「ヴィレッジ」（2023）を見る。今年4月21日公開の日本映画。主演は「アキラとあきら」などの横浜流星、監督は「新聞記者」の藤井道人。
まわりが山に囲まれた「寒村」ともいえる閉ざされた集落の世界を舞台に、限界集落、若者の貧困、格差といった社会の闇を描いている。娯楽性を排除したシリアスなドラマ。
日本のとある集落を支えているのがゴミ処理場。ゴミ処理場で働くのは訳ありの若者たち。多くは借金の返済のためで、ゴミ処理を隠れ蓑にして違法書類などを不法投棄して、埋めてしまおうとするヤクザ組織や見て見ぬふりの村長らの思惑があった。
一部の反対を押し切ってゴミ処理場建設が行われたが、村長はゴミ処理場は村のメインの収入原資として推進していた。ある時、ゴミ処理場で働く若者の一人が、不正を発見し、正義感から不正を公にしてしまう。
村長は、建前上は「よく発見した」と若者を称えるが、マスコミなどの対応には、ゴミ処理場建設反対の急先鋒で、ある事件により犯罪者の汚名を着せられ自殺した人物の息子である片山優（横浜流星）に責任を押し付けようとするのだが…。
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山の上の神社、その更に上の山にごみ処理場が建設されてしばらくの時が経つ霞門村（かもんむら）。
そのごみ処理場建設に反対をし、殺人を犯した父親のために"犯罪者の息子"という烙印が押された片山優（横浜流星）は、そのごみ処理場で働いていた。
片山優（横浜流星、左）と筧龍太（奥平大兼）
その処理場の現場は村長・大橋修作（古田新太）の息子である大橋透（一ノ瀬ワタル）が仕切っており、優は透から暴力を振るわれ、賭けの対象にされていた。
その上、帰宅すれば母・君枝（西田尚美）に金を要求され、その母が作った借金返済のために、非合法的に施設に産業廃棄物を投棄する作業を手伝う毎日。スーパーで弁当を買えば"犯罪者の息子"と蔑まれるなど、優の人生に希望は無かった。
そしてある日、優の幼なじみの美咲（黒木華）が数年ぶりに東京から出戻り、ごみ処理場で広報として働くこととなる。今の優を気づかう美咲。ある時、職場で美咲が優を子供向けツアーの案内役に抜擢する。
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霞門村（かもんむら）は日本社会における寒村の縮図とみることができる。そこで暮らす人々は生きるのが精いっぱいで、貧困に悩まされ、闇金のようなヤクザから借金に追われ、閉そく感の中で希望の持てない暮らしをしているのだ。
村に伝統的に伝わる芸能である“薪能（たきぎのう）”が継承される神秘的なシーンが映し出される。
薪能（たきぎのう）というのは、おもに夏場の夜間、能楽堂や野外に臨時に設置された能舞台の周囲にかがり火を焚いて、その中で特に選ばれた演目を演じる能楽のこと。能面をつけた無表情の一群が不気味な感じがする。
大橋透を演じる一ノ瀬ワタルは元キックボクサー。同じくボクサー経験のある横浜流星を殴るシーンがあるが、横浜流星は無抵抗。
しかし、透が美咲を襲っている場面では、横浜流星も黙っていない。そして、壮絶な結末を迎える…。
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出演者では、強面のヤクザを演じる杉本哲太や、パチンコ店で玉が無くなるとパチンコ台を叩き騒ぎ立てるギャンブル狂で、優の母親を演じる西田尚美など名わき役が見どころだった。
しかし何といっても、最近の横浜流星の躍進ぶりはすごい。4年前のドラマ「あなたの番です」で初めて見たが、その後の出演作品で様々な顔を見せている。
修作と光吉の母を演じる認知症のような老婆が登場するが不気味だった。女優がだれかわからなかったが、あとから木野花と知って驚いた。
しかも、ほとんど認知症でわからないと思ったら、実は…というところも凄みがあった。
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主な登場人物：
■片山優：横浜流星
最終処分場に纏わるとある事件がきっかけで、霞門村にあるゴミ最終処分場で働いている。
■中井美咲：黒木華
東京から出戻った、優の幼なじみ。
■大橋透： 一ノ瀬ワタル
修作の息子で、優が働くゴミ最終処分場の作業員。
■大橋修作：古田新太
透の父で、霞門村の村長。
■大橋光吉：中村獅童
修作の弟。過去の事件を切っ掛けに村を出ているが、霞門村で数少ない薪能の使い手。
■筧龍太：奥平大兼
ゴミ最終処分場で働く作業員。
■中井恵一：作間龍斗
内気な性格の、美咲の弟。
■丸岡勝：杉本哲太
ゴミ最終処分場を利用して不法投棄を繰り返すヤクザ。
■片山君枝：西田尚美
優の母親。パチンコなどのギャンブルに溺れて多額の借金を抱えている。
■大橋ふみ：木野花
霞門村で絶大な権力を誇る老女。修作と光吉の母。
