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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「狂った果実」(1956)</span>


狂った果実」予告編
 
狂った果実」(1956)は、石原慎太郎原作・脚本で「太陽の季節」に続く姉妹編。
主演は、俳優のクレジットの順では、北原三枝石原裕次郎津川雅彦だった。
ほかに、岡田眞澄、チョイ役で、長門裕之が「石原」、石原慎太郎が「長門」と名乗って出演という遊び心もあった。
 

映画は、モーターボートを操縦する津川のアップで始まるが、何か怒りに満ちた表情で、これがラスト・シーンにつながり、そのワケがわかる。
 
ストーリーは、湘南地区に住む裕福な家庭に育った兄弟とその遊び仲間の若者たちのナンパなどの無軌道なチンピラのような生活ぶりを描く。
 
アメリカン・グラフィティ」+「太陽がいっぱい」を足して2で割ったような作品か?(笑)
 
水上スキーなど当時では、珍しかっただろう。10代後半から20歳前後の生態を捉えて、太陽族と呼ばれた。(XX族の走りか。「みゆき族」「竹の子族」「ヒルズ族」・・・なんていうのもあった)
 
滝島夏久(石原裕次郎)の弟春次(津川雅彦)は、兄に似ぬ華著な四肢を持ち、まだあどけない“坊や”だった。女漁りの巧い夏久に比べて、春次は全然女を知らなかったが、或る日、逗子駅ですれ違った娘の瞳に、何故かドギマギして立ちすくんだ。
 
その日の夕方、友人平沢のサマーハウスで兄弟は友人達とパーティを開く相談を決めた。皆夫々未知の女性を同伴することに決まると、春次は又もや先刻の娘の姿を思い出すのだった。
 
翌々日ウォータースキーのレースで夏久と組んだ春次は、思いがけずも仰向けに泳いでいる例の娘・天草恵梨(北原三枝)に逢い、彼女を一色海岸まで送った。やがてパーティの当日、春次は洒落たカクテルドレスを着た恵梨を同伴して現われ、夏久達を驚かせた・・・。
 
夏久と春次の二人の兄弟と関係してしまう恵梨には、アメリカ人の夫がいた。
春次が最初に恵梨に心を奪われ、付き合い始めるが、恵梨は、夏久に「これまで
浮気はあったが、春次とは、真剣で、浮気とは違う」と当時としてはかなり奔放。
 
恵梨は春次の純情さを愛する一方、夏久の強靭な肉体にも惹かれていた。
 
やがて恵梨の心にあった兄弟への愛情の均衡も破れ、彼女は夏久の強制で春次との待ち合せを反古にした。平沢(岡田眞澄)から恵梨と夏久に関する総ての出来事をぶちまけられた春次は、憑かれたようにモーターボートで二人の後を追った。
 
早朝の海の上、春次は夏久と恵梨の乗ったヨットの周囲を乗り廻しながら、無表情に二人を眺めていた。夏久は耐えられなくなり思わず「止めろ、恵梨はお前の物だ」と叫ぶなり彼女を弟めがけて突きとばした。
 
その瞬間舳先を向け直した春次のモーターボートは恵梨の背中を引き裂き、夏久を海中に叩き落してヨットを飛び越えた。
 
白いセールに二人の血しぶきを残したヨットを残して、モーターボートは夏の太陽の下を、海の彼方へと疾走して行った。
 
50年以上前の映画で、当時としては、かなりショッキングな映画だったろう。
裕次郎は新人で、「太陽の季節」「狂った果実」でスター街道をひた走り、昭和を代表する映画スターとなった。
 
いまや曲者の脇役俳優として大御所の一人の津川だが、この映画の当時は16歳で、演技ももどかしさがあったが、ラストシーンでは、取りつかれたような表情にややすごみも感じられた。
 
監督:中平康
音楽:佐藤勝
日活映画(1956年作品)
 
BSプレミアムで放送。
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