「未来のミライ」(2018)を見た。スタジオ地図制作によるアニメ映画。日テレ65周年記念映画で、原作・監督・脚本は細田守。テーマ曲の作詞・作曲・編曲・歌を山下達郎が担当。オープニング(「ミライのテーマ」)とエンディング(「うたのきしゃ」)のテーマを歌っている。
映画は2018年5月にカンヌ国際映画祭でプレミア上映された。「監督週間」でアニメーションとしては唯一の招待作品だった。また、第91回アカデミー賞長編アニメ映画賞に日本の作品ではジブリ作品以外で初めてノミネートされた。あわせて、第76回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞にもノミネートされ、日本の作品としては初めて同賞にノミネートされる作品となった。声優が豪華。麻生久美子、星野源、役所広司、福山雅治、宮崎美子、黒木華など。
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主人公のくんちゃんは“イヤイヤ期”の後期。とにかくワガママ放題の小憎らしさがある。親から本気で怒られることもあり、時には大声で泣き声もあげる。「やだ」とダダをこねたり「好きくない」という言葉が何百回も出てきて耳障りだ(笑)。
くんちゃんは、妹が生まれてから、両親が妹ばかりに関心を向け、自分に関心が寄せられなくなったことに嫉妬してしまうのだ。
主人公一家が住む家は、デザイナーズハウスというべきか、かなり風変わりな一軒家で「建築家と結婚すると、まともな家には住めないってことなのかしら」というセリフが出てくる。一家の主は建築家。
映画の評価については、賛否両論があるようだ。”賛否”があるということは、往々にして否定的な見方が多いということである。主人公のくんちゃんがいきなり、未来にタイムスリップして、未来の妹にあったり、曽祖父の若かりし姿に遭遇したりと、ややわかりにくいのだ。くんちゃんが動物に変身したりもする。
やや否定的に書いたが、東京駅の新幹線乗り場などの描写には息を飲んだ。あまりにもリアルで、東京駅を通過する上野東京ライン、山手線、京浜東北線の車両などは普段見慣れているだけに、ディテールの素晴らしさに釘付けになる。これだけでも必見に値する。エスカレーターも本物並み。
映画の興行収入は27億円前後と、アニメの大ヒット作品「天気の子」(130億円)などと比べてしまうと今ひとつといったところ。声優陣が大物俳優も使っていて贅沢。星野源と麻生久美子の夫婦役は、リアルだった。
細田監督作品は「おおかみこどもの雨と雪」を見ているが、タイムスリップもののアニメ版「時をかける少女」を手がけるなど、タイムスリップものなどにこだわりがあるようだ。
主な出演:
■くんちゃん(上白石萌歌)
主人公。本名は「おおた くん(太田訓)」。甘えん坊な4歳の男の子。生まれてきた妹に両親の愛情を奪われ、戸惑う。電車が大好きで電車の名前を覚えている。お父さんに妹の名前は何が良いと聞かれた際は「のぞみ」「つばめ」など新幹線のの名前を挙げている。
庭に現れ、くんちゃんを「お兄ちゃん」と呼ぶ、未来から来たくんちゃんの妹。
■おとうさん(星野源)
在宅の建築家。仕事と育児の両立を目指すも失敗ばかり。
■おかあさん(麻生久美子)
仕事や育児で大忙しだが、ベストを尽くそうとする。片付けが苦手。
■ゆっこ(吉原光夫)
太田家のペットでクリーム色のイギリス系ミニチュアダックスフント(オス)。
■謎の男(吉原光夫)
くんちゃんが庭先で出逢った、奇妙な出で立ちをした男。「自分はかつてこの家の王子だった」と話す。実は飼い犬のゆっこが人間体になった。
■ばあば(宮崎美子)
くんちゃんの祖母。二人目を出産するおかあさんの代わりにくんちゃんとゆっこの面倒をみる。
■じいじ(役所広司)
くんちゃんの祖父。ひなまつりの日に孫に会いに来る。
■青年(福山雅治)
くんちゃんが時空の旅先で出逢った若者。足を引きずって歩く。実はくんちゃんの曽祖父の若き頃である。
■東京駅の遺失物受付センターのロボット(神田松之丞)
くんちゃんが時空の旅先である東京駅で出逢うロボット。