「小説吉田学校」(1983)を40年ぶりに再見した。前半はモノクロ画面、後半はカラーに切り替わる、というのも再発見。
映画のうたい文句は…。超豪華キャストで描く!
「実在政治家たちの群像と激動の戦後政治史!」。
すべて実名で登場する政治家には群像ドラマにふさわしい豪華なオールスターキャストで、森繁久彌、若山富三郎、芦田伸介、小沢栄太郎、神山繁、稲葉義男、竹脇無我、西郷輝彦、高橋悦史、梅宮辰夫、藤岡琢也、鈴木瑞穂、小池朝雄、村井国夫、橋爪功、小林稔侍、池辺良、夏目雅子などが名を連ねている。
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戦後GHQ占領下の日本を独立させるべく、首相・吉田茂(森繁久彌)はライバル政党との確執などをくぐり抜けながら腐心する。
やがて、ついに日本独立という悲願が達成させるが、その後吉田は政権にしがみつくようになり、三木武吉(若山富三郎)は彼を首相の座から引きずり下ろすべく、暗躍を始めていく…。
「八甲田山」など自然派超大作のイメージの強い森谷司郎監督が、戦後日本の歩みの裏に蠢く男たちの戦いをエネルギッシュに描いた政治群像劇。
ここで繰り広げられる確執はまさに政治家版「仁義なき戦い」とも呼べるもので、吉田の愛娘(夏目雅子)以外一般人が登場しない。また吉田の孤独などを風景描写などで巧みに描いている。本作は森谷監督の遺作となった。
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戦後の日本の政治の方向性を築いた吉田茂。吉田茂総理の後、戦犯から戻った岸信介、吉田の懐刀であった池田隼人、佐藤栄作、田中角栄など吉田学校の門下生が日本の政治を動かしていく。
吉田茂の「日本は戦争に負けたが講和(対日講和条約=日本の独立)に勝った」「アメリカは文化と繁栄がある。日本がそうなるのはいつのことか」「池田君、佐藤君、沖縄や北方領土はいつ戻るのか。未解決の大きな問題がある」と池田隼人や佐藤栄作に後を託した。
アメリカは、日本に対して「再軍備」を要求したが、吉田は断固反対した。その代わり、日本の防衛は「警察予備隊」を設けるとした。警察予備隊はのちの自衛隊の前身となる組織である。
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【ストーリー】
戦後GHQ占領下の日本。独立のために首相・吉田茂(森繁久彌)はライバル政党との確執や闘争を続けながら、ついに日本独立という悲願が達成させていく。
しかし、吉田は次第に政権にしがみつくようになり、三木武吉(若山富三郎)は彼を首相の座から引きずり下ろすべく、有力政治家たちを巻き込んでいく…。
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吉田総理の悲願である講和条約実現のために、腹心の池田隼人と通訳を兼ねた宮澤喜一をワシントンに送るが、日本から来た下っ端議員などは相手にされなかった。
これといった成果がなく帰国した池田に対して吉田茂は「外交とはそういうものだ。目に見えないところで、先行して動いていく。今後は大きく動いていくはずだ」と激励していた。吉田自身が、だんだんと首相、権力の座に固執していく姿も描かれる。
若き田中角栄を演じた西郷輝彦が、新人議員のくせに(生意気だ)と先輩議員から煙たがられながらも持論を展開していく姿のなかに、のちに誕生する”ブルドーザー”宰相・田中角栄首相の片りんを見せている。
日米安全保障条約(安保)を巡っては、1960年と1970年に安保反対運動がおこったが、吉田茂の言葉に「日米安保条約は、10年先までこのままでいいとは思わない。これからの日本は大変だ」と将来に警鐘も鳴らしていた。
「三木(武吉)は、王手飛車取りをかけてきた。この際、飛車は切り捨てざるを得ない」といったセリフもすさまじい。
自由党の長老格の松野鶴平(小沢栄太郎)が「こんな時期に解散などという総理は除名してしまえ」というセリフもすごい!
副総理の緒方竹虎(池辺良)が「小事にこだわって大事を忘れているのではないか」と総理に進言すると「日本を鳩山に任せたら、日本は再軍備になる」と反論。
「総辞職が筋です」と緒方が続けると「君に用はない。池田!緒方を罷免する」と声を荒げる。池田が「引き際を大事にしてください」というと「うるさい!」と突っぱねたが、結局「内閣総辞職の届け出を書いてくれ」となった。
蛇足:吉田茂が亡くなって3日後の1967年10月23日、政府は国葬について閣議決定を行った。政府は国葬にあたって、各省庁に弔旗の掲揚や黙とう、午後の休業、行事の自粛を求めたほか、学校や会社などにも同様の協力を求めた。
国葬には日本武道館には当時の皇太子(現上皇)ご夫妻や各界の代表、海外72か国の使節団など6000人余りが参加した。国葬の模様はテレビ中継され、参列者はおよそ4万5000人に及んだ。fpdは高2で、ちょうど床屋さんの椅子に座ってNHKのテレビ中継をちらっと見ていた(笑)。