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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「夜明けのすべて」(三宅唱監督、2024)上白石萌音、松村北斗主演の佳作。

映画「夜明けのすべて」(2024)は「そして、バトンは渡された」の原作などで知られる瀬尾まいこの小説。瀬尾自身のパニック障害の経験を基に、人には理解されにくい疾患を抱え、生きづらさを感じながら生きる男女の交流を描く。

監督は「ケイコ 目を澄ませて」(2022)の三宅唱で、脚本は「体操しようよ」などの和田清人三宅唱監督と共同で担当。


出演はパニック障害を患う男性を「ライアー×ライアー」などの松村北斗PMS(月経前症候群)の影響でイライラしがちな女性を「舞妓はレディ」などの上白石萌音が演じる。

松村と上白石はNHKの連ドラ「カムカムエブリバディ」で夫婦役を演じているが映画での共演は初。共演は、光石研、渋川清彦、りょう、藤間爽子、宮川一朗太など。

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月に1度、PMS(月経前症候群)の影響で激しいイライラを感じてしまう藤沢美紗(上白石萌音)。転職してきたばかりの同僚・山添孝俊(松村北斗)が、飲料水のキャップを開ける音にも耳障りと感じて、イライラを爆発させてしまう。

その後、美紗は、やる気がなさそうに見える孝俊が実はパニック障害を患っていて生きがいや気力も失っていることを知る。

互いの事情を知った二人は職場の人たちの理解に支えられながら、同志のような関係を築いていく。

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パニック障害などを患ったことのない人には突然起こるちょっとしたことへの反発やイライラは理解しがたいが、同じ障害を持つ者同士がパニックが起こる前に事前に察して和らげようと努力する様がリアルだった。

女性特有のPMSの症状が現れたときにまわりに八つ当たりするような状態を演じる上白石萌音が表情まで変わってイライラを募らせる場面は鬼気迫るものがある。
この映画は今年の邦画では上位になりそう。

パニック障害の男性・山添とPMSの女性・美紗の主人公の2人は職場で席が隣合わせ。シュークリームが嫌いという山添に対して、美紗は、お菓子屋で「甘くないお菓子ありますか」と聞く。あとで甘いものが苦手というわけでなくクリームだけが苦手と分かる。

髪の毛を自分で切っているという山添に「私が切ってあげる」と申し出て、山添のアパートで床にビニールを敷きつめて髪を切るのだが、山添が「前に美容師とかされていたんですか」と聞くと、美紗は「いえ」と平然と言ってのける。

案の定だった。美紗が「(切り方を)失敗しちゃった」というと、山添は驚き「えぇ~、自分で確認する」と言って鏡を見て「いくら何でもこれはないでしょう」となんども腹を抱えるほど、参ったなという苦笑いをするのだ。

職場が、天体・宇宙に関する小中学生向けの関連キットを製作販売する会社で、中学生の映像取材を受けるが、従業員たちに「会社のいいところは?」と質問を投げかけても、いいところが思いつかないところなどが笑わせる。

細かい描写で見どころも多い。

精神科クリニックを訪れた美紗の母・倫子に対して精神科医が「しばらく様子を見ましょう」(という医者の常套句!笑)というと倫子は「しばらくっていつまでですか」と迫るシーンなど。「2年、3年という長期に考えましょう」という返答。

美紗が友人と将来について占い師のところに行くと「霊が住み着いている」とか言い、ちょっと待ってと席を外すと、友人が美紗に首を横にふるしぐさを見せる(あてにならないインチキだというサインを送るのだ)。

美紗は普段は普通だが、月に一度その時期になると、睡魔に襲われるのか、意識を失い、会社で寝こんでしまったり、ベンチで寝込んだりして、警察官に注意を受けたりするのだ。

職場の人たちもいい人が多く、理解を示してくれる。コミュニケーションが苦手な山添が「鯛焼き」を同僚たちに差し入れると、喜んでくれたりして山添も溶け込んでいくのだ。

ラストは、主人公たちがそれぞれ成長していく姿が描かれ、明るいエンディングとなっている。

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三宅唱監督は前作「ケイコ 目を澄ませて」(2022)でベルリン国際映画祭のほか、日本国内で多くの映画賞を受賞して注目された監督。

画面が荒く感じるのは、前作同様、全編16mmフイルム撮影によるもので、デジタル全盛の時代に、あえてフイルムにしているのは監督のフイルムへの強いこだわりか。

撮影ロケーションは風景になじみがあるなと思ったら、都内の大田区内(西馬込付近)だった。撮影は2022年の11月から12月にかけて行われ、撮影実数は32日間という。

<キャスト>
山添孝俊:松村北斗パニック障害を抱える。炭酸飲料を欠かさない。
藤沢美紗:上白石萌音PMS(月経前症候群)に悩まされる。
辻本憲彦:渋川清彦…山添が以前勤務していた会社の上司。
大島千尋芋生悠(いもうはるか)
岩田真奈美:藤間爽子…美紗の友人。
藤沢倫子:りょう…美紗の母。
栗田和夫:光石研プラネタリウムや顕微鏡のキットを作る「栗田科学」社長。
宮川一朗太…婦人科医で美沙の主治医。
坪井絵里子:内田慈(ちか)…「つぼいメンタルクリニック」の精神科医
久保田磨希
足立智充
丘みつ子
山野海
斉藤陽一郎
<スタッフ>
原作:瀬尾まいこ「夜明けのすべて」(水鈴社/文春文庫刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人三宅唱
音楽:Hi’Spec
製作:「夜明けのすべて」製作委員会
企画・制作:ホリプロ
制作プロダクション:ザフール
配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース

 

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