「サラリーマン忠臣蔵」は正・続編で完結するので「続・サラリーマン忠臣蔵」(1961)も早速見た。雪の日の決戦とも言うべき”討ち入り”が、株主総会の会場に置き換えられて描かれるので「続」だが、こちらのほうが、むしろ盛り上がりを見せた。
赤穂産業が、吉良(東野英治郎)に乗っ取られ、強引で卑劣なやり方への不満が爆発した大石と仲間たちは、辞表を叩きつけて会社を飛び出すと、ビルの一室を借りて大石商事を発足させ、スタートを切った。
「大石のやつ、こそこそ動いているそうじゃないか。」
「どこへ行っても相手にされず、苦しんでいるようです。」
新会社には、赤穂産業の元社員が続々と参加し、その数は四十六人となった。出陣式の宴会で、そこに転職していた元エレベーターガール堀部安子(中島そのみ)もいて、運転手として加わることになり、その数は四十七名に達した。
軽子は夫の早野寛平(宝田明)が定五郎(三橋達也)殺人事件未遂で起訴され、やむなく浮草稼業をしているのだった。商談が成功せず、給料も払えぬ苦境に陥った大石は、自分の邸宅を売払い、妻の律子を実家へ帰してしまった。
自分は寺岡(小林桂樹)の下宿に転がりこんだ。息子の力(夏木陽介)は、小奈美(団令子)との恋に邪魔が入り悩んでいた。小奈美の父・大野常務(有島一郎)のたくらみで、吉良の親戚・上杉家との縁談が進められていたのだ。商工会議所にまで手をのばした吉良の妨害で商談はすべて失敗、大石商事は苦境のどん底にあえいだ。
寺岡は天野化学の肥後が軽子に惚れているのに目をつけ、軽子に肥後の言うことを聞くよう頼んだ。軽子は夫ある身、聞き入れるわけにはいかない。同じアパートにいる才子は、ひたむきに会社を心配する寺岡に心をひかれた。
最後の道は、天野化学社長・天野義平(左卜全)にじか談判することだっだ。
天野社長宅を訪問すると、庭先で、ほうきで掃除をしている使用人のような人物がいたが、その人物こそ、天野社長だった。
意外なことに、天野は即座に契約を取りかわした。肥後は吉良の秘書伴内に買収され、今までの商談について天野社長に取りついでいなかったのだ。これには天野社長も激怒する一面を見せた。
大石商事の業績は急上昇した。大石は、吉良社長を追い出すために、赤穂産業株の買占めにかかった。十二月十四日、雪の降る日だった。大石は社員一同をそばや「山科」に集合させた。
赤穂産業の株主総会にのりこみ、吉良社長の退陣を迫る本心をうちあけた。
四十七士の討ち入りの舞台が「株主総会」というのが、いかにも現代的でいい。
総会屋も出席し、さざまざま議決案件の採決が行われるが、吉良社長の継続が5,000株の差で決まったかに見えたが、寺岡の妻となった才子の10,000株の委任状があることに気づき、大逆転劇となった。吉良はこの結果を見て、崩れ落ち、体調も悪くしたようで、社員に抱えられ退場してしまったのだった。
・・・
クラブのママの才子(草笛光子)が、新しいクラブをオープンし、大石商事に請求書を持って、挨拶をかねて訪問するが、対応したのが秘書の寺岡。請求金額を見た寺岡は「4回で38,000円か、ぼくの月給よりよっぽど上だ。社長も交際費がかかるわけだ」というのが当時のサラリーマンの月収なども伺えて面白い。
才子は、普段は重役などの客から言い寄られているが、一介の会社員(秘書)である寺岡(小林桂樹)に惹かれ、デートをすることになったが、自宅に招き入れアルコールの勢いもあって、後ろから寺岡に抱きついて「誠実で、気まじめなところが好き好き好き」というと「まあまあまあ、話し合いましょう、話し合いましょう」と冷や汗をかきながらいうところがおかしく、小心もので憎めない性格が滲んでいた。
大石(森繁久彌)は、会社の立て直しのために、自宅(私財)を売り払って、自身は秘書・寺岡のアパートにしばらく暮らすことにしたが、独身の寺岡の用意した食事に、味付けなどでいちいち、注文をつけるところも面白い。寺岡が言い訳がましく言うところもおかしい。最後には「コックじゃないんですから」。
そこに、才子が現れ、大石は、ふたりの仲を知ることになるが、「キミたちはできていたのか。そうか、そうか、ごちそうさん」だった。大石が想いを寄せていた才子が、自分の秘書とアツアツだったことと、食事を掛けているのか。「おめでとう」というものの、土壇場で、女性からいつもうっちゃりを喰らうのが、このシリーズの森繁の定番のようで、人情喜劇で森繁久彌のにじみ出るような名演が光る。
森繁久彌、志村喬、東野英治郎といった大物俳優の中でも、三船敏郎が堂々としていて、圧倒的な存在感がある。豪邸の庭先で、清掃していた老人(左卜全)が、まさかの会社の社長であったりという、人は見掛けによらないというシーンもいい。
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