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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「最後の億万長者」(1934):フランスの名匠ルネ・クレール作品。

 
最後の億万長者」(原題: Le dernier milliardaire,1934)はフランスの戦前の大監督、ルネ・クレール監督の風刺コメディ。監督とタイトルで見た。

 
 
400年前に建国されたという小国「カジナリオ王国」が舞台。
カジナリオはいまや破産寸前で、宮殿の前には、人民が押し掛け、非難ごうごう。
 
庶民は困窮。それもそのはず、税金はタダ、人々の大半が役人で、働こうとせず、国の収入は外国観光客向けの「カジノ」の収入のみだったのだ。
 
対外的には、カジナリオ国の住人は、人もうらやむ優雅な生活で、日光浴をして過ごし、豊かだというのだが・・・。

そんな景気のいいナレーションで始まるが、実際には、財政が尽きて物々交換になったカジナリオ王国。
 
新聞を購入するのに、対価はネギや人参。
取引で、鶏一羽を差し出すと、ヒヨコと卵が返ってくるというのが笑わせる。
 
女王は、外国に住むカジナリオ国出身の金持ちに、国債の購入を勧め、なかでも女王の孫娘イザベルの結婚をエサに、資産家で銀行の頭取・バンコ氏の資金を得ようと画策するのだった。孫娘の”政略結婚”で、乗り切ろうとする女王だったが・・・。
 
バンコ氏は、3億(単位:フラン?)を出すことに同意。これで、国の借金は完済、住民の暮らしも安泰と思った王室だったが、事態はとんでもない方向に・・・。
 
だまそうとした側がだまされる・・・という点が小気味いい。
 
・・・
バンコ氏は民衆への挨拶のついでに、女王の前で、自分が行政長官になることを承認させ、その場で、言葉巧みに、民衆を自分の味方につけて、権力を手に入れてしまう。それから、バンコ氏が、ある時、ベッドの頭の上からシャンデリアがおちて、気が狂い、自分に反対する大臣などは追放、国が大混乱となる。
 
 

気が狂ったバンコ氏暗殺を企てる一派もいたのだが、銃でバンコ氏のアタマを殴っ田ところ、バンコ氏が元の正常な人間に戻ってしまう。
 
 
最後のオチは傑作。
バンコ氏が結婚しようと思っていた王女は、楽団の指揮者と内密に三年前に結婚していて、二人の子供がいたのだった。
 
女王は、ショックを受け、侍従たちに「こうなったら、私が犠牲になるしかない」と、なんとバンコ氏の結婚相手に自身が収まるのだった。
 
しかし、新聞のニュースを見て仰天。
「バンコ銀行、倒産」の記事があった。バンコ氏は「知らなかったのか」としらじらしくいい、「年金を当てにしているのでよろしく」と、女王に言うのだった。

・・・
「カジナリオ国」のモデルは、モナコということで、納得。
あの、グレース・ケリーが王妃になった小国だ。モナコは、フランス南海岸にある観光名所で、カジノのあるリゾート地として有名。映画祭などが行われるカンヌに隣接している小国だ。
 
出演:
マルト・メロー→カジナリオの女王
ルネ・サン=シール→イザベル王女
ジョゼ・ノゲ ロ→宮廷楽団の指揮者
マックス・デアリー→バンコ氏
マルセル・カーペンティア→ブラウン探偵
 
 
 
バンコ氏を演じたマックス・デアリーという俳優が圧巻。
いかにも温厚な紳士然としていたのだが、あるとき豹変、狂人となってからの、コメディアンのような振る舞いは、チャップリンを彷彿とさせた。役人たちも、反対意見をいえば追放となり、逆らえないので、犬の格好をして、ワンワンと吠えるのだ。
 
フランス式ユーモア、エスプリの利いたコメディとしては面白かった。
 
1930年代~1940年代にかけてのフランス映画は、全盛期だったかもしれない。「(未見の)クラシックに進路を取れ」か。
 
☆☆☆
 
 
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