「オースティン・パワーズ」(原題:Austin Powers、1997)を見た。3作目まで制作されたシリーズ第1作。主演のマイク・マイヤーズはプロデューサーと脚本も兼ねている。
「007」シリーズのパロディで、イギリスのモテモテ有能スパイ、オースティン・パワーズの活躍を描く。主人公がスパイといっても、本家の007のボンドとは全く異なり、見た目も冴えない男だが、なぜか女性たちに追いかけられる。下ネタ連発で、品のないおバカ映画だが、憎めないところはある。マイク・マイヤーズが主人公と宿敵Dr.イーグルの二役を演じている。
・・・
1967年、流行に乗る有名ファッション写真家でありイギリスの諜報員でもあったオースティン・パワーズ(マイク・マイヤーズ)は、自身が所有するナイトクラブで宿敵Dr.イーブル(マイク・マイヤーズ)を追い詰める。
イーブルは「Bob's Big Boy」(レストラン「ビッグ・ボーイ」のマスコット人形)の像の形をしたロケットで宇宙へ逃走し、自身を人体冷凍保存する。イーブルが蘇生した時に備え、オースティンは包接水和物に自ら入り冷凍睡眠を始める。
30年後の1997年。Dr.イーブルは新たな世界征服計画と共に地球へ帰還する。
組織の隠れ蓑として買収したシアトルのコーヒー会社が経営的に大成して表の世界では大実業家となったMr.ナンバー・ツー(ロバート・ワグナー)もイーブルのもとに戻り、数百万ドルをかけた「バルカン計画」に加担する。
すでに裕福であったイーブルだが、数々の計画で世界各国をゆすり、より多くの金銭を得ようとする。しかし1960年代には恐ろしかったはずの陰謀のいくつかは、この30年間に実現してしまっており、部下からいちいち訂正を受ける。
核兵器の奪取、世界の拿捕(だほ)という古い計画は撤回したが、世界征服に必要な金額として1千億ドルを要求することを決める(当初100万ドルと提示するが、30年間で貨幣価値が変わったという部下の忠告で金額を上げた)。
一方、部下のフラウ・ファービッシナ(ミンディ・スターリング)はイーブルの精液を使い、人工的にイーブルの息子スコット・イーブル(セス・グリーン)を作り上げていたが、彼はグランジやハードロック、PCゲームに夢中なボンクラで世界征服に関心をもってくれず、イーブルを失望させる。
その頃、イーブルの復活に気付いたイギリス国防省はオースティンを解凍。
1960年代に彼の助手であったミセス・ケンジントン(ミミ・ロジャース)はこの30年間に退職したため、娘ヴァネッサ・ケンジントン(エリザベス・ハーレイ)が彼のエージェントとなる。
1960年代に彼が持っていた自由恋愛主義の信条は、1990年代には時代遅れとなっており、ヴァネッサを誘惑しようとしても成功しない。
後に2人は夫婦に成りすましてラスベガスのホテルに宿泊し、ナンバー・ツーのイタリア人秘書アロッタ・ファジャイナ(ファビアナ・ウーデニオ)と出会う。偵察と情事のため彼女の日本風ペントハウスに向かい、地球の核に核弾頭を打ち込み噴火の引き金とし世界の爆発を目論むイーブルの「バルカン計画」を知ることになるのだが・・・。
・・・
「007」シリーズでは、亜流のデヴィッド・ニーブン主演の「007カジノロワイヤル」のコメディ大作映画に近いドタバタコメディ。
登場人物を極端に漫画化しているところが笑わせる。
特に悪玉スペクターは、会議中に、実績を上げなかった幹部を即座に射殺したり火あぶりにしてしまう狂気の側面と、はにかんで、喋りながら右手の小指を突き立てて唇に持っていく癖などが抱腹絶倒。
オースティンのエージェントとなるヴァネッサ・ケンジントン(エリザベス・ハーレイ)が魅力的で、オースティンがモーションをかけるが、世界中でオースティンと二人だけ生き延びても、絶対に恋人にはならないと断言する。
主な登場人物:
…プロのカメラマンとして世間に名を馳せる傍らで国際的に活躍するスパイ。1960年代さながらのフリーセックス思想を持つカリスマナルシスト。色男を気取るわりに、笑ったときの歯並びが悪い。
■Dr.イーブル:マイク・マイヤーズ
…エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(「007」シリーズのスペクターNo.1)を元にしたキャラクター。世界征服を企む悪の組織の親玉。ただ、1960年代とタイムスリップした1990年代のギャップに苦しみ、はした金で国連を脅迫して笑いものにされたり、カウンセリングでもうまく人ととけ込めないなど内向的な性格。ペルシャ猫を可愛がっているが、このビグルスワースという猫は冷凍睡眠の影響で脱毛してスフィンクスになってしまった。
■バジル・エクスポジション:マイケル・ヨーク
…オースティン・パワーズの上司。
■Mr.ナンバー・ツー:ロバート・ワグナー、(若年時):ロブ・ロウ
■エミリオ・ラルゴ(「007 サンダーボール作戦」のスペクターNo.2)を元にしたキャラクター。Dr.イーブルのフロント企業の担い手。右目の部分に黒いアイパッチをしている。アイパッチに、ポーカーでのトランプの裏側を透かして見えるセンサーを内蔵している。
■フラウ・ファービッシナ:ミンディ・スターリング
…ローザ・クレッブ(「007 ロシアより愛をこめて」のスペクターNo.3)を元にしたキャラクター。ヒステリックな女性幹部。
■スコット:セス・グリーン
…世界征服を引き継ぐために人工授精で作られたDr.イーブルの息子。しかし1990年代的なボンクラ青年に育っている。
あまりにも呆れてしまうほどの”存在の耐えられない軽い”映画で、後半部分は、見るのを省略した(笑)。
★★