3人の監督によるオムニバス映画「TOKYO!」(2008)を見た。フランス・日本・ドイツ・韓国合作映画。第61回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門へ出品された。
オムニバス映画では「昨日・今日・明日」のようにヴィットリオ・デ・シーカ監督が一人で担当して、同一俳優が演じている場合は、そのエピソードの落差などが面白い映画となっているが、「TOKYO!」のように異なる監督の場合は、どうしても、監督の力量で、出来不出来のバラツキが出てしまう。
第3話目の「シェイキング東京」がなかったら、劇場でこの映画を見た人は、金返せの大合唱だったかもしれない。第3話を監督したのは「グエムル-漢江の怪物-」(2006)の韓国のポン・ジュノ監督。
ジュノ監督といえば、この映画の翌年に話題作「母なる証明」(2009)を監督するなどで注目された。出演俳優にも恵まれた。10年間引きこもりになっている男を演じているのが演技派の香川照之であり、毎週末、ピザを配達するのが、蒼井優だからだ。
電話で宅配を頼んで外出をしない主人公は、配達人とは一切目を合わせない。ところが、いつものようにうつむいて、ピザのボックスを受け取り2,000円を渡そうとするときに、ピザ配達の若い女性の片方の足のガータが目に入ってしまうのだ。
思わず顔を上げて、女性の顔を見てしまう…。このあたりの香川照之の演技は見所。そして、女性の腕などに、タトゥーがあり、それがいくつかのスイッチ・ボタンのようになっていて、その内の一つを押してしまうと…想定外の事態に、といった展開へ。
第1話は、今をときめく若手俳優が多数出演している。加瀬亮、藤谷文子、伊藤歩、チョイ役だが妻夫木聡など。このほか、ベテラン勢では、光石研、でんでんなども出演しているが、ミュータントが登場するなど、パッとしない。
”下水道の怪人”(名前がメルド=糞)がマンホールから登場して、奇妙な言語を話し、都内で暴れまわり死刑になる話だが、まったく面白みがないエピソード。
冒頭のシーンで、五反田駅界隈を俯瞰で撮影しているシーンがあり、長年勤務した会社の自社ビルが映っていた。見所といえば、銀座のメインストリートを怪人が歩くシーンでは、なんと「ゴジラ」(1954)のメインのテーマ曲が流れていた。
──映画監督の恋人と上京したばかりのヒロインに降りかかる不思議な出来事を綴るファンタジー・ストーリー。駆け出しの映画監督である恋人・アキラ(加瀬亮)と一緒に上京してきたヒロコ(藤谷文子)。高校時代の同級生アケミ(伊藤歩)の部屋に居候しながらバイト探しを始める2人だったが、なかなか期待通りの引越し先が見つからない上に、アルバイトもアキラだけが合格、夢にあふれる彼を横目に、ヒロコはだんだんと自分の居場所がないことを感じ始める…。そしてある朝、ヒロコが目覚めると、彼女の体の一部が木になっていた!?
■レオス・カラックス監督「メルド」
──監督の盟友ドニ・ラヴァンが東京中を震撼させる謎の怪人に扮する不条理劇。大都市・東京で、突如マンホールから一人の謎の男が地上に出現。彼の名はメルド(ドゥニ・ラヴァン)。意味不明な言葉を発しながら、道行く人々に危害を加え始めた彼は、やがて手榴弾を渋谷の街に投げ込む。メディアでも大きく取り上げられ、いつしか“下水道の怪人”と呼ばれ、東京の人々を恐怖に陥れるメルドだったが、ついに警察に拘束される。そしてこの謎の男の情報が世界中から寄せられる中、裁判が始まるのだが…。
■ポン・ジュノ監督「シェイキング東京」
──東京のとある街で、10年間家を出ないまま、引きこもりの生活を続けている一人の引きこもり男(香川照之)とピザの宅配少女(蒼井優)との奇妙な心の交流を描くファンタジー・ラブストーリー。10年間引きこもりの生活を送る一人の男。土曜日には必ずピザを頼むその男の家に、その日、配達に来たのは美しい少女だった。思いがけず、少女と見つめ合ってしまう男。その瞬間、突然大地が揺れ、少女は気絶してしまう。そんな彼の中の何かが揺れ始める。ところが、ピザ屋の店長(竹中直人、強烈!)によると、彼女はもうバイトを辞めて永遠に家を出ないという。ついに家の外へと飛び出した彼は、彼女の住む街へと駆け出すのだが…。ロボットがピザを配達していたり、地震が起きると、静かだった街中の引きこもりが一斉に表に姿を見せるというのも、何やら現在を予見しているようで、面白い。
