「マ・レイニーのブラックボトム」(原題:Ma Rainey's Black Bottom、2020)を見る。監督はジョージ・C・ウルフ、主演は「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」のヴィオラ・デイヴィス。製作にはデンゼル・ワシントンも名を連ねている。
原作は、オーガスト・ウィルソンが1982年に発表した同名の戯曲。「ブラックパンサー」の主役などを演じたチャドウィック・ボーズマンは、この映画で今月発表のロサンゼルス批評家協会賞の男優賞を受賞したが、今年8月に43歳の若さで亡くなっており遺作となった。
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舞台は1920年代のアメリカ。”ブルースの母”と呼ばれた黒人の女性歌手マ・レイニーの姿を通して、黒人音楽が台頭し、もてはやされた反面、奴隷解放後も黒人が白人から搾取される存在に変わりはないことを描いている。
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1927年のシカゴ。野心家のトランペッター、レヴィー(チャドウィック・ボーズマン)が所属するバンドは「ブルースの母」と呼ばれた伝説的歌手、マ・レイニー(ヴィオラ・デイヴィス)のレコーディングに参加した。
レコーディングが進むにつれて、マ・レイニーは白人のマネジャーやプロデューサーと激しく衝突するようになり、スタジオ内がピリピリとした雰囲気になった。
揉め事やトラブルが発生するたび、レヴィーたちはリハーサル用の部屋で待機を命じられた。待機中、レヴィーは自らの思いを他のメンバーに吐露し始めたが、それをきっかけにバンドの運命が大きく変わることになった(Wiki)。
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ブルースの起源はもともとはアフリカにあるようだが、19世紀後半頃にアフリカ系アメリカ人が多く住むニューオリンズなど米国深南部で黒人霊歌、フィールドハラー(労働歌)などから発展したものと言われている。やがてブルースは南部からセントルイス、シカゴ、ニューヨークなどへ北上し、各地でスタイルを変えながら発展。
1900年代の初めにマ・レイニーという黒人歌手が実在していたことを初めて知った。当時の時代背景を考えると、マ・レイニーのように厚かましく命令口調で白人のプロデューサーに文句・不平を言うのは珍しい。これは、音楽を武器に差別と闘った一例かもしれない。
白人の音楽プロデュ―サーが、マ・レイニーがコーラを好むのを知っているはずなのに準備していなかったことに「白人はコーラ代5セントも出さない。コーラがなければ歌わない」と腹を立てるマ・レイニーの怒りもすごい。高慢な態度でもあるマ・レイニーだが、歌には絶対の自信があり「リスペクト(尊敬の念)がないなら、帰る」というのだ。
マ・レイニーの化粧(メイク)はボディペインティングのように派手でけばけばしい。化粧担当は、油を塗ったようにしたという。
衣装も、当時の時代を反映してそろえたという。例えばテントの中に100人ほどのエキストラがいたが、衣装デザイナーは、一人一人の衣裳について、どこから来た(衣装)のか、説明をしたという。
ロサンゼルス映画批評家協会の男優賞を獲得したチャドウィック・ボーズマン(レヴィ―役)の演技がすごい。レヴィ―が白人に対して「イエス、サー」と愛想よく従っているのを仲間の黒人が冷ややかに言うに対してレヴィ―ハ反発するように言う。
レヴィ―の父親も生き抜くために、大変な思いをして亡くなっていったこと。表面上は、白人に従うふりをして、裏では、復讐を考えていて、レヴィ―自身もそれを実行しているというというのだ。
自身はトランペットを吹くが、作曲も手掛ける。作った曲を自分で演奏、またレコーディングもさせてほしいと音楽プロデューサーに頼むが、プロデューサーはなんと1曲5ドルなら買い受けると突っぱねるのだった。
そして、映画のラストでは、レヴィ―の作曲した曲を、ボーカル、指揮者、演奏者、すべて白人が占めていたのだ!(痛烈!)。
Netflixの配信で見たが「映画ができるまで」というメイキング映像も引き続き配信されていて、出演者、監督などの差別に対する不条理などを訴えていた。
主な出演者:
レヴィー:チャドウィック・ボーズマン(遺作)
トレド:グリン・ターマン
カトラー:コールマン・ドミンゴ
スロー・ドラッグ:マイケル・ポッツ
ダッシー・メイ:テイラー・ペイジ
シルヴェスター:デューサン・ブラウン
スターディヴァント:ジョニー・コイン
アーヴィン:ジェレミー・シェイモス