「ラリー・フリント」(原題: The People vs. Larry Flynt、1996)を見る。監督は「カッコーの巣の上で」「アマデウス」のミロス・フォアマン。
主演はウディ・ハレルソン。共演はコートニー・ラブ、エドワード・ノートン、ジェームズ・クロムウエルほか。
ケンタッキー州での貧しい生い立ちから破天荒なポルノ雑誌出版者・編集者となったラリー・フリントとジェリー・ファルエル牧師との法廷闘争を描く伝記映画。
ウディ・ハレルソンはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。ハレルソンというと、最近では「スリー・ビルボード」の保安官役(アカデミー賞助演男優賞ノミネート)が印象に残る。エドワード・ノートンが正義感にあふれた弁護士を熱演。コートニー・ラブは、ストリップダンサーから出版社の妻をやさぐれた薬漬けの怪演でニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞などを受賞。
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1972年、オハイオ州シンシナティ。ストリップ・クラブのオーナー、ラリー(ウディ・ハレルソン)は、弟ジミー(ブレット・ハレルソン)と経営する店の客寄せのためのヌード写真入り会報を発行。
この成功を機に出版社を設立した彼は、男性誌「ハスラー」を創刊。また、この頃、ラリーはクラブのダンサー、アルシア(コートニー・ラヴ)のエキセントリックな魅力にひかれ、同居を始めた。
創刊号は返品の山だったが、ケネディ大統領夫人のジャクリーン・K・オナシスの全裸写真をスクープした号は200万部を売り上げ、ラリーはたちまち大金持ちになった。
1976年、アメリカ建国200年の記念日の夜、ラリーはアルシアとの結婚を決意した。性器を露出した過激なグラビアとスキャンダラスなスクープ写真は、大物投資家キーティング(ジェームズ・クロムウェル)やリーズ検事(ジェームズ・カーヴィル)ら世の良識者たちの反感を買っていた。
1977年、ラリーはわいせつ罪、および組織犯罪容疑で逮捕される。弁護士のアイザックマン(エドワード・ノートン)の法廷での健闘も虚しく、ラリーは翌年、多額の罰金と懲役25年の判決を言い渡された。
間もなく釈放されたラリーは「自由な出版を守る会」に招かれ、戦争とヌードの写真が交互に映し出される巨大なスクリーンを前に「忌まわしいのはどっちだ!」と演説した。
やがて彼は、カーター大統領の妹で敬虔なクリスチャンであり、彼を「性の抑圧からの解放者」と考えていたルース(ドナ・ハノーヴァー)の支持を受ける。彼女の影響でラリーがクリスチャンに回心すると、「ハスラー」もポルノと宗教が奇妙に混在したものへと変わったが、彼は周囲の誰の意見にも耳を貸さない。1978年、ジョージア州の裁判所前でラリーは何者かに狙撃され、下半身不随になってしまう。
信仰を捨てルースと訣別した彼は、ハリウッドへ移る。今や心だけで結ばれていたアルシアとラリーは豪華な寝室に閉じこもり、ドラッグに溺れる日々が続いた。
1983年、手術によって痛みから解放されたラリーはドラッグをやめ、仕事に復帰し新たな闘いを始めた。デロリアン・モーター・カンパニーの社長ジョン・デロリアンとFBIのコカイン取り引き現場を映したビデオ、つまりFBIの囮捜査の模様が収めたものを入手した彼は、CBSに売り込んだ。
ビデオの出所を明らかにするよう求められたラリーはこれを拒否し、法廷で暴言をブチまけた挙げ句、精神科刑務所に収容を命じられる。
そんな時、著名な伝導士フォルウェル(リチャード・ポール)が、彼と母親が近親相姦していたという「ハスラー」のパロディ広告に怒り、ラリーを告訴した。
自身のスキャンダルが掲載された「ハスラー」を見る伝導士フォルウェル
アルシアの懇願で一度はラリーに解雇されたアイザックマンが弁護をするが、裁判が始まるとまたしてもラリーは法廷で悪態の限りを尽くし、再び有罪判決を受ける。
そんな折り、エイズに冒されたアルシアがバスタブで溺死する。最愛の妻を失ったショックの中で、ラリーはアメリカが自由の国であることを証明するため、そして共に闘ってきたアルシアの死に報いるため、最高裁で表現の自由の意味を争うべく上告する。やがて、在りし日のアルシアの姿を収めたビデオを見ていたラリーは、アイザックマンから勝訴の報せを受け取るのだった。
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アメリカ国旗を背景に、フリントが、新聞、雑誌で戦争の悲惨な殺戮の写真はよくて、エロ写真が罰せられるのはおかしいと演説をするシーンは、かの「パットン大戦車軍団」(1970)のパロディといわれる。
カーター大統領からレーガン大統領に移る時代背景も映し出されていておもしろい。カーター大統領の妹はフリントを支持していたというのも興味深い。カーターの妹ルースを演じているドナ・ハノーヴァーが、いかにも上流階級といったイメージで、味わい深い。
ウディ・ハレルソンは、悪役や、キレた役や変わり者を演じることが多いようだが、イメージとしては、反骨精神の「波止場」などのマーロン・ブランドのような印象。
25年も前の映画だが、「シカゴ7裁判」などが注目される今見ても裁判劇としてもおもしろい。