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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「初恋〜お父さん、チビがいなくなりました」(2019)。

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映画初恋〜お父さん、チビがいなくなりました」を見た。MOVIXさいたま(初回)にて。”いい映画を見た”という余韻を残す映画だった。ベテラン女優の倍賞千恵子と同じくベテランの藤竜也の”あるある”リアル演技と会話の妙に負うところが大きい。脚本もいい。ラストで、笠置シズ子の唄がかかるが、昭和感がたっぷり。
 
原作は、映画にもなった「(おとこ)の一生」や「姉の結婚」などで知られる漫画家の西炯子(にし・けいこ)による「お父さん、チビがいなくなりました」。監督は「毎日かあさん(2011)の小林聖太郎
 
原作の題名のまえに”初恋”を足しているが、映画を見終わった時に、このタイトルが絶妙の味付けになっている。何度も胸が張り裂けそうなほど締め付けられた。今年の邦画のマイベスト3入りは確実か。じわじわと染み込んでくる。
・・・
3人の子供が巣立ち、人生の晩年を猫のチビと暮らす武井勝(藤竜也)と有喜子(倍賞千恵子)の老夫婦。勝は無口で頑固、家では何もしないという絵に描いたような昭和の男。そんな勝の世話を焼く有喜子の話し相手は、チビだけだった。
 

ある日、有喜子は娘の菜穂子(市川実日子=みかこ)に「お父さんと別れようと思っている」と告げる。その真意を探ろうと長男・雅紀(小市慢太郎)や長女・祥子(西田尚美)たちが大騒ぎするなか、有喜子の心の拠り所だったチビが姿を消してしまう・・・。

「おやじは、どう思っている?」と言おうとする長男だが・・・いい出せないもどかしさ。
 
これから見る人は、ネタバレはしていませんが、スルーしてください:
結婚して50年の夫婦の日常と、50年前の結婚のいきさつが同時に描かれるが、ラストで、野球で言えば大逆転劇があり、胸が熱くさせられる。途中で何度か胸が締め付けられるが、ぐっとこらえるのが大変だった(笑)。
 
主人公のふたりが知り合うことになる50年前というと、1969年(昭和44年)頃。テレビの「ゲバゲバ90分」で流行ったクレージー・キャッツのリーダー、ハナ肇の「あっと驚く為五郎」のセリフがあった(劇中に登場する)。
 
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        若き日の勝(左)若き日の有喜子
 現在の東京メトロ、銀座線の改札出口のところにある「ミルクスタンド」が登場。
あんぱん、コーヒー牛乳、白牛乳などが売られているが、サラリーマンなどが「あんぱんと白1本」などと注文する。几帳面に朝7:25に注文する勝だったが・・・。
 
’蛇足だが,、このたぐいのミルクスタンドはいまでもJR「秋葉原駅」の総武線ホームなどにあり、fpdも時々立ち寄って、コーヒー牛乳を飲むことがある。笑)。 
・・・
有喜子(倍賞千恵子が結婚した相手は「見合いする最初の人と結婚すると決めていた」というのだが、ネタバレできないので控えるが、実は「・・・だった」というのが後から分かり、見ている側も感涙にむせぶのだ(笑)。
 
妻から離婚を切り出された夫は「なぜだ」と聞くが、さまざまなすれ違いがあったが、公園で妻に「お前に話したいことがある。」と夫。「何かしら」とやや不安と期待のような妻。「家に帰ってから話す」で映画はエンド。含みを持たせた実に粋なエンディングだった。
趣味の将棋のシーンは味付けになっている。
たまたま相手をしている若者は将棋を知らないのだが、「金」「銀」の動かし方(=動けない方向)を身振り手振りで教えるところなどが笑わせる。相手が、弱いので「飛車・角・香・桂落ち」で対局するというのだ。
 
昭和の不器用な頑固親父ぶりを藤竜也が演じているが、50年前に妻の仕事の先輩で友人だった女性と今も、まさかの密会を・・・? いなくなったチビはどうしたのか・・・? 死に場所を探して消えたのか・・・? (見てのお楽しみ)。
 
いなくなった動物、ペットを探す探偵のような仕事(「ペット・リサーチ社」)もあることを知った。夫に言わずに、費用を10万円も払っていた。
 
2018年5月に亡くなった星由里子の遺作となる。
 
■主な出演者:
有喜子 - 倍賞千恵子
勝 - 藤竜也
菜穂子 - 市川実日子
ヨンギ/笹原 - 佐藤流司
山崎 - 小林且弥
若い時の有喜子 - 優希美青
若い時の勝 - 濱田和馬
若い時の志津子 - 吉川友
雅紀 - 小市慢太郎
祥子 - 西田尚美
志津子 - 星由里子(遺作)
■スタッフ
監督 - 小林聖太郎
脚本 - 本調有香