小が大を食うという事態になり、新銀行の頭取には、阪神銀行の万俵大介が就任することになった。
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                   品格が対照的な二人(笑)

社会派映画の傑作の1本で、その後ドラマ化もされている。
登場人物がこれでもかというほどに豪華な俳優が現れる。


【主な登場人物】
万俵大介(万俵家の15代当主:阪神銀行頭取):佐分利信
万俵寧子(その妻):月丘夢路
万俵鉄平(万俵家の長男:阪神特殊鋼・専務):仲代達矢
万俵敬介(万俵家の14代当主、大介の父):仲代達矢(2役)
美馬一子(万俵家の長女:大蔵省主計局次長の妻):香川京子
万俵万樹子(銀平の妻:大阪重工業・令嬢):中山麻里
万俵銀平(万俵家の次男:阪神銀行・本店融資課長):目黒祐樹
万俵早苗(鉄平の妻:大川一郎の娘):山本陽子
万俵二子(万俵家の次女):酒井和歌子
三雲志保(大同銀行頭取令嬢):大空真弓
一之瀬四々彦(息子):北大路欣也
一之瀬(阪神特殊鋼:工場長):稲葉義男
銭高(阪神特殊鋼・常務):加藤嘉
石川(阪神特殊鋼・社長):北沢彪
和島(帝国製鉄・専務):神山繁
大川一郎(自由党・代議士):河村弘二
春田(大蔵省銀行局長):平田昭彦
芥川(阪神銀行・常務 / 東京支店長):高城淳一
角田(阪神銀行・池田支店長):高原駿雄
松尾(大蔵省審議官):細川俊夫
荒尾(社民党・代議士):大滝秀治
中根(社民党・代議士):金田龍之介
倉石(弁護士):鈴木瑞穂 ※ナレーションも担当
小島(大同銀行・常務):小林昭二
中川留市(地主):花沢徳衛
山本(社民党・委員長):嵯峨善兵
小泉夫人(総理筋縁談の仲介者):荒木道子
伊東夫人:小夜福子
白川(大同銀行・専務):中村哲
速水(阪神銀行・頭取秘書):武内亨
伊佐早(阪神銀行/東京支店):梅野泰靖
大亀(阪神銀行・専務):浜田寅彦
渋野(阪神銀行・専務):花布辰男
帝国製鉄・工程部長:下川辰平
佐橋(総理大臣):伊東光一
大平(スーパー社長):田武謙三
市太:若宮大祐
万俵家別荘管理人:青木富夫
田中銀行局金融検査官:五藤雅博
井掛大蔵省銀行局銀行課長:生井健夫
永田大蔵大臣秘書官:白井鋭
阪神銀行池田支店次長:夏木章
岡村(阪神銀行):笠井一彦
大友銀行・池田支店長:守田比呂也
細川一也(佐橋首相の甥・二子の縁談相手):鳥居功靖
大川夫人(代議士夫人):堺美紀子
万俵家の女中:横田楊子、川口節子
記者(阪神銀行および大同銀行の合併会見場):森三平太、千田隼生、金親保雄、南治
鎌倉の老人宅の女:麻里とも恵
猟師:木島一郎
猟師の女房:坂巻祥子
東郷(長期開発銀行・常務):隅田一男
青木(長期開発銀行・融資担当部長):久遠利三
川畑(阪神特殊鋼・常務):鈴木昭生
看護婦(採血を依頼):記平佳枝
看護婦(石川社長の介添え):東静子
田淵自由党・幹事長室の秘書:加納桂
鎌倉のあの男(老人):佐々木孝丸
田淵(自由党・幹事長):河津清三郎
周子(佐橋総理夫人):北林谷栄
松平(日本銀行・総裁):中村伸郎
宮本(長期開発銀行・頭取):滝沢修
安田太左衛門(大阪重工業・社長):志村喬
綿貫千太郎(大同銀行・専務):西村晃
永田(大蔵大臣):小沢栄太郎
三雲祥一(大同銀行・頭取):二谷英明
美馬中(大蔵省主計局・次長):田宮二郎
高須相子(万俵家の家庭教師兼執事):京マチ子

 

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