「アメリカン・スナイパー」(原題:American Sniper, 2014)を見た。MOVIXさいたま。
米軍史上最強の狙撃手と謳われたクリス・カイルのベストセラーとなった自伝を名匠クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー(「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」)主演で映画化。共演は「アルフィー」などのシエナ・ミラーほか。
こ映画は、この2月に北米興行成績で3億ドル(約320億円)を突破。
アメリカで公開された戦争映画史上最高の興行収入額となった。それまでの記録は「プライベート・ライアン」の2億1,650万ドル。世界ではすでに3億9,200万ドル(約400億円)を記録しており、日本の興行収入などはこれに上乗せとなる。
ひとりの兵士(狙撃兵)の姿を通して、現代のアメリカが直面する問題を浮き彫りにする。
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米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)の隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、スナイパーとしてイラク戦争に出兵した。カイルは戦地において、狙撃の腕前で多くの相手を射殺し、「レジェンド」と呼ばれ賞賛される。しかしカイルは、救えなかった兵士のことを後悔していた。
カイルは2003年から09年の間に4度にわたるイラクへの出征を繰り返す。
戦地では多くの仲間を失うが、カイルは苛酷な戦場を生きのび復員する。
家に帰っても普通の生活を送るのは困難を極めた。救えなかった兵士のことがカイルの頭の中から離れなかった。過酷な戦場を生き延び妻タヤ・カイル(シエナ・ミラー)と子どものもとへ帰還した後も、ぬぐえない心の傷に苦しむことになる。
精神科医の勧めによりカイルは入院している元兵士を助けたり、帰還兵と過ごすなかで次第に心の平穏を取り戻していく・・・。
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原作の自伝を書いたクリス・カイル(1974年4月8日- 2013年2月2日)は、テキサス州出身で幼少の頃から軍人にあこがれていた。少年時代から父に狩りに連れられて、銃の扱いを学んでいた。1999年に海軍に入隊し、ネイビーシールズのスナイパーとなる。約2キロメートル先の標的も正確に撃つことができた。2009年に除隊するまでイラクに4回出兵し、戦闘員160人(自称では2百数十人)を射殺したとされる。
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主人公のクリス・カイルは、妻タヤから、出兵から戻っても「身体はここにあっても、心はここにない。なぜ家族を残して、戦争に行くのか」と訴えるが「国のために戦う」と答えるばかり。ラストシーンは、残されたカイルの家族の希望で、カイルの殺害シーンはカットされた。
この映画の捉え方はさまざまあるようだが「現代のカウボーイ」の悲劇というのが本質というのもある。テキサス生まれの健全でシンプルな男が、こんな形でしか「男」になれず、帰国後は激しいPTSD(心的外傷後ストレス障害)に襲われ、38歳の時、皮肉にも戦場ではなく日常生活の場で亡くなる。
予告編で、狙撃手の双眼鏡の中に登場する女と子供のシーンがいきなり登場し、あれれと思うが、その描写は途中までで、その結末が途中で直ぐに再現される。
イラク側の凄腕の狙撃者や、その他の人物描写もある程度は描かれ、殺し合いの無意味さ、空虚さも淡々と描かれる。時あたかも、テレビで9.11(2001年)世界貿易センタービルの崩壊の映像が流れる。また、現在では、現実にイスラム国などの過激派組織が話題になっているが、映画は戦意高揚や兵士の礼賛が目的ではなく、あくまでもひとりの兵士の生き様を見据えたものだという。
画面全体が、まったく砂埃や煙で見えなくなるほどのシーンが続き、撃ち合いのシーンも、数年前の「ハート・ロッカー」のように、実際の戦場のようなリアリティが感じられる。
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