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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「桐島、部活やめるってよ」(2012)

 
 
桐島、部活やめるってよ」(2012)は、朝井リョウの同名デビュー小説(第22回小説すばる新人賞受賞)を原作とした青春・群像エンターテイメント映画。
 
キネマ旬報などで高い評価を得ているが、映画ファンには、過去にも何本かあったが、同じ場面を違った視点から繰り返してみると、風景・状況も変わって見えるという構成・スタイルと生き生きした自然体の会話などが受けたのかもしれない。こういう映画は案外好み!
 
最初から、最後まで「桐島に振り回される」映画だ。
 
小説を読んでも、映画のようなインパクトのあるラストシーンはない!
 
小説を読み、映画もほぼ同時に見た。かなり中身は違っている。
映画の中で、映画の話題もポンポン出てきて、映画ファンには、興味津々なところも多い。また、自分たちの高校時代とは、ずいぶん変化してきていることも実感する。
 

 
 
原作では、登場人物ごとの章があり語られるが、映画では、曜日を追って、それそれの視点で同じ場面が繰り返し描かれるスタイルとなっている。また、原作で描かれている実果(みか)という女子高生の家族の状況などは、映画では、さらりと簡単だった。
 
小説では、全体が淡々と描かれ、現代の高校生らしく、若い世代に人気の映画、たとえば「ジョゼと虎と魚たち」、女優では蒼井優真木よう子といった固有名詞がポンポン出てきて面白い。語り口がリアルで、若者用語にあふれ、文体も表現も生き生きしている。映画では「夢の中で、満島ひかりにあった」という映画部員。
 
一方、映画では、1時間30分ほどの映画の最後の10分は、高校の映画部の撮影風景に驚きの結末があり、ゾンビ・ホラー映画の様相を呈している。
 

 
 
様々な部活(バレー、剣道、野球、サッカー、吹奏楽部、映画など)を通して17歳という高校生を描いているが、バレー部でキャプテンだった万能で人気の桐島が突然部活をやめ、姿をみせなくなったことで、同級生、部活の仲間たちのパニックのような騒動と、それぞれのやるせなさや微妙な心理などを描いている。何の部にも属さない「帰宅部」というのも面白い。
 

映画のキャストでは、映画部に所属する主人公・前田涼也に、子役から活躍している神木隆之介が扮している。黒縁メガネで、これまでのイメージを払拭。
映画オタクぶりを発揮するが、同級生のバトミントン部の東原かすみ(橋本愛)に映画の話をしてもかみ合わないのがおかしい。「タランティーノ監督の映画では何が好き?」という前田に「題名は忘れたが、たくさんの人が殺される映画」と答えると「たいてい、多くの人が殺されるんですけど」だった。
 

女子高生同士の会話が、自然体で、現実の断片を見ているよう。
さらっとした会話の中に、リアリティがある。脚本の力か。
実果が、教室に一人残っているかすみ(橋本愛)に向かって「かすみ、いろいろごめんね」とわびると、かすみは「大丈夫だよ。何が、
だけど」といったさりげないセリフなど。                             橋本愛
 
一応4人組女子高生(梨沙、沙奈、実果、かすみ)で、いつもまとまっているが、ほかの3人にコンプレックスを持っていたり、自らの美貌に自信を持っていたり、それぞれ微妙に考えが違っていて、ちょっとした発言に「今、笑った?」と責めるところなど、鋭く見逃さないところもすごいし、怖い。
 

4人の中では、桐島の彼女・梨沙役の山本美月は落ち着いていると思ったら実年齢21歳。かすみ役の橋本愛(17)
が「告白」以来「Another アナザー」などで注目され、この「桐島、部活やめるってよ」(撮影時、16歳) の演技により、キネマ旬報ベストテン新人賞を受賞している。有望若手女優の仲間入りを果たしている。
                                                    山本美月
結局、タイトルにある桐島は、映画に一切登場しなかった。 
桐島、部活やめるってよ」は、面白いが、特に結論があるわけでもなく、一言で表現するのは難しい。
 
映画の最後に主題歌が流れる。
一部は以下の通り。
 
青春真っ只中の高校生の心情を代弁しているようにも取れる。
 
陽はまた昇る (歌・佐久市・作曲 高橋優)
 
自分だけが置いてけぼり喰らっているような気がする
誰かがこっちを指差してわらっているような気がする
同じような孤独を君も感じてる?
愛も平和もなにもかも他人事のように聞こえる淋しさを
 
移ろい行く人の世をさんざめく時代を
憂いて受け入れて次はどこへ行く
愛しき人よどうか君に幸あれ
たとえ明日を見失っても明けぬ夜はないさ
 
追記:
今は大活躍の東出昌大の映画デビュー作。高校生にしてはトウが立っていたが。
 
 
 
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