森繁久彌の社長シリーズの「社長繁盛記」(1968)を見た。
”社長シリーズ”にバック・トゥ・ザ・ヒューチャー”まっしぐら(笑)。
三木のり平から谷啓に、フランキー堺から小沢昭一へと、メンバーが一新した「社長シリーズ」第28作。抱腹絶倒もあって、面白い。映画の冒頭で、牛乳配達のあんちゃんが自転車で「あなたが嚙んだ、小指が痛い♪」とハミングしていたが、当時流行った歌(「小指の想い出」 伊東ゆかり)などが背景に流れて、懐かしい。
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「最近、社長のお前も含めて会社全体がたるんどる。安定ボケの老化現象だ」と圭太郎をはじめ、会社の重役たちがすっかり老化しているというのだ。
少林寺拳法で鍛える70歳の圭太郎の義父・伝之助
伝之助は70歳の高齢ながら、四国で製塩会社を経営し、少林寺拳法を学ぶカクシャクたる老人。圭太郎は「泣く子と大株主(義父・伝之助)にはかなわないよ、本当に」と圭太郎は、ぶつぶつ言いながらも、会社に戻ると、早速、幹部を呼んで、伝之助の言葉をオウム返しのように「積極的な若返り策を実施する」と宣言した。
会社で、このとばっちりを受けたのが、第一営業部長の本庄(小林桂樹)、第二営業部長の赤間(谷啓)、総務部長の有賀(加東大介)たちだ。本庄は西ドイツから輸入した特殊鋼をアトラス自動車に売り込むこと、赤間は香港バイヤー・范(ハン、小沢昭一)と敏速に取引きをまとめることを、圭太郎から指示された。
赤間は、調子のいい范から”オカマ”さんと揶揄されて呼ばれていた。
日本語で「寝食を顧みず働く」という言葉があるが、赤間にとっても范にとっても、この寝食の意味は「色気と食い気」という意味だった。
怪しい日本語を話す范に完全に丸め込まれている赤間は、「范は大事なお客さんだから、接待が必要」と社長を説得して、夜は宴会でドンチャン騒ぎをした。料理の皿まで舐め尽くす范。「ハオツー、ハオツー(おいしい、おいしい)」と言ったり、「イー・アール・サン・スー(1,2,3,4)」と踊ったりするのだ。
有賀もまた、会社内の若返りのために具体的な対策をたてるよう命令された。
一方、圭太郎の秘書・田中(黒沢年男)は、まだ独身の若い男で、中年男どものそんな動きを、横目でみていた。
しかし、その田中も日曜日だというのに圭太郎について名古屋に出張させられ、美人社員・中川めぐみ(酒井和歌子)とのサッカー観戦デートを邪魔されてしまった。
藤川は明治文化の保存に情熱を燃やしていたのである。特殊鋼の契約をとるために、圭太郎は田中を伴って四国へと飛んだ。
伝之助に会う前に、圭太郎は若返りには浮気が必要と、芸者・小花(浜 木綿子)を連れだしたのだが、それを伝之助に見つかって、ほうほうの態で四国を離れた。
圭太郎から、伝之助との交渉を頼まれた田中は、残って伝之助と会った。
伝之助は一応返答を保留したが、「相談した結果は、(社長ではなく)君に連絡する」ということになった。田中は近くにあるめぐみの実家を訪ねた時、めぐみに婚約者がいるのを知って失望した。
一方、帰社した圭太郎は、本庄が独力で特殊鋼の契約を結んだことを知った。
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森繁久彌と小林桂樹のコンビは相変わらず、互いに文句を言いあいつつも、つかず離れずの軽妙なコンビぶりだが、谷啓が初めて加わったという映画で、後にこの谷啓のキャラは、「釣りバカ日誌」の課長にも生かされていったという。怪しい中国人に扮した小沢昭一も笑わせた。
東京で芸者をしている小花(浜 木綿子)は、圭太郎(森繁久彌)に、ほかの店に行って浮気をしても、「この世界ではアンテナを張り巡らせているから、わかっちゃうわよ」と言われていたが、四国・徳島に出張して、若い芸者と浮気しそうになるが、なんとそこに小花が現れて、その店も、自分の店だという。なんと、徳島は小花の出身地で「(アンテナ)レーダーの本部よ」だった。
圭太郎(森繁久彌)は、出張から帰ると、妻・厚子(久慈あさみ)から話があるといわれ、芸者と一緒にいたことを妻の父親から聞かされてお灸をすえられると思ったのか「あの人はねぇ~」といいだそうとすると、「余計なことは言わないほうがいいわよ(ぼろがでるから)」と諭されてしまう。「聞いていないのか?」というと「何も聞いていないわよ。ただ、あなたが若返ったようだ、と父が喜んでいた」というのだった。
1960年代後半当時、人気だった酒井和歌子は、テレビなどでは見ていたが、映画はほとんど初めて見た。清純派で爽やかという印象で、その人気ぶりが納得できる。
姉・めぐみと違って、美形ではなかったので、田中と一緒のところを見た圭太郎からは「へんな竹の子?みたいな女の子と一緒だったな」と言われる始末。田中は、せいぜい「へんな子」ではないと懸命に言い張ったが。黒沢年男のストレートで生真面目な役が逆におかしかった。
「社長シリーズ」の追っかけはまだまだ続きそうだ。
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