「ROMA/ローマ」（2018）を見た。Netflix作品ということを広く世に知らしめた作品で、日本で初めて劇場公開（イオンシネマで限定公開）された作品。2019年度のアカデミー賞で最多の10部門でノミネートされ、監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3部門を受賞した。これだけの賞を獲得、”見ないという選択肢はない”（笑）。
監督はメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロン。あの「ゼロ・グラヴィティ」「ハリー・ポッター アズカバンの囚人」の監督でもある。メキシコシティの「ROMA」というキュアロンの出身地をタイトルにして、自らの幼少期の体験を元にした自伝映画。映画は超高解像度のモノクロ映像。
オープニングから引き込まれる映像の美しさ。スタッフ・キャストのクレジットの裏で床面のタイルが映される。そこに水が流れ、泡立った水が被さる。やがて水が溜まっていき、反射した空に飛行機が飛ぶ。そしてタイトルの「ROMA」の文字が浮かび現れる。1970年代のメキシコをオープンセットで再現。窓の外のデモや暴動シーン、病院内のシーンなど、僅かなシーンもリアルに再現している。
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舞台は1970年、メキシコ・シティ近郊のコロニア・ローマ。医師アントニオの家族のもとで住み込み家政婦として働くクレオ（ヤリャッツァ・アパリシオ）は、炊事、洗濯、料理、子供の世話と、毎日忙しく過ごしていた。
一家には夫婦と子供たち４人がいたが、全員でテレビを観るなど、賑やかだったが、子供たちの父親は出張が多く、ほとんど家にいなかった。 仕事でなかなか家に帰ってこないアントニオには、実は愛人がいた。別居を決意する妻ソフィア（マリーナ・デ・タビラ）は、将来に不安を募らせる。
クレオは一緒に働く家政婦の彼氏の従兄弟（いとこ）・フェルミンを紹介してもらい、恋中になる。クレオはフェルミンと映画（「大進撃」）を見に行った時に、映画の終了間際に、自分が妊娠している可能性があることをフェルミンに告げる。すると、フェルミンは映画の途中で、トイレに行くと言って席を立ったまま戻らず、クレオが外を探しても見つからない。
クレオがソフィアに相談すると医者に連れて行かれ、妊娠が確定する。 クレオの妊娠を暖かく迎える一家の母ソフィだったが、父である医者アントニオは長期の出張に出かけると言い、妻と子供たち、それからクレオたちを置いて家を出てしまった。
後日、アントニオの居所を突き止めると、武術の練習を行っていたが、そこでアント二オが放った言葉は「オレの子ではない。召使いめが！」だった。
クレオの妊娠も結局、死産となってしまう。ソフィはそれでもたくましく立ち上がり、車でクレオと子供たちを連れて海岸へ遊びに行く。そこで事件が発生。子どもが沖へと流されてしまうのだ。それをクレオが危機一髪で救出。クレオに感謝する家族。クレオは既に家族そのものだった・・・。
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1970年代初頭のメキシコでは暴動など大きな歴史のうねりがあったが、血の繋がりもなく、身分も異なる二人(クレオとソフィー)はお互い男性のエゴによって捨てられてしまう。深く傷ついた二人は寄り添いながら、そして精神的な自立を目指していく。
たんたんとした映画で地味な部類だが、カメラがゆっくりとなめらかに移動する映像美などは見ごたえがある。特に海岸沿いで、子供二人が溺れて、クレオが助けるシーンは圧巻。一家の愛犬は「ボラス」。（「アン」という犬もいたか。）フンの掃除も大変そうだった。蛇足だが、フェルミンという男が、ベッドに居るクレオの目の前で、（ボカシ無しの）全裸（地上波では絶対放送は無理）で武術を披露するシーンは笑った。
