fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「シャイロックの子供たち」(2023)を見る。池井戸潤原作。

シャイロックの子供たち」(2023)を見るMOVIXさいたま、6回鑑賞で今回無料)。池井戸潤原作の映画、ドラマは邦画では一番の好物(笑)。監督は「超高速!参勤交代」(2014)「空飛ぶタイヤ」(2018)などの本木克英

銀行が舞台で、予告編で主演の阿部サダヲの「倍返しだ」を聞くと半沢直樹の痛快逆転劇を連想させるが、すっきりとした爽快感には乏しい。

巨悪の陰謀に巻き込まれた一銀行員がトカゲの尻尾きりのように2年間服役し、出所後、再生する一方、大金を得た人物がのうのうと生き延びているというエンディングは何を意味するのか。

シャイロックというのはヴェニスの商人」に出てくる悪徳な金貸しのことで、その子供たちと複数なのは、登場する銀行員のほとんどが、どれもこれも不正と悪徳に染まっていたということなのだろう。

老獪な古タヌキの化かしあいのような曲者が何人も登場するが、柳葉敏郎橋爪功柄本明などは見どころ。杉本哲太のような、上にへつらい、部下に怒鳴り散らす輩はどこにでもいるが、追及の厳しさは迫力がある。

・・・(以下、ネタバレ注意)
舞台となるのは大田区にある東京第一銀行・長原支店。五反田駅から池上線で五つ目の駅が長原駅。その次の駅が洗足池で、長原支店の取引先として「洗足池○○」といった会社や、その数駅先の池上の名前の付いた「池上XX」といった会社も取引先だったりする。

長原支店には、出世街道を外れた課長代理・西木雅博(阿部サダヲ)をはじめ、業績のためには大声で怒鳴り散らすパワハラ副支店長(杉本哲太)、真面目な女性行員・北川愛理(上戸彩)、いつも成績トップのエースなど、さまざまな行員たちがそれぞれに事情や思いを抱えながら働いている。

ある日、そんな長原支店で100万円の現金紛失事件が発生。女性行員・北川愛理のロッカーのバッグから当日の日付の入った札束の帯封が発見され、疑いがかかる。

北川の上司である西木は、現金紛失事件の真相を追うことになる。しかし、そのあと、西木は突然失踪してしまう…。

やがてある小さな疑問から、現金紛失事件の裏に隠された驚くべき「不正」が明らかになっていく。

・・・
銀行の検査官の黒田道春(佐々木蔵之介)は、妻と一緒に舞台「ヴェニスの商人」を観劇。その時に改めて考え、ある言葉をつぶやく。

「金は返せば良いと言うものではない」

黒田はかつて支店で働いていた頃、不正をある男に見つかって見逃してもらった。金曜日にATMからお金を抜き土日に競馬に注ぎ込んで、月曜日にお金を返していたのだ。

それから何年後か、長原支店では業績を上げるためにパワハラが横行していた。特に新規開拓班へのプレッシャーはきつく、1人は病みかけているほど。そこに異動したての滝野真(佐藤隆太)は、エースとして期待を背負っていた。

ある時、副支店長から、早めに融資できそうな所はないのかと焦らされる。そこで滝野は「江島エステート」という会社が10億の融資を望んでいると発表してしまう。

しかし江島エステートは事実上倒産しており、かつての取引先の社長・石本浩一(橋爪功)のペーパーカンパニーと化していた。

滝野は石本に弱みを握られていたため、ペーパーカンパニーであるという事実を知りながらも滝野は江島エステートへの融資の稟議を書いた。

稟議は不審な視線を受けつつも、10億円の融資は決行されてしまった。


・・・
10億円の融資が新規取引の会社であるにもかかわらず認可された裏には隠された秘密があった…。

100万円が消えた理由、100万円が消えても支店長から誰にもおとがめなしだった理由、様々な不信感が銀行内にはびこるが、一体背景には何があるのか…といったところが見どころ。

銀行のお金に手を付けて、ギャンブル(競馬)に大金をつぎ込む銀行員が検査部に転属するが、かつてそれを見て見ぬふりをした男が、今は長原支店長に収まっていて、その支店長が競馬場で検査部の男と鉢合わせする。

「同じ穴の狢(むじな)だな」と支店長が苦笑いするが、一番の悪党は支店長だった。
この支店長に対して、一泡吹かせるべく支店の銀行員らが奇策を仕掛けるというのが、一つのどんでん返しではある。

行政書士を介して売主、買い手の間での売買契約で、設計図で耐震構造に偽造があることを見抜かれるkどうかという進行などはスリリングで見ごたえがあった。

「売買契約書」「所有権移転」「担保の抹消」「入金確認」と進み、成立して拍手が起こるが、その後、建物の設計をした人物が、その耐震偽造の罪意識に耐えられず警察に自首するという事態になり、ニュースとなって、悪徳の目論見は水泡に帰すのだが…。

原作とは一部異なるようだが、池井戸潤の原作映画は見て損のない映画だが、期待しすぎると肩透かしを食うかもしれない。

<主な登場人物>
■西木雅博:阿部サダヲ…長原支店課長代理(お客様係)。兄弟の保証人になり多額の借金肩代わりで、闇金のヤクザたちに追われる。支店長の不正を北川らと調べ上げ証拠を握る。酒飲み友達の不動産を売り付ける手伝いをして多額の金を得て、1,000万の札束を、闇金取り立て屋に返すと、彼らは金を受け取って黙って立ち去る。
■北川愛理:上戸彩…長原支店お客様係。几帳面で仕事もしっかりとしている。同僚の女子行員・半田の中途半端な仕事ぶりを時々注意するので、半田から嫌われている。身に覚えのない100万円の帯封が自分のロッカーに入れられて、100万円の横領の疑惑を向けられてしまう。

■田端洋司:玉森裕太…長原支店営業部員。得意先に「900万円」の袋を届けたが、800万円しか入っておらず、行内は大騒ぎとなり、ゴミ袋、ロッカー、私物、机の中、など総動員で探すことになり、責任を感じる。
■九条馨:柳葉敏郎…長原支店長。ある人物とつながっていて、分け前を受け取っていたことが発覚する。趣味が競馬。銀座のクラブで豪遊している。

 今や貫禄たっぷり
■古川一夫:杉本哲太…長原支店副支店長。大声で行員を怒鳴りつけ、営業ノルマ達成を厳しく求める。血の気が多い。
■滝野真:佐藤隆太…長原支店に配属されてくるエース級の行員。大型案件が入ってくるが、その人物は、かつて別の支店で滝野に関わっていて裏金として1,000万円もらっていた人物。10億円の融資を求めてきたが、断り切れず、行内でその稟議を挙げる。なぜか稟議が通ってしまう。巻き込まれたとはいえ、不正に加担したことで2年間収監される。出所後は新たにスーパーで働く。
■鹿島昇:渡辺いっけい…長原支店営業課長。
■半田麻紀:木南晴夏…長原支店行員。勤務態度が悪い。北川から書類の漏れなどを指摘されてふてくされた態度をとる。たまたま落ちていた100万円の帯封を、北川のロッカー(いつもカギをかけていない)に入れる。調査の結果、半田とにらんだ西木から、刑事事件として帯封を警察に提出して指紋を採取することを検討しているというと、自分が入れたと白状する。
■沢崎肇:柄本明…西木と飲み屋で知り合った飲み仲間。不動産のことで相談したいと長原支店にやってくる。西木が不動産を見に行くと、オンボロの建物ばかり。1件だけ立派に見えるビルがあったが、耐震偽装があるという。
■石本浩一:橋爪功…江島エステートという倒産会社の社長になりすまし、銀行に融資を持ち掛ける。かつてお金を渡したことがある滝野を利用する。
■黒田道春:佐々木蔵之介…妻と息子の3人暮らし。趣味が競馬。銀行の金を週末に持ち出して競馬に使い、その配当金を日曜夜に金庫に戻していた。金庫に戻しているところを、九条が見ていて、落ちていた帯封を九条が持っていく。
■黒田の妻:森口瑤子…「ヴェニスの商人」など夫と観劇を楽しむ。
■遠藤拓治 :忍成修吾
■高島勲:近藤公園
■松岡建造:西村直人
■所ヒカル:中井千聖
■堂島俊介:安井順平
酒井若菜前川泰之徳井優、斎藤汰鷹、吉見一豊、吉田久美

 

一時は、と言っても4,50年前は安定して花形職業の一つだった銀行員も、この映画を見ると、ノルマなどあまりにも過酷で銀行員でなくてよかったと思うことだろう(笑)。

映画で、あり得ないと思われる疑問もいくつかある。稟議書類の一部に偽造があることを見抜けなかったこと。支店内で、業務中に、支店長の不正を暴こうと行員同士で協議するなど。

 

■「にほんブログ村」にポチッと!。

https://movie.blogmura.com/ranking/in   

https://movie.blogmura.com/moviereview/ranking/in